ラース・フォン・トリアー監督の最新作『ハウス・ジャック・ビルト』が現在公開中。
建築家を夢見る男・ジャックが、とあるきっかけでアートを創作するように連続殺人に没頭していく様を描いた本作。先日、犯罪心理学者の桐生正幸氏が本作を分析したレポートをご紹介しましたが、桐生氏はジャックが起こした様々な殺人事件について、「70~80年代には、このような連続事件が沢山発生していましたから、監督があえてその時代背景を選んで表現したと考えていいと思います」と分析しています。
一方、トリアー監督はインタビューで「殺人の描写については病理学者に話を聞くなどリサーチをしてリアリズムにはこだわっているが、類似した実際の犯行や、犯罪者については知らなかった」と発言。
しかし、ジャックの犯行は現実に起こった事件に断片的に似ている部分があります。トリアー監督の頭の中で生まれたシリアルキラー像がたまたま実際の事件と似ていたのか? あるいはトリアー監督の頭の片隅にあった記憶の断片が結びついたものなのか? 真相は監督本人のみぞ知るといったところではありますが、トリアー監督の創造のヒントになったかもしれない実在のシリアルキラーまとめをご紹介しますよ。
死体を冷凍保存する手法は劇中でも――
【リチャード・ククリンスキー(1935年~2006年)】
主に男性をターゲットとし、マフィアからの依頼を受け殺人を犯す殺し屋。生涯で殺害した人数は不明だが、一説には100人から250人の間であろうとされている。死亡時刻の特定を困難にするため、被害者の死体をしばしば凍らせていたことから“アイスマン”の異名を持つ。本作のジャックが死体を冷凍庫に保存する手法は彼から影響を受けているのか、劇中には、アイスマンの写真が印象的に挟み込まれるシーンが存在している。
ハンニバル・レクターのモデルの1人
【ヘンリー・リー・ルーカス(1936年~2001年)】
全米17州で300人以上を殺害したとされる、著名なシリアル・キラーの1人。幼いころから母による激しい虐待により、女性に対する意識が大きく歪んでいた。殺人を犯す際はまず拷問を行い、相手が気を失ってもわざわざ正気に戻してから最後に殺すといった極めて残虐な手口だった。本作で描かれる犯行も女性をターゲットにしたものが多いが、ジャックの家庭環境は本編で描かれることはなく、謎に包まれている。
シリアル・キラーという観念を作るきっかけになった代名詞的存在
【ジョン・ウェイン・ゲイシー(1942年~1994年)】
自身の同性愛を隠すために殺人を重ね、少年を含む33名を殺害したとされるシリアル・キラー。慈善活動の一環で、よくピエロに扮して子供たちを面白がらせていたことから、「殺人ピエロ」と呼ばれた。ゲイシーは逮捕後、死刑を免れるために多重人格が症状のひとつとされる解離性同一性障害だと偽り、「自分の中に4人の『ジャック』がいる。殺したのは4人目の『ジャック』だ」と訴え続けていた。そのような悪知恵を働かせる点では、劇中、自らサイコパスであることを認識し、それを隠すために表情の練習などを行うジャックともよく似ている。
ジャックによく似た“イケメン殺人鬼”
【テッド・バンディ(1946年~1989年)】アメリカ史上もっとも最悪な連続殺人犯の一人と称され、若い女性をターゲットとし、7つの州で30人以上殺害したとされるシリアル・キラー。”イケメン殺人鬼”と呼ばれるほどのその整った容姿と言葉巧みなカリスマ性を利用し、多くの被害者の信用を勝ち得たと言われる。バンディは、人目につく開けた場所で、怪我人や障がい者を装ったり、警察官や消防士などの官憲であるかのように振る舞う手口を常套手段とし、ターゲットに近づいたとされる。本作でも、ジャックが警察を装って女性の家に入ろうとするシーンがあるが、そう簡単にうまくはいかないようだ。
『ハイスクール・ミュージカル』で知られるイケメン俳優、ザック・エフロンがテッド・バンディ役を演じる実録映画『Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile(原題)』が5月3日よりNetflixにて全米で配信スタートしており、ザックの怪演っぷりが話題を呼んでいる。
また、過去に反響を呼んだ東京・銀座 ヴァニラ画廊の『シリアルキラー展』が6月18日(火)より開催。上記で紹介したジョン・ウェイン・ゲイシーやテッド・バンディなど、小説や映画のモデルにもなった欧米のシリアル・キラーたちにまつわる作品や資料が展示されます。特別展示として、『ハウス・ジャック・ビルト』劇中に写真で登場するリチャード・ククリンスキーの展示も急遽決定。受付で『ハウス・ジャック・ビルト』の半券を提示すると、『シリアルキラー展2019』入場料が2,000円(税込)→1,600円(税込)に割引されるとのことです。
シリアルキラー展2019 概要
開催日程:6/18(火)~7/11(木)
場所:ヴァニラ画廊 展示室AB(中央区銀座8-10-7 東成ビルB2F)
入場料:2,000円
映画『ハウス・ジャック・ビルト』 公開中
http://housejackbuilt.jp/
記事中の画像やリンクがすべて表示されない方は『ホラー通信』掲載の元記事をご覧ください –https://horror2.jp/
―― 面白い未来、探求メディア 『ガジェット通信(GetNews)』