アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』(創元推理文庫)、もう読まれましたか? 12月の時点で各ミステリベストテンの4冠を達成後、”本屋大賞翻訳小説部門”、翻訳者が選ぶ”翻訳ミステリー大賞”、”翻訳ミステリー読者賞”でも1位を獲得。合計7冠をゲットし、今や国民的大ヒット作となりました。「カササギにハマったけど、次に何を読んだらいいかわからないな〜」とお悩みのあなたに、残りの連休を読書で楽しむためのタイプ別オススメ翻訳ミステリ4冊をご紹介します。
<名前を知っている作家の作品が読みたい!>
今書店に並んでいる翻訳ミステリで一番有名な作家はといえば、これはもう間違いなく第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンでしょう! 『大統領失踪』(越前敏弥・久野郁子訳/早川書房)は、クリントン元大統領とベストセラー作家ジェイムズ・パタースンという大物コラボによる、超一級のポリティカル・スリラーです。テロリストとの内通疑惑がささやかれる元特殊部隊員の大統領の前に、国家を揺るがす未曽有の危機が迫ります。派手なアクションや巨大な陰謀などの手に汗握る展開はもとより、大統領経験者しか知り得ない意外なトリヴィアも満載で、最後の1ページまでノンストップの面白さ! 上下巻イッキ読みなら達成感もひとしおですよ!
<ぞわぞわするサスペンスが読みたい!>
リッチで優しいイケメンとの結婚が一転して生き地獄となるデビュー作『完璧な家』で読者の度肝を抜いたB・A・パリスの待望の第二作『正しい恋人』(富永和子訳/ハーパーBOOKS)はいかがでしょうか。主人公フィンがいっときも離れず大事に扱ってきた最愛の女性レイラ。ついにプロポーズしようとした直前、彼女は突然姿を消します。それから12年が経ち、新しい相手と婚約したフィンでしたが、死んだと思われたレイラの姿を近所で見かけたという情報が入り・・・・・・。物語が進むにつれ、読者はだんだん居心地の悪さを感じますが、それがなぜかわかった時、背筋がゾッとするような真相があなたを待っています。読んだが最後、このイヤさは絶対にくせになります!
<一息つける楽しい作品が読みたい!>
休暇といえば昼ビール! それならエリー・アレグザンダー『ビール職人の醸造と推理』(越智睦訳/創元推理文庫)をぜひ。シアトルに近い町の老舗ブルワリーに嫁ぎ、職人として働く主人公。夫の浮気のせいで別の店で働き始めると、なんと殺人事件が発生。ミステリの人気カテゴリのひとつに”お仕事もの”がありますが、本書はその醍醐味が存分に味わえる作品です。醸造の手順はもちろん、美味しそうなおつまみやビールの種類のうんちくなど、とにかくビールを飲みたくなること間違い無しの楽しいミステリ、グラス片手にリラックスしてお読みくださいね。
<過去の名作が読みたい!>
先日復刊されたばかりの、95年の「このミス」1位、スコット・スミス『シンプル・プラン』(近藤純夫訳/扶桑社ミステリー)が未読なら、真っ先にオススメいたします! 田舎町でほそぼそと暮らす主人公ハンクは、墜落した小型飛行機の内部で、パイロットの死体とともに大量の現金が入った袋を見つけてしまいます。その大金は、一緒にいた兄と友人、そして妻の人生を狂わせていくのです。じわじわと主人公たちを追い詰める冷酷な運命。サム・ライミ監督の映画でご存知の方もぜひ一度、原作の凄まじい緊張感と衝撃の結末を味わってみてください。
以上4作品、どれも自信を持ってオススメいたします。どうかお気に入りの一作が見つかりますように。
【書いた人】♪akira 翻訳ミステリー・映画ライター
月刊誌「本の雑誌」で翻訳ミステリー新刊ガイドを2年間担当。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」HP、月刊誌『映画秘宝』等で執筆中。
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