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日南響子「わたしはどこまでいっても満足しないタイプ」:映画『銃2020』インタビュー



作家・中村文則の同名デビュー作を映画化、2018年に公開された『銃』の企画・製作を務めた奥山和由氏の着想によって新たな視点で映画化した『銃2020』が現在公開中です。『銃』と同様、企画・製作を奥山氏が務め、あの話題を集めた「全裸監督」総監督の武正晴監督が監督と脚本、そして中村氏自身も原案と脚本を務めた、オリジナル作品になります。


登場人物の全員が狂気に満ちている本作について、主人公の東子(トオコ)を演じた女優の日南響子さんにインタビュー。『銃』ではキーマンのトースト女を演じましたが、本作では銃を拾ったことで、その銃に翻弄される女性を熱演。主人公は「自分に置き換えてみると、共感するところは多いかも知れないです」など、赤裸々なトークを展開してくれました。


●今回は変わったタイプのオファー、ということになりますよね?



前作の舞台あいさつでしたので完全に公開オファー、ですよね(笑)。前回演じたトースト女はキーマンと言っていただいていたのですが、毎回舞台あいさつに呼ばれるとは思ってなくて。でも評判がいいということで毎回お声がけいただいて、あれよあれよと最終日まで(笑)。最初の大きな回だけでなく、主演の虹郎さんがいない回にも出ていたという。


ステージで「次は日南がヒロインで!」と言われ、それは舞台あいさつに何度か登壇したことへの気遣いかと思っていましたが、本当に実現するとはまったく思っていなかったんです。だから事務所に連絡が入った時は「本当に?」って感じでした。とても驚いた記憶がありますね。


●今回の主人公・東子は、意外に共感を呼びそうなキャラクターのような気もしますが、いかがでしょうか?



そう思います。自分に置き換えてみると、共感するところは多いかも知れないです。東子って精神的に不安定なため挙動不審な部分があるのですが、わたしも一時期人間不信になりそうな時期があり、挙動不審だよね?って言われていた時期もあったんですよ(笑)。わたしは独立を機にそれが治ったのですが、東子は自分で閉じこもることを選択した、わたしもそうだった。人と目を合わせることも怖かったし、わたし自身、東子の気持ちがよくわかるんですよね。


●偶然に銃を拾ったことで翻弄されていくシチュエーションは、実人生で銃を拾うことはないので、何かの象徴ではありますよね。


監督の説明では、銃は東子にとって恋人・男性を意味していると、そういう話はしました。でも、出会うって、お互いに引き寄せていると思うので、それは必然じゃないのかなと。東子にも直感で呼ばれている感覚はあったような気がしますね。ラストもそうですが、銃にもちゃんと意思がある考えで、わたしは芝居をしていました。お互いが振り回しているような、そういう理解ですね。


●振り回されているようで、振り回してもいるという。



そうですね。前作では虹郎さんが振り回されているという感覚で観ていたのですが、結局自分が東子という立場で脚本を読み進めてみると、これはお互いに悪いぞと思うところはありました。銃を持ったことで出会う人たちがいて、そうじゃなければ出会うこともないという。連鎖のタイミングがすべて一致してしまい、何が起こるかわからない怖さもありますよね。今の時代にすごく合っているなと思いましたね。


●ところで女優業については、今どういう想いでされているのですか?


これまで何度か表舞台を去っては戻ってきていて、やっぱり東京に戻されるのか東京に、と思うことは多々ありました。なんだろうこれって。わたしの場合、音楽活動もそうなのですが、引っ張っていく役割を背負う人間が、誰かについていこうとしてしまうので、上手くいかない。つまり、ついていこうにも、ついていく人がいないわけです。「役割をちゃんと把握しないと」とアドバイスをいただいてハッとしたのですが、なんとかしなければならない課題なんだと思っています。


●最後に、すべて踏まえて、自己採点はいかがでしょう?



わたしはどこまでいっても満足しないタイプだな、とは思いました。ただ、思い出したことがあって、わたしが初めて主演で仕事をした時の監督がおっしゃっていた「10年後、20年後に作品を見返して、まだまだ甘いなと思う分にはいい。でも、撮ってすぐ後悔だけはするな」という言葉がずっと心の中に残っていまして。撮影って自分で納得していなくても淡々と進行していってしまうので不安な気持ちはあったのですが、主演のプレッシャーを抱えたまま撮影していくことを学べたことは大きかったかなって。そういう意味でも成長できたかなとは思っています。もしかするとコロナで公開がなくなるのでは……とも思いましたが、無事に公開しましたので、できればたくさんの方に観てほしい。作品に関わってない一般のお客さんが観た時にどういう感想が出るのかなってすごく気になるので、すごく楽しみにしています。



公開中


(執筆者: ときたたかし)


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