新時代のビジネスのキーワード、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)は、ますますその重要度を増しています。
また、DXを実現するためのツールの認知度も高まっており、中でも現在、注目を浴びているツールの1つが、マーケティング活動をデジタル化する「データマネージメントプラットフォーム(DMP)」です。
しかし、その具体的な役割や活用方法を理解している方はまだ少ないのではないでしょうか?
そこでこの記事では、前後編の2回に分けてDMPの基礎から活用法、未来の展望に至るまで幅広く解説します。
前編にあたる今回は、DMPの基本概念から活用法までを詳しく解説します。
本記事を通じて、是非DMPに関する理解を深め、貴社のDX推進に役立ててください。
DXとDMPの関連性
改めて確認すると、DXとは「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くする」ことを指します。その一環として、マーケティング活動もデジタル化が進んでいます。
顧客への情報提供や広告配信の効率化・最適化が求められる現代ビジネスにおいては、大量のデータを分析し活用することが不可欠であり、それを実現することも重要なDX施策の1つなのです。
こうしたマーケティング活動の際に、重要となるのが「データマネージメントプラットフォーム(DMP)」です。
DMPは、大量のデータを一元管理し、そのデータを分析・活用するためのツールであり、広告配信のアクションプランを最適化するために必要な情報を提供してくれます。
このツールは、企業がユーザーに対して最適なメッセージを発信し、その結果としてマーケティング効果の最大化を実現するためには、欠かすことができません。
DMPを活用することのメリットは、マーケティング効率の最大化だけに留まりません。
大量のデータの管理・分析・活用を実現するツールの存在は、企業がデータを基に意思決定を行うことをサポートし、ビジネス全体の効率化やサービスの改善に繋がることも期待できます。
DMPを利活用することで、マーケティング活動の最適化、ひいてはビジネス全体の効率化や品質の向上が図れれば、新たな価値を創出することにも繋がるでしょう。
つまり、DMPは、データを基にしたDXの実現を強力に後押ししてくれるのです。
DMPの基礎
これまで述べてきたように、デジタルマーケティングにおいて今や欠かせないDMPですが、その基礎について改めて確認しておきましょう。
DMPの基本概念と機能
繰り返しになりますが、DMPとは、インターネット上に蓄積された大量のデータを一元管理し、そのデータを基にした分析・活用を可能にするプラットフォームのことを指します。
DMPは主に以下の3つの機能を有しています。
- データの収集:様々なデータソースからデータを収集する。この場合のデータソースとは、WEBサイトやアプリ、CRMシステムなどのことを指す
- データの統合:収集したデータを一元管理する。これにより、データの一貫性を保ちながらデータを活用することが可能となる
- データの分析・活用:収集・統合したデータを基にした分析・活用を可能にする。これにより、データを基にした意思決定やマーケティング活動が可能となる
DMP導入による企業のメリット
DMP導入によるメリットは多岐にわたります。まず最も直接的な利点は、人の手では扱いきれない膨大な量のデータを一元管理し、分析することが可能になる点です。
各部門や販売チャネルで散在していたデータを一元化するだけでも、ビジネスの全体像を把握しやすくなり、より質の高い意思決定を行うことができるようになるでしょう。
一元管理が可能になるということは、次のような問題を解消することにも繋がります。
- データの散在:データを一元管理できるため、部署ごとに散在し、部署内でしか利用できなかったデータを組織全体で利活用できるようになる
- データの未活用:データを一元管理し、さらに簡単に分析できるようになることで、せっかく収集したのに活用されていないデータがある状態を解消できる
- マーケティング効果の曖昧さ:データを基にした分析・活用を行うことで、これまで数値化できなかったマーケティング効果の透明性を確保できる
膨大なデータを蓄積し、分析することができるDMPは、データの見える化にも貢献します。
当然ながら、数字など客観的に評価できる形で見える化されたデータがあることは、ビジネス戦略の立案や意思決定において、大きなメリットをもたらします。
例えば、前述の「マーケティング効果の曖昧さ」とも関係しますが、DMPを用いて、広告配信の効果測定やユーザーの行動分析などを行い、結果を見える化することで、広告戦略や商品開発など、ビジネスにおける重要な意思決定をデータに基づいて行うことが可能になるのです。
実際に、DMPを活用したデータ分析により、顧客の購買傾向や行動パターンを把握し、その情報を基にマーケティング戦略を策定している企業が大きな成果を上げている例は少なくありません。
さらに、DMPを用いて消費者1人ひとりの行動データを分析していけば、ユーザーのニーズに合わせてよりパーソナライズされたマーケティングを行うことも可能になります。
それぞれのニーズや好みに基づいた商品やサービスを提供することが可能になれば、顧客満足度を向上させ、ロイヤルティを高めることができるでしょう。
DMPがもたらすこれらのメリットは、企業の競争力を大幅に強化し、結果的に企業価値を向上させる要素となるでしょう。
※DMP導入は、マーケティング活動を効率化するだけでなく、企業がデータ駆動型のビジネス(データドリブン経営)を実現するための重要な一歩となり得ます。データドリブン経営に関しての詳細は、次の記事も参考にしてください。
2つのDMPと活用法
DMPが扱うデータは、主に企業が独自に収集し、保有しているユーザーの購買行動などのマーケティングデータです。
一口にDMPと言っても、このマーケティングデータの種類によって、2つに分かれており、それぞれ活用法が異なっています。
それぞれの特徴と強みを把握したうえで、自社の目的に合ったDMPを選択することが大切です。
オープンDMP
オープンDMPとは、インターネット上の広告プラットフォームから取得した第三者データを管理するDMPのことで、主にクラウド上で提供されるデータプラットフォームを指しています。
オープンDMPは、広範な消費者の行動データを収集・分析することができるため、新たなターゲット層の発見や、広範なマーケティング活動を行いたい場合に適しています。
例えば、新商品の販売を開始する際になどに活用するのが良いでしょう。
一方で、リピーターなど自社のファン層にフォーカスしてマーケティングをする場合など、予め対象が絞り込まれている場合には適さないケースもあります。
プライベートDMP
プライベートDMPは、オープンDMPの第三者データに加えて、主に自社のWEBサイトやアプリ、CRMシステムなどから取得した独自のデータを利用するDMPです。
プライべートDMPは、自社が保有する詳細な消費者データを活用することができるため、顧客理解を深め、パーソナライズされたマーケティング活動に活用することができます。
例えば、既存の顧客データを基に、顧客の購入傾向や興味・関心を細かく分析した上で、そのデータに基づいて、顧客ごとに自社の商品やサービスをピンポイントで訴求するなど、パーソナライズされたマーケティング活動を行いたい場合に適しています。
一方で、今まで自社と繋がりがなかった新しい顧客層を開拓したい場合などには、適さない場合もあります。
DMP導入の注意点
DMPの導入は多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつか注意しなければならない点もあります。
これらのポイントへの対策を怠ると、DMP導入が予期せぬ悪影響を及ぼす可能性があります。
こうした事態を回避するためには、社内での研修や社員教育の充実化、外部の専門家やコンサルタントの活用・連携、適切なデータ管理の体制作りなどが求められるでしょう。
ここでは、特に大切な3つの注意点を解説します。
データのプライバシー保護
近年、ユーザーのプライバシー保護への関心は高まっており、顧客情報や販売履歴など含むデータの管理には、安全性の確保と慎重な配慮が求められています。
DMPは、大量の個人情報やプライバシーに関わるデータを扱うツールですので、当然ながら、こうしたプライバシー保護への対策が不可欠です。
プライバシー法規制を遵守することは大前提ですが、それだけでなく、万が一の事態も想定した顧客データの管理・保護体制を構築するなど、適切なデータ保護措置を講じていないと企業のブランドイメージや信頼性を損なう可能性すら否めません。
DMP導入の際に最も注意が必要なのは、データの活用方法などの検討ではなく、なによりも「顧客データのプライバシー保護」だと言っても過言ではありません。
データの品質管理
膨大なデータを分析するDMPにおいて、活用するデータの品質は、分析結果の信頼性を左右する極めて重要なものです。
もし、不正確なデータや欠落したデータが混入している場合、それに基づいた分析結果もやはり正確なものにはなり得ません。
その分析結果をもとに意思決定をした場合、判断も誤ったものとなり、ビジネスに悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、データの収集・整理・保存の各段階においてその品質を確認し、管理することが重要です。
具体的には、定期的なデータのクリーニング(誤ったデータの削除や修正)や、データの収集源の確認と管理などの作業が必要となります。
技術的なハードル
DMPの導入と活用には、一定の技術的な理解とスキルが必要です。
データの収集・管理、分析という一連の作業を適切に実施し、活用できる状態にするためには複雑な仕組みに対する理解が不可欠です。
また、セキュリティ対策なども一定程度の専門知識がなければ心もとないでしょう。
そもそも、DMP自体が高度な技術を用いたシステムであるため、使いこなすためには本記事で紹介したような基礎的な理解だけに留まらず、更に高度な知識や経験が求められます。
そのため、DMPの導入・運用には専門的な知識を持ったスタッフやチームが必要となる場合もあるでしょう。
残念ながら、国内においてDMPに精通した人材は限定的であり、社内に適任者がいるとは限りません。
そのためDMPを活用していくためには、人材の確保が課題の1つになります。
まとめ~DMPは特性を理解し適切に活用しよう
今回は、DXの成功を目指す企業にとって、特にデジタルマーケティングの分野で欠かすことのできないDMPを取り上げ、その基礎知識と活用方法について解説しました。
DMPの導入に際しては、その特性を理解し、適切な形で活用していくことが重要です。
しかし、適切な活用の仕方はビジネスモデルや企業の規模、求める結果などによって大きく異なります。当然ながら、DMPにより得られる成果も大きく変わってくるでしょう。
貴社の目的に沿った適切なDMPの活用法を見出すためには、まずは様々なDMPの活用事例を知り、貴社の課題と照らし合わせながら、最適解を探っていくのが良いでしょう。
次回後編では、具体的な活用事例とその成功要因、そしてDMPが未来に向けてどのように進化していくかについて詳しく解説します。
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