どうもライターの丸野裕行です。
新型コロナウイルスの第6波襲来で、各都道府県でもまん延防止措置の延長が決まり、宿泊施設や温泉町は外国人観光客の客足は途絶えてしまいました。インバウンド需要が活況だったときとは方向転換し、観光地は内需拡大を狙うようになりました。
今、まばらにでも訪れる国内旅行の観光客の誘致に力を入れている観光地は非常に多いわけです。
コロナ感染拡大でも沈んだ気持ちを晴らそうと、ここ鳥取県三朝温泉の旅館オーナーたちはコロナ禍だからこそのチャレンジを続けています。三朝温泉地それぞれの主要メンバーがアイデアを持ち寄り、創意工夫をちりばめた新しい試みをはじめたわけです。
筆者はいつもお世話になっているこの温泉地なのですが、3月初旬にこちらへ足を運んで非常に驚きました。そこには、「なんとかこの苦境を乗り越えよう!」という生き生きとした三朝温泉有志たちの瞳の輝きがあったのです。
今回は、『三朝館』オーナーで三朝温泉旅館協同組合の沖田雅浩理事長にお話をお聞きして、様々な試みに挑戦し続け、三朝温泉を盛り上げようと躍起になる皆さんの活動に密着してみました。
まずはいつも通りのイベントを通常開催
丸野(以下、丸)「新型コロナウイルス感染症はもう第6波目に突入して、全国の温泉地がお困りのことと思います。沖田理事長、鳥取を代表する三朝温泉ではどのような取り組みを行っておられるのですか?」
沖田さん「こんなとき、日本に住む温泉を愛するお客様の体と心をぽかぽかにしないと意味がないわけですよ。では、どんなことをキッカケに第一歩を踏み出すのか。それは、日常を取り戻すことです。コロナが拡大して、みんな日常のありがたさに気がついた。友達とご飯を食べたり、同僚と飲みに行ったり、親元へ里帰りしたり、温泉巡りをしたり……ごく普通のことがマスク越し、アクリル板越しになってしまったわけですよね」
丸「なんだか人とのつながりがなくなって、孤独感を感じたりと当たり前から遠ざかってしまったような生活を送っていますものね」
沖田さん「いつもの生活がどれだけ幸せだったかを実感したわけです。ということは、第一歩の前進は《いつもどおりの日常を取り戻すこと》だと思います。そこで、参加者の検温や消毒、ソーシャルディスタンスなど感染予防には細心の注意を払いながら、通常通りのイベントを復活させることにしたわけです。協会としては、観光のお客様に非常に好評だったイベント企画に、新しいイベントをプラスして提供することにしました」
《2021年~実施された鳥取三朝温泉のイベント》
2021.02.15~04.03 『三朝温泉 雛めぐり開催』
……旅館や商店、施設に飾られているお雛さまを眺めながら温泉街を散歩するイベント。計6店舗の対象施設で特典をゲットできたり、クイズラリーに解答したり、雛ランチを食べて三朝米が当たる抽選に応募したりするイベントです。
2021.04.24~05.31 『春の和紙灯り開催』
……和傘と和紙ボール使用の展示品が、三朝神社と温泉街に登場。散策コースにやわらかな光が灯ります。
2021.09.01~10.31 『秋の和紙灯り開催』……好評につき、秋の和紙灯りが集結。温泉本通りにある和紙灯りの館、三朝神社、陣所の館にて温泉街と光のコントラストを楽しめます。
2021.10.31 『三徳山秋会式開催』
……三徳山三佛寺で執り行われる「三徳山秋会式 三徳山法流大護摩法要」を開催したイベントです。
2021.10.29~11.28 『第2回 三朝温泉謎解き宝探し開催』……好評につき、「第2回 三朝温泉謎解き宝探し」を開催! 三朝温泉街を散策し、魅力的な日本遺産にちなんだ謎6つを解いて、豪華賞品がゲットできる企画です。
2021.12.01~2022.01.31 『もう一度あったまろうチャレンジ開催』
……三朝温泉でもう一度体もココロもあったまろうというテーマのチャレンジイベントを開催。スタンプ3つで抽選参加、宿泊割引利用券1万円分が当たる。
2021.12.25 『三朝観光大使ココリコ遠藤さん三徳山参拝登山YouTube公開』
三朝町観光大使であるココリコ遠藤さんが三徳山へ参拝登山し、その様子が公式YouTubeチャンネルに公開されました。2022.01.14~特典がなくなれば終了 『三朝歌蓮ちゃんイベント開催』
……地域活性化プロジェクトの《温泉むすめ》から生まれた三朝温泉観光大使の2次元看護師キャラ娘・三朝歌蓮ちゃん。歌蓮ちゃんの6種類の名刺を集めて、オリジナルタオルをゲットできるイベントが開催。2022.1.15、3.19 『三朝バイオリン美術館のコンサート開催』
……「世界を旅するコンサート」と題して、三朝バイオリン美術館にてコンサートを開催
2022.02.28~2022.3.14 『日本遺産×みささ歌蓮オンラインクイズ開催』
……「六根清浄と六感治癒の地」として第1号日本遺産に認定された三徳山と三朝町、名湯三朝温泉に関するクイズに正解すると抽選で60名様に特産品と2種類の三朝歌蓮オリジナル絵馬をプレゼント。
丸「かなり充実した内容ですね。しかもココリコの遠藤さんが観光大使に就任とは!」
沖田さん「ええ、私も驚きました。でも、イベントに関しては風情のある三朝温泉街をそぞろ歩いていただきたいという気持ちで、動きのあるイベントにしてみました。観光のお客様もご満足されているようです。たくさんの声が協会の方には届いていますよ」
サプライズ花火のために協会職員、旅館オーナーが花火師資格取得
丸「理事長、それだけではないようですね?」
沖田さん「三朝温泉街を盛り上げるために、温泉協会所職員さんたちや旅館オーナーたちが自分たちで、夜空に輝く花火を打ち上げようという話になったんです。花火は江戸時代に悪疫退散を祈願し、高らかに打ち上げたという歴史というものがあります。悪疫退散と笑門来福を願い、三朝温泉関係者のみんなで《花火師資格》を取得して、昨年は30日間連続で花火を打ちあげたんですよ」
丸「それはすごいですね!」
沖田さん「三朝温泉街を代表する恋谷橋の上から楽しめるように、万全の準備をしました」
丸「大変だったでしょうね」
【三朝温泉夏花火まつり】
【鳥取県三朝温泉花火(2021年4月29日花火駅伝)】
沖田さん「いえ、それよりもこの街を訪れるお客様の喜んだ顔が見たくて、準備に手間取っても楽しかった。三朝温泉に暮らす仲間たちがひとつになったような気持ちで清々しかったですよ。また、これからもやりますが(笑)」
特別室設置で若いお客様の心をつかむ
丸「その他にも、新たな試みがあったそうですが……」
沖田さん「そうですね。コロナ禍で幾度となく《緊急事態宣言》が出る中、なかなかお客様を受け入れることができないという時期に、“立ち止まっているこの好機を逃さぬものか”という想いが芽生えました。そこで、特別室を意識した《コンセプトルーム》づくりをはじめたわけです」
丸「コンセプトルームですか?」
沖田さん「広さ自体は普通なんですが、居心地の良さにこだわりました。この部屋は、かじか橋とは逆方向の山側に位置しているので、山を一望できるようにしました。しかも囲いがあるので、屋外露天風呂があるプライベートは守れる、心地よい空間です。大体のアイデアは渡して、設計師とかなり打ち合わせをして設えました」
丸「このプライベート空間に+αで、なにかサービスはあるのでしょうか?」
沖田さん「まず、こういったお部屋なので、個室の食事処でゆったりとお食事を摂っていただくこと。春以降であれば、コンセプトルーム専用のお食事を準備中であるということですね」
<写真:個室で楽しめる豪華夕食>
沖田さん「温泉地なのですが、和室という概念を取り去って、お客様にここでゆったりとした時間を過ごしていただく、集中できるワーキングスペースとしても使っていただくということですね」
丸「お部屋にあるものは、しっくりくる小物ばかりが揃っていますね」
沖田さん「この部屋の家具も『名探偵コナン』のふるさとである東伯郡北栄町のメーカーさんにオーダーをかけて、全部つくっていただいています。ベッドルームなどの壁紙も鳥取伝統の《因州和紙(いんしゅうわし)》を使用し、お茶やコーヒーを楽しんだりする器も鳥取の《玄瑞窯(げんずいがま)》さんに焼いてもらった《砂丘》というもの使用しています。それだけ鳥取名産のものにこだわって設えたわけですね」
<写真:因州和紙。因州は因幡(いなば)の国という意味になります>
<写真:鳥取の窯元・玄瑞窯の作品《砂丘》>
丸「アメニティーにもこだわりがあるんですか?」
沖田さん「元々は鉄鋼関係の製造業をやっている会社が、皮膚疾患を患ったお母さんが従来の化粧品が使えなくなったために研究開発したオーガニックの『OSAJI』というアメニティーを卸してもらっています。また麦由来の原料・バイオマスをプラスチックに混ぜてつくったブラシやシェーバーなどのアメニティーも揃えました」
<写真:敏感肌に配慮したブランド『OSAJI』>
<写真:バイオマスでプラスチック含有量を抑えたアメニティー>
丸「この丹前(綿を厚めに入れた日本の防寒用上着)も理事長が?」
沖田さん「そうです、これも赤と青どちらもユニセックスで男性女性とも着られるものです。丹前は寒い鳥取では必須アイテムですから(笑)。この丹前もせっかくなので鳥取三朝にきてもらって、楽しんでもらいたいと思います」
【コロナ禍に負けない鳥取三朝温泉の魅力】
様々な仕掛けやチャレンジを心から楽しんでいる三朝温泉の有志の皆さん。観光客を楽しませるために、花火師資格まで取得し、その模様をオンラインで生中継したり、となんとか街を盛り上げようと奮闘しています。
読者の皆さんも、ぜひ鳥取三朝温泉を訪れて、いろんなアイデアいっぱいの仕掛けを楽しんでみてください!
(執筆者: 丸野裕行)