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まちづくり・地方再生で注目を集める嶋田洋平さん 活動を追うドキュメンタリー映画『建築をあきらめる(仮)』



皆さんは「リノベーション」という言葉を聞いて、どんなことを思い浮かべますか? 古いマンションの中をリノベーションする、水周りだけリノベーションした…などなど、“修復”の意味で使っている人が多いのでは無いでしょうか。


しかし「リノベーション」には“改革・刷新”という意味もあり、建物の機能や見た目を新しくきれいに修復するだけの意味だけにおさまらないのです。そんな一般的な概念を覆す、いや、本来の正しいリノベーションを自ら実践しているのが嶋田洋平さん。日本各地でリノベーションスクールを開催し、地方再生への取り組みを地域の皆さんと一緒に行っている建築家です。


現在、彼の挑戦を追ったドキュメンタリー映画『建築をあきらめる(仮)』のクラウドファンディングが展開中です。嶋田さんが行っているのはどんな事なのか? 色々とお話を伺ってきました。




【嶋田洋平さんプロフィール】

1976年福岡県生まれ。東京理科大学理工学研究科建築学専攻修士課程修了後、建築設計事務所「みかんぐみ」チーフを経て、2008年らいおん建築事務所を設立。2012年北九州家守舎を、その翌年には都電家守舎を設立し、生まれ育った北九州市の小倉やそして家族と暮らす豊島区雑司が谷など、全国各地の縮退エリアでリノベーションまちづくりによる再生事業を行っている。小倉魚町での実践によって「国土交通大臣賞」「都市住宅学会業績賞」「土地活用モデル大賞審査委員長賞」「日本建築学会賞教育賞」を受賞。著書に「ほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくり」(日経BP社)、共著に「2025年の建築 七つの予言」(日経BP社)、「最高に気持ちいい住まいのリノベーション図鑑」(エクスナレッジ)等。


――嶋田さんが出演するドキュメンタリー映画『建築をあきらめる(仮)』のクラウドファンディングについて色々とお話を伺いたいのですが、最初のきっかけというのはどんなことだったのでしょうか?


嶋田:僕は最初テレビのドキュメンタリー番組に出たいと思っていました。でも、僕が一緒にリノベーションスクール等でご一緒している、「ブルースタジオ」の大島芳彦さんという方がいて、その方が『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演されて、それを見てあきらめました。なぜかというと、日本のリノベーション界を作ったのは大島さんなので、リノベーションのPR目的を考えたら絶対に大島さんが出るのが正しいと思ったんです。大島さんがゴールに近い場所にいるので、僕は後ろからボールを集める方にまわろうと。「よし、テレビのドキュメンタリーはあきらめた」と寝ながら考えた翌日に、大高健志さん(Motion Gallaly)と中村健太君(東京仕事百貨)に「嶋田さんを主人公とした映画を作りたい」と言われました。


――すごいタイミングですね。


嶋田:そう、不思議ですよね。何かを捨てると何かがやってくるというか。


――『建築をあきらめる(仮)』ってものすごいタイトルですよね。


嶋田:そうなんですよ、大反対しました(笑)。


――えっ、嶋田さんが考えられたわけではないと。


嶋田:そうです。猛反対しました。でもこれは映画なので、監督の作品ですからね。


Motion Gallaly大高さん:補足すると、「R不動産」の林厚見さんが「建築をあきらめたくなかったから、建築家をあきらめた。」とおっしゃっていて、その言葉に感銘を受けた中村君が、そのメッセージをキャッチーにタイトルで表現して『建築をあきらめる(仮)』になったそうです。


嶋田:林さんが言ったことを僕は理解しているんだけど、僕別にあきらめてませんから(笑)。僕ってきっと多くの建築家の方からは冷ややかに見られていると思うんです。建築家という仕事は否定していないけど、これまでの建築のあり方は時代に合わないと強く主張しているので。「建築家は絶滅危惧種」と言っているんですが、建築家をしている人がいなくなるわけじゃなくて、これまでどおりの仕事のやり方や、今までのお金の稼ぎ方が将来無くなるよと言っているだけなので。


――そういった考え方に変わったのがいつ頃からですか?


嶋田:2008年に独立したくらいからですね。これまでいた事務所は、大手では無いけど有名だったので、待っているだけで次々と華やかな仕事がやってくるんです。それが、独立したら嶋田洋平という名前では仕事なんて来ない。それでふと街を見渡してみると、使われてない建物がたくさんあるのでガンガン新しい建物を作っている。そういう状況って何なんだろう? って考え直すきっかけになったのがその頃です。


「もう建物って新しく作らなくて良いんじゃないか」と思った時に、それまでは「建物を作る」ことを仕事にしようとしていたわけですけど、「建物を作る“以外”のこと」を仕事にしようと思ったんです。そうしたら、建築の設計やデザインを依頼されることだけが仕事だったんですけど、それ以外をやると決めたら何やってもいいわけじゃないですか。そんな考え方ですね。


――なるほど、それってすごく面白いけれど新しい考え方ですよね。


嶋田:その頃に、北九州・小倉の商店街にある空きビルを「どうにかしてください」って相談があったんですね。これまでだったら「家を建てたいです」って依頼だったのが、「ビルの使い方を考えて欲しい」ということで。それで、どうしたもんかと考えた時に、商店街は空き店舗だらけだけど人が全然歩いていないわけじゃないので、もっと若い人達が安い家賃で事務所やお店を借りることが出来たら良いなと思いました。商店街は家賃が高くてあきらめていた人達も何人かで分けたら借りれるんじゃないかと。


それで実際に動き出したわけですが、「こういう使い方をしたら若い人が増えるでしょう」って作ったものが、想定通りにならなかったらリノベーションの仕事って失敗なんですね。ただビルを綺麗にしました、終わり! だったらリフォームなので。リフォームはハードの問題で、リノベーションはソフトの問題なので。


――リフォームはハード、リノベーションはソフトってすごく分かりやすいです。


嶋田:ビルをリノベーションしてたら、実際にたくさん使う人がいてお金が動き出さないと成功じゃないので、人も自分で集めないといけないなって、やりはじめた後に気付きました(笑)。それで、小倉は地元でもあったのでFacebookとかで募って、オープンまで結びつきました。家具とグラフィックのお店とか、手作り洋服のお店とか、カフェ、小倉経済新聞の編集部など10個のお店や会社が集まって。地元で「すげえ!」みたいになったんですよ。これまで空き店舗だらけの商店街に、小さいけど10店舗が一気に新オープンしたので、地元の皆さんには衝撃的だったんだと思います。


――商店街の中の一つのビルがにぎわっていれば、商店街全体が生き生きしてくるんですね。


嶋田:そうですね、今もうその商店街は空き店舗ほぼ無いんですよ。それで家賃も上がって、周りに新築バンバン建って、人気のエリアになっている。半年ごとに街が変わるので面白いですよ。


――そういった事例もあり、今は日本各地でリノーベーションスクールを開催されていますが、どのくらいの数行かれているのですか?


嶋田:そうですね。全国40くらいの場所でリノベーションスクールをやっているので、しょっちゅういろんな所に行ってますね。


――そんな嶋田さんが想う、これから面白くなってきそうな街ってどこですか?


嶋田:和歌山市ですね。和歌山市は人口36万人くらいの街で県庁所在地なんですけど、駅前が芸術的なシャッター通りで。でもそこに人が少しずつ戻ってきてるんですよ。リノベーションスクールでやった物件がどんどん建ってきて、若い人から役所の人までどんどん意識が変わってきているので、これから面白くなると思いますよ。和歌山は城下町としての骨格がしっかりと残っていて、城跡があったりだとか。あと、伏虎(ふっこ)小学校と中学校という伝統的な学校が、「和歌山市立伏虎小中学校」という一貫校になって、皆「子供をここに通わせたい」って思う人気の学校なんですね。でも周りに賃貸マンションが全然無いって困っていて、周りに使っていないオフィスビルがたくさんあるから、そこを全部住居にしちゃえばいいのになって思って、今後の戦略としています。


――その街に沿ったリノベーションをやっているということですね。


嶋田:そうです。リノベーションって言葉は一つですけど、街によってやり方は全然違うんですよね。これまでの「まちづくり」ってどこも同じ様なことばかりやっていて。街コンとかも、まちづくり文脈に飲み込まれちゃって、ガンガン補助金が出たりしている(笑)。補助金を食い物にしているコンサルタントと、役所も「なんか“いいやつ”あったら予算つけとこ」って出しちゃう。最近は、その“いいやつ”にリノベーションがなりつつあるんで、そういう依頼が来たら断っています。これまでとやり方と何も変わっていないんだったらお受けしませんってことですね。僕はやっていることを、革新的な手法だと思っていないんです。これまで間違っていた予算の使い方とかを、時代に沿った正しい物にしようっていうだけなので。


――今日お話を聞いていて、建築に詳しく無い私でもすごく面白くて、嶋田さんの考え方が素敵だなと感じているのですが、映画もこういったお話を知れるんでしょうか。


嶋田:まだ僕もどういった作品になるか、というのは完全に分かっていないんですけど、僕達がこれまでやってきた事を映像に収めているので、建築に詳しく無い方でも「まちづくり」に興味があったり、地方に住んでいたり地方出身の方は特に興味深く思ってくれるのでは無いかなと思います。


――そもそもな質問になってしまい恐縮なのですが、ご自身の活動が映画になるというのことは嬉しいですか? それともちょっと照れたりしますか?


嶋田:僕は映画が大好きなんでやっぱり楽しみですね。最近、子供達が子供番組を観ない年齢になったので、朝情報番組をつけていたんですけど、しょうもない内容ばっかりしかやっていなくて。それで思い切ってテレビを捨てたんですよ。その時間を壁をスクリーンにして映画のDVDを観たり、子供達は『ドラえもん』とか好きなアニメを観て。


ドキュメンタリーにしても、テレビだとどうしても決められた尺があって、長くて45分、短くて5分という時間の中で人や出来事を紹介していますよね。たくさんの情報を取り上げないといけないからそういう作り方になるのは仕方ないんですけど、映画は監督の作品で観る人がお金を払って観ているからすごいですよね。テレビってやっぱ無料だからいけないのかな……。映画は観る人が主体性を持って観ているから、そこにどう届けるのかっていうのは、きちんとした切り口やコンセプトが必要になりますよね、まちづくりをやっていると、どうしても変えられないところもあって、戦いがあって、怒っている時もあるので、そういう場面もね、映画になるといいなと思います。


先ほど、おっしゃっていた様に、これは建築専門の話が出てくる映画では無くて、新しいことをしたい・意識を変えたいと思っている、どの職業の方にも伝わることだと思っていますので、それが伝われば嬉しいなと思っています。


――今日は大変貴重なお話どうもありがとうございました!


▼残り2日!気になった方は今すぐチェック

ドキュメンタリー映画『建築を、あきらめる(仮)』


https://motion-gallery.net/projects/giveup_architecture


―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』
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