世界を揺るがした〈闇サイト〉の驚愕の実話から⽣まれた映画『シルクロード.com ―史上最⼤の闇サイト―』( 原題『Silk Road』)が現在公開中です。
2011年、検索エンジンではヒットしないダークウェブと暗号通貨“ビットコイン”という二つの暗号化技術を用いて、違法ドラッグから武器の売買、殺人依頼まで完全匿名で取引可能にした闇サイト〈シルクロード〉が誕生した。“闇のAmazon”“ドラッグのeBay”とも呼ばれ1日の売上げは1億円超。警察、FBIのサイバー捜査を完璧にかわしていたが、2013年、遂に追い詰めたのはパソコンも使えないアナログ捜査官だった!
本作を手がけたのは、「ナイト・ストーカー: シリアルキラー捜査録」(Netflix)などを手がけてきた、ティラー・ラッセル監督。映画についてお話を伺いました。
――本作を拝見して、ドラッグを取引していた闇サイト「シルクロード」の存在を初めて知りました。監督はどの様な経緯でこのサイトを映画にしようと思いましたか?
闇サイト「シルクロード」については、新聞記事がきっかけで知りました。犯人であるロス・ウルブリヒトは元々壮大な夢を持った人物でし、美味しい儲け話にも興味がありました。それはかつての僕と重なりました。実は僕も軽犯罪に手を出してしまったことがあったのです。しかし、大事になる前に逮捕されたので、ロスの様に深みにはまらずにすみました。
――その様なことがあったのですね、ある意味でロスの気持ちが分かる部分もあったということでしょうか。
そうですね。僕とロスではどこが違ったのか? ロスの身に起きたことは、もしかしたら僕にも起きたかもしれない。映画作りをはじめた時、ロスは上訴したものの判決が下っていない状況でした。ロスに手紙を書いて「面会したい」と伝えようとしたのですが、彼の弁護士が警戒していて直接会うことは叶っていないのだけど、彼のバックボーンを踏まえて心情を想像することが出来たので、これは映画のいい題材になると思いました。そこからは、ロスがどんな人物で、「シルクロード」がどんなものなのか。報道資料やすべての裁判資料など、「シルクロード」関連の情報をむさぼるように調べて、自分なりのストーリーを描き始めました。
――ティラーさんは犯罪レポーターとして活動されています。そもそも、犯罪レポーターになろうと思ったきっかけ、なぜ今も犯罪を追い続けるのか伺っても良いですか?
犯罪が起きると警察が犯罪者を追いますよね。その犯罪者は捕まって法の裁きが下されるのか。それとも逃げきれるのか。犯罪物は着地点までの展開がはっきりしていてきれいなところに惹かれるのです。
――本作での事実とエンターテインメント性のバランスはどの様とられましたか?
できる限り、事実を忠実に描きました。ただ事実に忠実でありながらも、観客が登場人物たちに共感したり、ハラハラしたりしてほしい。張られたロープの上を歩くような非常に難しいバランス感覚が求められました。しかし“真実は小説より奇なり”ですね。起こった出来事をそのまま表現することで、驚くような展開になったのです。
――今おっしゃっていただいた様に、本作はエンターテイメントとして楽しみながら、闇サイトの怖さや、誰しもがそこに陥る恐怖を教えてくださったと思います。
そういっていただいてありがたいです。この作品に限らず、自分が手掛ける作品に共通していることなのですが、登場人物たちをジャッジしないということを大切にしています。もちろん麻薬取引や殺人といった犯罪を許容しているわけではありません。自分自身はこう思うという結論を観客に押し付けるのではなく、差し迫った状況で生きている主人公2人が経験したことを観客のみなさんにも追体験していただき、みなさんがそれぞれの結論を導き出していただければと思っています。今もいくつか犯罪物を手掛けていますが、もう少し光を感じるものにしたいですね。最後に希望が持てるような物語を紡いでいければと色々と思索しています。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。
『シルクロード.com―史上最大の闇サイト―』
【ストーリー】「世界を変えたい」─天才的な頭脳に恵まれたロスは、自由な世界を求め、表では絶対に買えない違法物を匿名で売買できる闇サイトを立ち上げた。〈シルクロード〉と名付けたサイトは、瞬く間に熱狂的なブームを巻き起こし、栄華を極める。ハデな動きですぐに警察にマークされるが、ロスは絶対に身元がバレない強固なシステムを創り上げていた。そんなロスを追う捜査官の中に、一人のはぐれ者がいた。彼の名はリック・ボーデン。問題行動を起こし、麻薬捜査課からサイバー犯罪課へ左遷されたもののアナログ全開で足手まといだった。しかし独自の捜査でロスとの接触に成功する。
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