富裕層が娯楽として人間狩りを行うーその過激で残忍な描写も含め、政治的陰謀論のはびこるアメリカ社会への痛烈な風刺から全米で物議を醸し、一度は公開中止に追い込まれた戦慄のサバイバル・アクション、『ザ・ハント』が絶賛上映中です。
本作は、現代のアメリカを二極化する”上流階級VS庶民階級”や、蔓延るweb上の陰謀論に着想を得たとされ、さらに昨今、日本でも問題となっているSNS上でのヘイト発言などを「人間狩り」に置き換えて過激に風刺。スピーディーに展開される予測不能な激しいバイオレンス描写とモラル破壊の表現から、当時の全米の銃乱射事件もきっかけとなり、トランプ大統領が作品名こそ挙げなかったもののツイッターで批判するなど物議を醸し、ユニバーサル・ピクチャーズは公開を一旦白紙にしたという経緯があります。(参考:https://www.afpbb.com/articles/-/3239536)日本でもその結果2020年2月26日の公開を中止となりましたが、今回無事公開されたというわけなのです。
強烈な風刺と問答無用の”人間狩り”展開に、SNS上では早くも「観客の予想の一歩先を行く主人公の判断や行動の早さが痛快!」「発想がめっちゃ面白かった」「これは人間狩りものの傑作では」と熱狂の声が殺到している本作。
この戦慄のゲームの幕開け、エリート集団が娯楽目的で”人間狩り”を実行するため、何も知らず森に連行され目を覚ました12人の”獲物”となる男女の前に置かれた木箱には、ゲームの盛り上げと情けをかけたエリート達による上から目線の武器と支給品が収められています。
武器の調達を担当したハワード・ファノンは、刀から、スミス&ウェッソン社製の.357マグナム6インチや、軍および警察でも使用されるMP5といった有名なもの、さらにSIG社製の軍事規格の最新鋭全自動拳銃まで、新旧さまざまな武器をかきあつめ、「SIG社の拳銃やライフルから、45口径やリボルバー、弓や斧に至るまで準備。TEC-9やグロック、16発撃てるKel-Tec12番径ポンプアクション式ショットガンも揃えたそう。狩られる側に提供する箱には、選べるように色々なタイプを入れようと心がけたのです。また、米軍の戦闘糧食であるMREと水と救急セットも用意。
しかし劇中では、水分を補給して、好きな銃やナイフを選んだあと、他の支給品を残したままでその場を去ります。製作陣は、「長期のサバイバルに備えるよりも、短期間のサバイバルに必要なものを持っていくキャラクターが多いだろうと考えたんだ」と、この尋常ならざる状況に置かれた人間たちの心理を細やかに描写しているのです。
一方の狩る側である、好きな武器を変える資金と自由があるエリートたちは、実用性よりも見た目やブランドを優先して選ぶだろうと考えた製作陣。プロダクション・デザイナーのマシュー・マンが「こういう現実離れした裕福な人間は、きっと映画で見た銃を選びたがるだろうというアイデアは面白かったね。あるハンターは『ジョン・ウィック』(14)の銃を使っている。ジェームズ・ボンドの銃としてワルサーPPKを使っているハンターもいれば、『パルプ・フィクション』(94)の銃を選んだハンターもいる。クールに見えるし、クールであることが何より大切だからね」と皮肉めいた意図を明かしつつ、強力で射程距離が長い銃など実戦を想定したものも採り入れ、頭の切れる人物も潜ませていたことが窺えます。「最新の50口径スナイパーライフル、Seekinsの308口径ハンティングライフルもあるし、もっと小さくて近距離用の拳銃もたくさん準備されている」。
目の前で繰り広げられる残酷な表現や過激な風刺を堪能するのももちろん、実はこうして細部まで練り込まれた世界観によって絶妙なリアリティを放っている本作の奥深さをチェックしてみてはいかがでしょうか?
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