どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
巷で数年以上前から流行っているクラウドファンディング。このクラウドファンディングとは、「Cloud(群衆)」と「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語です。「Webを介し、少額の資金を共鳴・共感した不特定多数の人々から調達する」という意味を示しています。
今まであれば、《資金調達=金融機関の借入、ベンチャーキャピタルや関係者による出資》というイメージでしたが、クラウドファンディングは今までの資金調達とは違い、手軽で情報拡散しやすく、マーケティングのテストにも活用できるポイントが魅力なんですね。
ビジネス関連のサロンを主宰し、最近吉本興業との契約を打ち切ったキングコングの西野亮廣さんは、このクラウドファンディングで行ったオンラインサロンで、すでに3億近くを集めたそうです。
しかしこのクラウドファンディング、最近になって、詐欺にも利用されているというのです。
今回は“クラファン詐欺”に詳しいI氏に話を聞きました。
被災者への寄付金がまったく活用されない募金型クラファン
丸野(以下、丸)「僕はまったくこの手の話を知らないので、クラウドファンディングができたころの昔からの手口を教えていただきたいんですが?」
I氏「クラウドファンディングには、3種類の調達があります。《寄付型》《購入型》《金融型》の3つです。まず《寄付型》の調達は、公益事業などの活動を行う団体が利用できます。支援者(パトロン)から集めた金を“寄付金”として受け取ることができるんですね。対価性のないリターンが設定することができるので、救援物資だとか、被災者の写真であるとかそのようなものを送ります。支援者はこの寄付に関しては、“税制優遇”を受けることができるんです。だから、支援者自体は痛くもなんともないんですよ」
丸「ほほう」
I氏「寄付型で発生する詐欺は、この寄付金を騙し取られてしまうケース。寄付型のクラファンは、東日本大震災以降に頻発しています。その後にも起こった熊本地震などの震災復興のために寄付してくれという調達が名目でも、ホントにそれ(復興)に利用されるのかは投資する側からはわかりませんしね。まったく使われないなんてこともあるわけです」
丸「僕も以前“募金詐欺”についての記事を書きましたが、寄付金というのはこのような詐欺が起こりやすいですよね。実はIさんは、過去にこの詐欺の手口を使われてしまったことがあるとか?」
『卑劣手口!「募金詐欺を行っている男」に話を聞いてみた』 https://getnews.jp/archives/2199302
I氏「そうなんです。今ほど詳しくなかった昔に騙された経験があります。支援型のクラファンというのは、シンプルに言うと“Web上の募金箱”。災害だけではなくて、難病を抱えている子供たちを救うプロジェクトも多く見受けられますが、その用途にしっかりと活用されるかどうかは、わかりません。その他海外のボランティアなんかもよくありますね。それも、単に海外旅行に行って適当に貧しい子供たちの写真を撮って、遊んで帰国してくるというケースもあります」
丸「とんでもない連中ですね」
I氏「ええ、そうですね。現在ではコロナ禍で困窮している飲食店を援助しようという詐欺が流行っています」
リターン予定の商品と違うものが届く、リターンがまったく届かない
I氏「最近では、当初予定されていた特別冊子が情報商材のネット本だったという事件も起こっています。当初は出版本と別に《特別冊子贈呈》を支援者に謳っていたのですが、いざ届いてみるとそれは紙媒体とは違い、Web媒体でだったということも起こりました。ですから、支援者もクラファンの運営側でも対策が必要です」
丸「情報商材とは胡散臭いですね」
I氏「一般的にクラウドファンディングは計画が難航したり、失敗しても返金をする決まりはありません。法的に拘束力もないんです。このような詐欺は、現在でも国内でも海外でも続発しているんですね」
丸「なるほど」
Webで大炎上した事件とは……
丸「ほかにもありますか?」
I氏「2018年に、クラウドファンディングサイト『CAMPFIRE』で事件は起こります。《胸が大きくて悩む女子のために下着を作りたい》という名目でMという中学生起業家が資金調達をスタートしたんですね。2ヶ月の間に81万円もの資金が集まったんですが“私の知識不足で可愛い下着を作ることができませんでした”と突然プロジェクトを中止」
丸「ええっ」
I氏「返金の義務がないということで、彼女はそのまま資金を持ち逃げしました。ネットは騒然でしたね」
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この他、資金運用せずに配当などに充てる投資型のケースは、《ポンジ・スキーム》という詐欺になり、Webを通して出資を募って不動産ローンや中小企業への資金提供などを行うそうです。これは『みんなのクレジット』事件として、証券取引等監視委員会から行政処分が下りました。
それに伴って、業務停止命令。中小企業や不動産ローンなどに融資していたはずが、実際のところ自社のグループ企業に貸しつけていたそうです。さらに、『みんなのクレジット』の代表は、支援者から募った貸付資金の一部を個人口座に移動させていたというのです。さらに海外では巨額詐欺事件まで……。
ですから私たちも、気軽に支援や投げ銭をするのではなく、クラウドファンディングを行っている会社の実情についてしっかりと確認しなければいけません。クラウドファンディングは、様々な夢を達成しようとする企業家ベンチャーだけではないということを肝に銘じておきましょう」
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(執筆者: 丸野裕行)