ある日、筆者のLINEアカウントにこんなメッセージが届いた。
7月22日13時、羽田空港に来てほしいという内容だ。
メッセージを送った人物の名は、デューク東郷。裏の世界では「ゴルゴ13」と呼ばれている超A級スナイパーである。
この男が筆者にコンタクトを取ったことから、今回の取材は始まった。
ゴ、ゴルゴからの連絡だと!?
筆者は死の恐怖を胸に抱きつつ、ゴルゴに言われた通り羽田空港へ向かった。
何しろ、相手は世界最高のスナイパー。下手に彼の後ろに立ったら、どうなるか分からない。筆者も今までにあらゆる修羅場をくぐり抜けてきたつもりだが、相手がゴルゴとなるとまた話は違ってくる。正面切って戦うには、あまりにも強大過ぎる相手だ。
羽田空港国際ターミナル4階の江戸小路。このフロアの中央にあるステージで、「Gマニュアル」の配布イベントが行われるという。
Gマニュアルとは、ゴルゴが外務省の要請を受けて作成した海外安全対策指南書。近年、日系企業の海外進出が活発になっているが、それと同時にテロ遭遇の可能性も取り沙汰されるようになった。去年7月、バングラディシュの首都ダッカで発生した襲撃事件は記憶に新しい。日本人7名が犠牲になった出来事でもある。
そうしたテロを回避するには、どうすればいいのか? 安全対策を講じることはもはや不可欠だが、進出実績のない中小企業にとっては一筋縄では行かない作業でもある。
外務省から依頼されたゴルゴは、海外進出を果たした日系企業のために「安全のための手引き」をまとめたというわけだ。
何という男だ、ゴルゴ13……!
さて、日系フラッグキャリアのCAとともにステージに上がったのは、外務省領事局長の相星孝一氏とマスコットキャラクターのパスポくん。このパスポくんは厚みのある長方形のボディーで、壇上に登るのにだいぶ苦労しているようだった。CAが支えなければ、転んでしまいそうだ。そうなったら、恐らく自力では起き上がれないだろう。
それはさておき、Gマニュアルは現在ネット上でPDF配信されている。だがその上で、改めて紙の本として編纂し各方面に無料配布すると外務省は発表している。テロはもはや「テレビの中だけの話」ではない。筆者自身、去年1月にインドネシア・ジャカルタで発生したテロに遭遇した。
もちろん、テロは遭遇しないに越したことはない。危険を回避するためにまずやるべきは、メール配信サービス『たびレジ』に登録することだ。このたびレジは、渡航地域の危険情報が即座に手に入るという優れたシステムである。筆者は先月、ジャカルタ滞在中に「イスラム急進派団体のデモがこの日時に行われる」という情報をたびレジから得たが、それは現地大手メディアの報道よりも1日早いタイミングだった。
たびレジは、渡航者にとって「なくてはならないもの」と言えるだろう。
奴の動向から目を離すな!
場所は羽田空港国際ターミナル3階に移る。Gマニュアルの配布は、この階のインフォメーション前で行われた。
Gマニュアルの入った段ボールを開封するCAの前には、すでに人だかりができている。「これから配布します」という掛け声と同時に、押し合いへし合いが始まった。まるで争うかのように、一般の人々がGマニュアルを求める。こんな奇妙な光景は見たことがない。
筆者もGマニュアルを1部入手した。ゴルゴ13の眼光が鋭く光っている。
筆者は商売柄、いつ何時ゴルゴと対峙するか分からないが、今回は彼に礼を言っておきたい。
Gマニュアルが一般旅行者の安全啓蒙に大きな貢献をしていることは、認めざるを得ないようだ。
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(執筆者: 澤田 真一) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか