北野武監督18作目となる最新作『アウトレイジ 最終章』が、10月7日(土)より全国公開となります。本作で、監督を務めながら主人公・大友を演じた北野武さん。そして、今回シリーズ初登場ながら大友を慕い行動を共にする市川を大森南朋さんが演じます。
インタビューでは「ヤクザの不条理さはサラリーマンにも共通している」など数々の名言が飛び出しました。
――本作、最終章ということでシリーズのファンとしては寂しくもありますが、見事な終わり方で感動してしまいました。監督はどの様にこの物語を終わらせようと思いましたか?
北野武:(日本最大の暴力団組織となった)花菱会に元証券マンの“現代ヤクザ”が組長として入ってきて、周りの叩き上げのヤクザはイライラ。そこから対立が生まれていくという話。同時に、大友は(日本と韓国に強大な影響力を持つフィクサーである)張会長にお世話になった恩義があって「絶対恩返しをしなくてはいけない」という古いタイプのヤクザで。でも、張会長のためにやっていることが「かえって迷惑」って言われて、こりゃまた失礼しました、って(笑)。日本の花菱会と、韓国の張グループが海をまたいで対立してるとこに、花菱会の内部で権力闘争も起きて、そこへさらにコッテコテの古いヤクザである大友が戻って来ちゃってめちゃくちゃになる話だね。
――大森さんは初めての「アウトレイジ」シリーズに参加でいかがでしたか?
大森:もう、すごく憧れだったので本当に呼んでいただけたことが嬉しくて、最高の気持ちで現場入りしました。現場はすごく緊張感があったんですけど、市川は大友を慕っているので僕も武さんとずっと近くにいて。そんな役をいただけて光栄でした。
――監督から見た大森さんの魅力はどんなところでしょうか?
北野:大森君とはその前に2本やっていて、ちょい役なんだけど、うまいな器用だなって思ってた。そのあと他の作品で主役やってるのを見て、(大森さんは)なんでも出来るわって。西田敏行さんとか塩見三省さんとかが存在感を醸し出している中に大森さんが入ると、その中では若手という感じになるんだけど、でも全然負けてませんでしたね。このシリーズの現場って役者さんがテンション上がりがちで、津田(寛治)さんなんかテンション上がりすぎちゃって「もっと抑えて」って。そんな役者同士の勝負の場でも(大森さんは)すごく存在感があって。
――大森さんは柔らかな笑顔のシーンが多くて。でもマシンガンぶっぱなしてるシーンもあって、そのギャップも面白いですよね。
大森:市川はチンピラで、ヤクザでは無いというイメージが僕の中ではあったので。そんな市川にとって大友はヒーロー的な存在なので、済州島で色々な話を聞いて、学んで、慕って、日本にまでついていくという。それで、日本にきたらもう(死ぬ)覚悟は出来ているから大暴れしてって。そう演じていました。
北野:市川はヤクザではないんだけど、日本語も韓国語も出来て、大友と雑談している時が一番楽しいっていうキャラクターで。マシンガンのシーンは最初は大友1人で乗り込もうと思っていたんだけど、さすがにそれは勝てないだろうって。出来上がった映画を試写室で観たら、最後のシーンで市川が笑顔を見せるんだけど、笑っているけど悲しい、良いシーンだなって思いましたね。
大森:そのシーンは、僕もすごく悩みました。これは正しかったのだろうか? と完成した作品を観ても客観的になれなかったんですけど、そう言っていただけて安心しました。
――大友は最後まで仁義をとおして、監督がおっしゃる通り古いタイプのヤクザだと思うのですが、そういった男の生き様というのは、監督ご自身はどう思われますか?
北野:最近、落語の人情話を読んで色々調べていて。基本的に全部不条理なんだよね。非常に不条理で残酷なひでえ話なんだけど、それが人情話として語り継がれている。ヤクザもよく考えたら大友は自分の仲間は殺されるわ、シマ(縄張り)も奪われるわってすごく不条理で。だから、昔から不条理な人間関係の中で死んでいったり殺されたりっていうのは、エンターテインメントとしては面白いんだろうね。戦争映画なんかもそうだよね。田舎のまじめな奴が赤紙もらって、「私は貝になりたい」って、そりゃそうだろ!って。
――おっしゃるとおり、大友ってずっと不条理なことに巻き込まれていますよね。
北野:そう。そして、この映画から暴力と拳銃を全部とったら、一般社会の会長争いとか社長争いと同じことやってるんだよね。古いタイプのサラリーマンは結局、会社のために体張って、裏切られて、全部取られて死んでいく。そういうことって実際にあるからさ。
――大森さんは大友みたいな男ってどう思いますか?
大森:信念を曲げないで、自分の意地を貫いていて、憧れます。結果的にやりすぎてしまったという形になってしまうけど、男として魅力的です。
――では北野監督自身はどの様な存在でしょうか?
大森:漫才ブームの頃から、子供の時からずっとテレビで拝見していて。俳優をやる前から監督の映画は拝見していましたし、役者を始めてからは「いつか北野作品に出たい」と思っていました。他の俳優の皆さんもスタッフさんも同じ気持ちだと思います。皆さんの気合が迫力になって緊張感を呼んでいて、恐怖も感じました。
――恐怖、とはどの様に?
大森:鬼気迫る迫力、ということです。西田さんも、塩見さんも病み上がりですぐ撮影に参加されて、現場に帰ってきた凄みというか、俳優としての力強さというものをすごく感じました。
北野:西田さんと塩見さんの衣裳合わせのとき、西田さんはズボンのサイズも前作から半分以下に痩せてしまっていたんだけど「普通に食べてるから戻る」って言うんで、衣裳は直さなかったんだ。塩見さんは芝居が始まったらセリフは全くミスしないし、リハーサルも「カメラ回しておけばよかった」と思うほど素晴らしくて。役者さんの執念はすごいねえ。
――今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
【ノーカット動画】超豪華オールキャストが勢ぞろい 映画『アウトレイジ最終章』ジャパンプレミア
https://www.youtube.com/watch?v=1qBbpqolStk&t=366s [リンク]
(撮影:周二郎)
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