ラップで巨大ヘビは倒せるか?
そんな誰の頭にもよぎらない疑問の答えを導き出す誰得モンスターパニック映画、その名は『スネーク・アウタ・コンプトン』。説明するのも差し出がましいですがヒップホップグループN.W.A.の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』のもじりです。
これ、おふざけ邦題ではなく原題そのまま。本編にも“スネーク・アウタ・コンプトン”、“ストレイト・アウタ・コンプトン”というワードが出てきます。ネタ元の名前まで出すなよ。
舞台はもちろんカリフォルニア州コンプトン。どんな事情があったのか特に説明もなく、飛行中の飛行機から一匹のヘビがブン投げられます。
無残に地面に叩きつけられたヘビの死体から、運よく生きている卵を見つけた生物オタクの青年バーケル。ヘビの卵で自作の発明品――生物を無限に成長させる“成長ビーム”を試すことにしたバーケルは、ヘビでの実験がうまくいけば己の股間のミニ・ヘビ(男性器)にもビームを当てて立派に成長させてやろうと目論んでいるようです。狂ってやがるな。
実験は見事成功。ヘビはみるみる成長し、なぜか角まで生えてややファンタジックなルックスへと進化。ツノクサリヘビかな? バーケルのもとから逃走したヘビは、巨大化を続けながらコンプトンの住人を次々と襲撃。地元のラッパーたちは、この巨大ヘビに立ち向かうはめに……!?
モンスターパニックものですが基本的にスリルはないので心臓に優しい仕様。登場する人物はひとり残らずアクが強く、ギャグは「思いついたやつ全部入れてるだろ」というくらい盛り込みすぎていてツッコミが追い付かないレベル。
この“ほどほどにしておく”という感覚が欠如した監督の感性はどんどん加速していき、後半はジャンル映画愛溢れる様々なオマージュがもりもり投入されて予想外の展開を迎えます。とにかく情報量がすごい。なんの根拠もありませんがおそらくココイチでカレーに全部乗せトッピングとかするタイプでしょう、この監督。
決してクオリティの高い映画ではありませんが「これ作った人、人生楽しそうだな」と思わせる妙な幸福感があります。巨大ヘビのキャラデザが結構かわいいのも憎めないポイント。スマートに生きることに疲れたあなたの肩の力をちょっと抜いてくれる映画かもしれませんよ。
監督・脚本は、『ツイン・ピークス』のシェリリン・フェンとレイ・ワイズが共演した人喰い熊ホラー『アンナチュラル』を手掛けたハンク・ブラクスタン。動物好きなのかな。
<上映情報>
特集上映『未体験ゾーンの映画たち2019』で上映
・ヒューマントラストシネマ渋谷 2/1~
・シネ・リーブル梅田 2/16~
・青山シアター(オンライン上映)2/8~2/21
公式サイト:https://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2019
作品概要
『スネーク・アウタ・コンプトン』
監督:ハンク・ブラクスタン
脚本:アシュレイ・スコット、マイヤーズ・ハンク
出演:リッキー・フラワーズJr.、モータウン・モーリス、ドンテ・エシエン、タルカン・ドスピル、アウレリア・マイケル、エリック・エリクソン
配給:インターフィルム
原題:SNAKE OUTTA COMPTON
2018年 / アメリカ / 83分
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