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複数拠点を持つ介護施設で、本社は「今の稼働状況」を答えられるか|情報分断を防ぐDX


「A拠点の今日の稼働状況は?」


複数拠点を持つ介護施設で、このように聞かれた場合、本部の担当者はすぐに答えられるでしょうか。


デイサービスやグループホーム、小規模多機能型居宅介護などを複数の拠点で運営していると、日々の記録や利用者対応は各拠点の管理者に任せきりになりがちです。拠点が増えるほど、本部が把握できているのは「先月の請求データ」までで、「今この瞬間」の稼働状況や人員配置の実態は、電話をかけて聞かなければわからない、という法人は少なくありません。


人材不足が続く介護業界では、限られた人員を拠点間でどう配置するかという経営判断のスピードが、そのまま現場の負担に直結します。本記事では、複数拠点を運営する介護法人になぜ情報の分断が起きるのかを構造的に整理したうえで、実際に記録を一元化した法人の事例と、システムを選ぶ際に見るべき観点を紹介します。



【本記事の要点】



  • 拠点が増えるほど、本部は現場の記録や稼働状況を横断的に把握しにくくなる

  • 情報分断の原因は紙かデジタルかではなく、拠点ごとに記録が閉じている構造にある

  • 富山県で複数の介護事業所を運営するある法人は、記録を一元化し、本社が全拠点の状況を確認できる体制を作った

  • 介護DXの目的は記録作業の効率化そのものではなく、人員配置や稼働率改善という経営判断に使える状態を作ることにある



複数拠点を運営していても、本部は「今の稼働状況」を答えられるか



各介護拠点で人員、ベッド、日々の記録が完結し、本部から現在の状況が見えない構造


複数の拠点を運営する介護法人の本部担当者に話を聞くと、共通する悩みが見えてきます。各拠点の月次の実績や請求データは集計できていても、「今日、B拠点は何人の職員でシフトを回しているか」「C拠点のベッドや定員に空きがあるか」といった、その日その時点の状況をすぐに答えられないというものです。


理由は単純で、拠点ごとの記録や連絡が、それぞれの拠点のなかで完結してしまっているからです。紙の記録簿であれ、拠点ごとに導入したExcelの管理表であれ、情報が特定の場所だけの記録に留まっている限り、本部がリアルタイムで横断的に状況を把握することはできません。月末にまとめて報告を受け取る運用では、日々の人員配置や利用者対応の判断は、結局それぞれの拠点の管理者の裁量に委ねられたままになってしまいます。


拠点数が2つや3つのうちは、電話やメールでのやり取りでも何とかなるでしょう。しかし拠点が増えるにつれて、本部が現場の実態を把握するコストは目に見えて重くなっていきます。


情報分断が起きるのは、紙のせいでもデジタルのせいでもない



紙かデジタルかに関係なく、情報が拠点内に閉じていれば本部と分断される状態


ここで注意したいのは、この問題を単に「紙の記録をなくせば解決する」という話にしてしまわないことです。紙の台帳をExcelに置き換えただけでは、情報が拠点ごとに閉じているという構造そのものは変わりません。むしろ、拠点ごとにバラバラな書式のExcelファイルが増えることで、本部が横断的に集計する手間がかえって増えるケースすらあるでしょう。


問題の本質は、記録の手段が紙かデジタルかではなく、拠点ごとに記録が閉じておらず、本部がそれを横断的に把握できる仕組みが存在するかどうかにあります。各拠点の管理者が自分の拠点の状況を把握できていても、その情報が本部やほかの拠点と共有される仕組みがなければ、法人全体としては情報が分断されたままです。


この分断が続くと、影響を受けるのは本部の業務効率だけではありません。急な欠勤が出た拠点を、余力のある拠点からの応援でカバーする、といった拠点間の柔軟な人員配置も、本部が各拠点の状況をリアルタイムに把握できていなければ判断のしようがありません。情報が分断されたままでは、複数拠点を運営しているメリットの1つである「拠点間で助け合える体制」そのものが機能しなくなります。


本社が全拠点を確認できる状態を目指す事例紹介



2025年の本格導入で転記を減らし、本部が全介護拠点を横断確認できるようになった流れ


拠点ごとに閉じてしまった記録や稼働状況を本部が一元的に把握するための手段の1つが、複数拠点の運営を前提に設計された介護ソフトの導入です。もちろんシステムを入れれば自動的に分断が解消するわけではありませんが、実際にこうしたソフトを導入して情報の見える化に成果を上げた法人もあります。ここでは、その一例を紹介します。


記録の一元化に取り組んだ法人の1つが、富山県でグループホームや小規模多機能型居宅介護などを運営するケアスタジオ株式会社・株式会社ウェルフェアサービスです。2社は一体で介護事業を営んでおり、以下ではまとめて「ケアスタジオ」と表記します。


ケアスタジオは導入前、紙に記録した内容をExcelへ転記する手間が業務を圧迫していました。加えて、注意して確認すべき記録情報が現場間でうまく共有されないことがあり、何より本社から各事業所の状況を把握すること自体が困難だったといいます。複数の拠点を運営しているにもかかわらず、本社が現場の実態を横断的に見られない状態は、まさに本記事で取り上げている情報分断そのものです。


こうした課題に対してケアスタジオが選んだのが、介護記録・請求ソフト「ファーストケア」の本格導入でした。2025年から現場にiPadを配備し、それまで紙に手書きしていた記録を、テンプレート化された画面へ直接入力する運用へ切り替えたのです。


導入後は紙からの転記作業が不要になり、職員の記録時間が大幅に短縮されました。注意が必要な記録はレポート機能で簡単に共有できるようになり、何より本社がすべての事業所の記録や実績を横断的に確認できる状態へ変わったと報告されています。


この事例が示しているのは、記録時間の短縮という現場側のメリットだけではありません。本社が拠点ごとの状況を横断的に把握できるようになったことで、これまで各事業所の管理者の裁量に委ねられていた判断に、本部が経営の視点から関与できる土台が整ったという点です。



出典・参照:




複数拠点対応の介護ソフトを選ぶときに見るべき観点



介護記録・請求業務を一元化するソフトと、勤怠・シフト管理を一元化するソフトの目的差を比較する図解


複数拠点の情報分断を防ぐためのソフトを検討する際、機能一覧の多さだけで選んでしまうと、現場に定着しないまま終わることがあります。ここでは公開情報に基づき、記録の一元化を目的とするファーストケアとは切り口の異なる、勤怠・シフト管理に特化したサービスも1つ紹介します。


CWS for Careは、インフォコム株式会社がソラスト社と共同開発したクラウド型の勤怠管理サービスです。複数拠点での勤務や、複数の事業所・職種にまたがる兼務を反映したシフト作成に対応しており、人員配置基準や加算要件を考慮した勤務表を、拠点をまたいで一元的に作成できる設計になっています。


下の表は、この2つのサービスが「複数拠点の何を一元化するのか」を対比したものです。機能の優劣ではなく、狙いの違いとして見てください。


比較の軸ファーストケアCWS for Care
一元化の対象介護記録・請求業務勤怠・シフト管理
複数拠点での主な効き方全事業所の記録や実績を、本社がリアルタイムに横断確認できる複数拠点勤務や事業所・職種をまたぐ兼務を反映したシフトを、拠点をまたいで一元的に作成できる
向いている困りごと「各拠点の記録や稼働状況が本部から見えない」「拠点をまたいだ応援・兼務のシフトが組みにくい」

製品名で情報を集める前に、自法人が「記録が見えない」ことに困っているのか、「シフトが組みにくい」ことに困っているのかを先に切り分けることが、導入後の定着につながります。両方に心当たりがあるなら、どちらを先に解消するかを決めてから比較検討するほうが、検討の軸がぶれません。



出典・参照:




自法人の運用を点検する基準



本部の即答、書式統一、拠点間応援、個人非依存の四基準で介護施設運用を点検する図解


ここまでの内容を踏まえ、自法人の拠点間の情報共有が形骸化していないかを点検する基準を整理します。




  • 本部の担当者が、各拠点の「今日の稼働状況」を、電話で確認しなくても即答できる

  • 拠点ごとの記録の書式やルールが統一されており、本部が横断的に集計できる

  • 急な欠勤・繁忙が出た拠点を、ほかの拠点からの応援で調整する判断を、本部が現状把握したうえで下せている

  • 拠点の管理者が変わっても、記録や申し送りの内容が個人の裁量に依存せず引き継がれる



なお、デイサービス(通所介護)の稼働率は「1ヶ月の延べ利用者数 ÷(営業日数 × 1日の利用定員)」という計算式で算出されます。この計算式自体は業界で広く使われている一般的なものですが、この数値を拠点ごとに算出し、本部がリアルタイムに横断比較できる状態になっているかどうかは、法人によって大きく差があります。上記のチェック項目に当てはまる点があれば、まずは1拠点分の記録・シフトの書式を見直すところから着手することをおすすめします。



出典・参照:




よくある質問(FAQ)



早期標準化、課題整理、記録項目と報告方法の統一という段階的な改善策


Q. 拠点数が2〜3ヶ所程度でも、記録の一元化は必要でしょうか。


A. 拠点数が少ないうちは電話や口頭確認でも回るでしょうが、拠点が1つ増えるたびに本部の確認コストは積み上がります。今後さらに拠点を増やす計画があるなら、拠点数が少ない段階で記録の書式やルールを統一しておくほうが、あとからの移行負担は小さくなります。


Q. 導入コストや操作の教育負担が心配です。


A. 公開されている料金・プランは提供会社やサービスによって幅があり、本記事では特定の金額を断定しません。まずは自法人がどの業務(記録・請求・シフトなど)で情報分断に困っているかを整理したうえで、複数のサービスへ資料請求・問い合わせをおこない、現場のスタッフが実際の操作感を確認することをおすすめします。


Q. すでに拠点ごとに別々の介護ソフトを導入している場合、どうすればよいでしょうか。


A. 全拠点のソフトを一斉に統一する必要はありません。まずは記録の項目や書式だけでも拠点間で揃え、本部への報告のタイミングと方法を統一するところから始めても、横断的な把握はしやすくなります。システムの統一は、その次の段階として検討する選択肢です。


まとめ:介護DXの目的は記録の効率化ではなく本部の一元把握である


本記事では、複数拠点を運営する介護法人に起きやすい情報分断の構造と、その解消に取り組んだ事例を見てきました。




  • 拠点が増えるほど、本部は現場の記録や稼働状況を横断的に把握しにくくなる

  • 情報分断の原因は紙かデジタルかではなく、拠点ごとに記録が閉じている構造にある

  • 富山県で複数の介護事業所を運営するある法人は、記録を一元化し、本社が全拠点の状況を確認できる体制を作った

  • 介護DXの目的は記録作業の効率化そのものではなく、人員配置や稼働率改善という経営判断に使える状態を作ることにある



貴社がまず着手できることは、1拠点分の記録・シフトの共有方法を見直してみることです。本部が「今日の稼働状況」をすぐに答えられない拠点がどこかを洗い出すところから、情報分断を防ぐ取り組みは始められます。

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