どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
「どっかに大金落ちてないかな~」……そんなこと、考えた事ありませんか?
誰しも一度はしてみる妄想ですが、実際にゴミの中から1千万円の大金をみつけて拾ってしまった男性がいるんです。
そこまではよかった……しかし、それの代償は“命の危険にさらされた”ことでした。
今回は、その男性・西村健さん(仮名/40歳/パチンコ店勤務)に一体何があったのかをお聞きしたいと思います。
ゴミ集めが商売になると開業
丸野(以下、丸)「どんないきさつで、ゴミをあさるわけですか?」
西村さん「僕は昔から、当たり屋だのノミ屋だの昔から胡散臭いことばかりやってたんですよ。でも、近所の奥さんたちが“またゴミの分別が厳しくなったらしいわよ。ちょっとでもなんか異物が入ってたら、持って行ってくれないしね、困ったわ”と話しているのを耳にしたんですよ。で、“よし! マトモに働くぞ!”と一念発起しまして、非分別ごみの回収業者をやることにしたんです。ものぐさな単身者とか、今話を聞いた主婦とか、どうせベランダがゴミだらけになっているんだろうと踏んだわけですね」
丸「なるほどね」
西村さん「いつでも分別していないごみを引き取りますよ、というサービスを提供しようと。で、僕はすぐにチラシを作りました。『何曜日でも電話をもらえれば、分別していないごみを即日回収します! 月額1万円(以降、契約は自動更新)』という内容です。狙いは小金持ちの連中です。料金帯は少々高いんですが、絶対に食いつくだろうと確信しましてね」
丸「で、反響は?」
ズボラ族が飛びつくサービス
西村さん「反響はすぐでした。近所にチラシをポスティングした翌日に、ベランダ中ゴミだらけにしたキャバ嬢から連絡があって……。近所のババアがゴミ出しにうるさくて出せなかったそうです。回収してきたゴミは分別した後に、指定されたごみの日まで一旦知り合いのスクラップ工場の敷地に貯めて、街のゴミ集積場にポイッ。それだけの仕事でも、喜ばれるわけです」
丸「いいアイデアですね。なんかの法律に引っかかってそうですけど……」
西村さん「1週間で2人。1ヵ月で10人の顧客ができました。それだけで、10万円ですから……。客は順調に増えていきましたね。やっぱりメインになるのは、水商売のお姉さん。次に単身赴任のお父さん、いわゆる片付けられない女や体が動かない高齢者です。半年もすると、顧客が36人にもなりました」
丸「すごい! 儲かるじゃないですか!」
西村さん「客が増えれば増えるほど、そのゴミもバラエティに富んでいます。独身男のゴミからは女装写真が大量に出てきたり、単身赴任のお父さんのゴミからは大量のどんぐりが出てきたり、なぜかキャバ嬢のゴミからは作業着が出てきたりと毎日それなりに楽しかったですよ。ズボラ族はやっぱりおかしな生活をしているようですね」
丸「(笑)」
紙包みの中から大量の諭吉が……!
西村さん「で、商売をはじめて7カ月くらい経ったときに、いつも通り大勢の客のゴミをおっ広げて分別していると、ポリ袋の中にブロック大の紙包みが入っていました。また変なもんだ……と思って開けてみると、僕の手がブルブルと震えました。なんと、札束だったんですね。福沢諭吉が1千人ほど入っていて、誰のゴミかわからないわけです。不動産屋の脱税対策か? 独居老人のタンス貯金か? ホストがトチ狂って捨てたとか? 頭をひねれど、答えなんて出るわけもありません」
丸「でしょうね」
西村さん「そこで僕は必死で都合のいいことを考えました。“捨てたんだからオレがもらってもいいよな……だってゴミに出してるんだから”と。心の中でつぶやき続けると、気が大きくなってきて、気がつけば、その中の数枚を抜き出していました」
丸「あららら……」
贅沢三昧の日々を送る
西村さん「それからは、毎日寿司屋や焼肉、フランス料理、懐石料理を食い漁り、風俗や高級キャバクラに通って、10日のうちに100万ほど使っちゃいましたね。もちろん、欲しかったフィギュアや電化製品なんかもゲットしました」
丸「いきましたね~」
西村さん「すると、毎日外出しているところを尾行されているような気がしてきたんです。そのときは、やっぱり心のどこかでネコババしたことへの罪悪感が、この胸騒ぎを生んでいるんだ、と思ってましたが……」
車のタイヤがパンクさせられている
丸「それでどうなったんですか?」
西村さん「でも、それは気のせいではなかったんですよね……。再び金を使い続けて2、3日経った頃、自転車のサドルがなくなっていたり、自宅の中の物の位置が変わっていたり、郵便物が届いていなかったり……。段々怖くなってきて、頭の中で妄想が膨らみました。“ひょっとしてこの金は大規模犯罪集団のものなんじゃないだろうか”“1千万がゴミに紛れ込んでいて、オレに目をつけたんじゃないだろうか”と。頭を抱えていると、ついに決定打の出来事が……」
丸「どうしたんです?」
西村さん「自宅前に停めていた自家用車と仕事用の軽トラのタイヤがザックリとナイフでえぐられていたんです。もちろん、すべてのタイヤがパンク状態。背筋に恐怖心が駆け上がってきました」
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いかがでしたか?
命の危険を感じた西村さんは、パンク事件のすぐ後に手元に残る730万円を持って、警察に駆け込んだということです。もちろん260万つまんだことは内緒にして、すべて遺失物として引き渡したとのことでした。
その事件は翌日新聞に小さく載ったそうです。以来、彼は人のゴミを扱うのが怖くなり、完全に足を洗ったそうです。もちろん持ち主は現れずに、拾得者に権利があると言われましたが、放棄。警察に届けた後は、幸い彼の身に何も起こらなかったとのことです。
ネコババすることが割に合わない典型のお話ですね。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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