晩婚化の進む昨今、老齢の親同士が“代理お見合い”をして息子・娘の結婚相手を見つけてくるという話も聞きますが、ボノボ(ピグミーチンパンジー)の社会でも、母親が息子のために似たようなおせっかいを焼いているようです。
ボノボの群れは、オスは成長しても群れに留まる一方、メスは別の群れに移動して自分の家族を持つようになる父系社会ですが、群れの実質の“最高権力者”は常にメスであることが知られています。
ライプツィヒ・マックスプランク進化人類学研究所のマーティン・サーベック博士によると、ボノボの社会では母親の行動が孫の数に大きな影響を与えるといいます。コンゴで野生のボノボの群れの観察を続ける博士の研究によると、群れの上位に属するメスは頻繁に自分の息子を発情期のメスに近付けようとし、交尾中の息子に近付こうとする他のオスを妨害。息子と他のオスとの争いに加勢することで、息子が群れの中で支配的地位を獲得・維持するのを助けようとする行動が見られたとのこと。このように頼もしい母親と同居する成熟したオスは、母親のいないオスよりも約3倍も子孫を残す可能性が高いことも分かったそうです。
母親が息子の争いに加勢する行動は近縁種であるチンパンジーの群れでも観察されましたが、母親が息子の交尾を後押しする行動はボノボにしか見られないもので、群れに母親のいるオスのチンパンジーが子孫を残す可能性は、いないオスに比べむしろ1.26倍低くなっていました。オスが優勢なチンパンジーの群れでは母親の役割は小さいためと考えられます。
ボノボの母親のこれらの行動は、自分自身の子供を増やすことなく直系の遺伝子を広めるための戦略ではないかと博士は考えています。また、同様に母親が直系の子孫を支援する種(人間やシャチ)では、繁殖期間が終わった後の女性の寿命が男性よりも極端に長いことから、ボノボのメスも長命である可能性を示唆しているということです。
画像とソース引用:『Current Biology』及び『pixabay.com』より
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)30338-0[リンク]
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