どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。あなたは「専門警察」の存在をご存知でしょうか? 専門警察とはその名の通り、それぞれの部門に特化した警察組織のことなんですね。
今回は、その専門警察について、警察組織に詳しい元警察官のY氏(56歳)にお訊ねしてみました。「専門警察」というのは一体何なのか? その種類は? 解説してもらいました。
日本に現存する水上警察署は3つ
丸野(以下、丸)「水上警察署というのがあるということを僕は初めて知ったんですが」
Y氏「沿岸部を管轄している警察署で現在は3警察署があります。それが神奈川県警の《横浜水上警察署》、大阪府警の《大阪水上警察署》、兵庫県警の《神戸水上警察署》になりますね」
丸「どんな部分を守るわけですか?」
Y氏「管轄している区域としては、河口や河川、沿岸部、埋立地などです。これは海上保安警察も共同管轄区域になっています。主に港湾や海上をはじめとする犯罪を取り締まるわけですね」
テロや麻薬密輸、わいせつパーティー、船上賭博にも対応
丸「にしても、全国で3ヵ所というのは少ないですね。全国にあったもいいようなものですけど……」
Y氏「昔は水上生活者が多く、函館や東京、名古屋、広島、下関、北九州、長崎などにも警察署が存在したのですが、今では《臨港警察署》に組織再編されたところもあります。それが、秋田や川崎、博多などにもあるということです」
丸「海上保安庁が沿海部担当で、水上警察は沿岸部担当になるということですか?」
Y氏「そうですね、警備艇や巡視艇を保有しているので、港から各種テロ行為や銃器密輸、麻薬密輸に対応しているわけです。さらには、夜な夜な開かれるわいせつパーティーや船上賭博などの取締りも行っています」
丸「ほほう」
Y氏「神戸などは港の規模が大きいので特に目を光らせます。水際で取り締まる重要任務なんですよ」
「皇宮警察」とは一体何なのか?
丸「皇宮警察というものもありましたよね。どのような役割を担っているのでしょうか?」
Y氏「メインとしては、警察組織としては一線を画す存在の警察組織です。陛下と皇族を護衛する専門組織ですね。皇居や京都御所、赤坂、吹上、坂下など皇族に関する場所を命を懸けて守る部署です。襟には《五三の桐》が光り、普通の警察官とは明らかに違いますね。《皇宮護衛官》は警視庁付属機関でもある皇宮警察本部に属しているんです」
丸「彼らは皇居内で教育を受けるんでしょうか?」
Y氏「そうです。皇居内にある皇居警察学校に入学して、皇宮警察本部か護衛署に配属。任務に就きます。高卒者は10ヵ月程度、大卒者は6ヵ月程度の研修を受けるんですが、彼らのカリキュラムは恐ろしい。逮捕術はもちろんのこと、華道や茶道、英会話までマスターしなければいけません」
丸「茶道まで?」
Y氏「ええ。彼らが一般的な警察官と違うのは、“今日も何もなかった”という部分を守ることですから」
その他の「専門警察」は?
丸「その他にはどんな警察がありますか?」
Y氏「その他の専門警察としては、急増しているネット犯罪や国内・海外からのサイバー攻撃に対応する《サイバー犯罪捜査官》や全国12ヵ所で薬物犯罪捜査を一手に引き受ける通称・マトリの《麻薬取締官》、不法入国や日本に滞在中の凶悪な外国人の摘発、強制送還などを担当する《入国警備官》、自衛隊の中に絶大な権限を持つ《自衛隊警務官》などがありますね」
丸「ほほう、そんなに?」
Y氏「皆、特殊任務を受け持つプロの警察官です」
特殊部隊も警察官
丸「僕はモデルガンマニアだし、ガンアクション映画好きなので気になっているんですが、特殊部隊というのはどのような存在なのでしょうか?」
Y氏「殺人や立てこもり事件などの凶悪犯罪を扱っている捜査1課に所属するのが《SIT》。特殊装備を備えていますが、必ず犯人を怪我をさせずに確保することが警察のやり方です。できるだけ、射殺などは控えて《殉教者》などを作らないことを目的にしています。マスコミもうるさいですし」
丸「60年代や70年代などは学生運動も盛んでしたからね。殉教者を作らないように警察側も旬職者が出ていた」
Y氏「一方、《SAT》はさらに凶悪な事件に対応しているわけです。大規模なテロ事件など、特攻隊として動くのがこの部署です。25歳以下の隊員で構成され、約5年ほどで移動になるそうです。さらに、単身者であることなども配慮されるそうです」
丸「それだけ危険だということですね」
事件発生時に迅速に動く、この「専門警察」。このインタビューを通じて、民間人を決死の覚悟で守る警察組織の皆さんに敬礼したくなりました。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)