福島県内で親しまれているコーヒー牛乳『酪王カフェオレ』。独特のコーヒーの旨みが特徴的で、首都圏でもJR総武線秋葉原駅のミルクスタンド『大沢牛乳』で長らく発売されていて、福島県人を超えた人気が広がっています。
そんな『酪王カフェオレ』を生産している酪王乳業も、2017年3月11日の東日本大震災で工場の一部が被害を受けたほか、さまざまな風評被害にも晒されたといいます。
酪王乳業営業部の南條光夫さんによると、地震によって工場の出荷台の一部が壊れ、約1週間の出荷停止の憂き目にあったとのこと。その後、酪農家から集乳を再開したものの、当時の政府の発表で福島県産の原乳から放射能が検出されたので出荷止めになり、集めた牛乳を全部破棄することになったといいます。
当時のことを、南條さんは「とにかく福島県の原乳が使えない。でも市場には牛乳がなくなって、お客さんから“飲みたい”という声が高まっていました。そのため、福島県産原乳の使用は諦めて、岩手から仕入れてきました。それは苦渋の決断でした」と振り返ります。酪王乳業は1976年に福島県産の牛乳を販売するために生まれた会社。それだけに思い入れも強く、「食べさせてる餌とか牛舎の環境が違うから、なんとなく風味が違うんですよね」(南條さん)と話しました。
また、風評被害にも苦しめられることに。「パッケージには、“福島県産原乳使用”と明記されているものを使っていたのですが、紙パックの工場も被災して動いていないから、シール貼りをして福島県産の部分を隠したんです。それでもシールをめくると(福島県産と)書いてあるから、ネットですごいバッシングを受けました」(南條さん)といい、牛乳の売上が半分以下に落ち込んでしまい、今でも完全には顧客が戻っていないといいます。とりわけ、学校給食用に卸している牛乳の場合、保護者からのクレームがなくならないという苦しい状況が続いていると語ります。
「当時はスーパーの上の方の段に追いやられてしまうなどの状況があったのですが、安全の検査体制を敷いていることをいろいろな方に理解してもらえるように工場を見学してもらって、福島県産はある意味一番安全な牛乳なんですよ、説明してきました」(南條さん)
一方で、『酪王カフェオレ』は「牛乳の成分が70~75%は入っているのですけれど、当時から不思議とクレームの電話がかかってくることはなかったですね。今では出荷を伸ばしていて、福島復興の象徴ともいえる商品になっています」(南條さん)と話します。
「震災後に、『酪王カフェオレ』のファンの方が秋葉原に集まるオフ会が広まっていって、一生懸命応援していただいてる方に我々も何かできないかと2013年に秋葉原でファンの集いを開催したんです。約200人も集まってもらってびっくりしました」(南條さん)
この首都圏やネットのファンの声は、出荷先の拡大にも役立ったといいます。
「『Twitter』での盛り上がりに気が付いたスーパーのバイヤーさんとか仕入れ担当の方から問い合わせ頂いて、仕入れが始まった所もあります。NewDaysさんに並ばせて頂いていますし、首都圏の大学生協さんとかにもだいぶ扱ってもらっています」(南條さん)
その後、震災前は恒例だった工場で開催する『酪王まつり』も2014年に再開。6000人以上が来場し「嬉しかったですね」(南條さん)と話してくれました。2016年も9月に開催が実現しています。
また、福島県内に2つある『復興牧場』にも協力。
「被災地の方で酪農営んでる方々の就農、酪農をもう1回再開してもらう意図で共同牧場ができているんですけれど、やっと生乳の出荷までこぎつけたんですよ。牛は買ってからすぐに(牛乳が)出るわけじゃないので、それが5・6トンぐらいにまでなっているんです。目標は500頭ぐらいの規模の牧場なんですが、大きな集乳車1台分ぐらいうちの工場に入ってきてます」(南條さん)
地道なその安全さの説明や、酪農の復活に力を注いでいる酪王乳業。都内でも少しづつ『酪王カフェオレ』が買える店舗が広まっているのはネットユーザーの力も作用したという話もあったので、ファンだという人は引き続き飲んで応援していきましょう。
酪王乳業株式会社
https://www.rakuou-milk.co.jp/ [リンク]