

2026年10月29日、日本生命浜松町クレアタワーにて、筑波大学・つくばウエルネスリサーチによる「子育て女性のウェルビーイング白書 2026」の記者発表が行われました。
第一部では、日本生命の社員を対象に実証実験中の健康増進プログラム「Wellpathy(ウェルパシー)コンディショニング」を報道公開。第二部では、全国47都道府県の未就学児を育てる男女6,334人を対象にした白書の調査結果が発表されました。
第一部「Wellpathyコンディショニング」今、女性のウェルビーイングが大きく揺らいでいる

冒頭の取り組み紹介では、日本の女性が抱える健康課題がデータとともに示されました。
日本は、女性の「やせ」の割合がOECD加盟国でワースト1位。要因のひとつは運動不足です。20〜50代女性のスポーツ実施率は最も低く、20〜40代女性の体力は25年で最低水準になっています。
さらに、やせ型の女性は耐糖能異常(糖尿病予備軍)の割合が標準体重の女性の約7倍。20・30代女性の5割弱に若年性更年期障害の可能性があるというデータも紹介されました。
体力不足は、仕事のパフォーマンスや心身のコンディションの低下とも関係しています。
忙しい女性ほど、自分のケアを後回しにしてしまう

働きながら子育てをしていれば、疲れているのは当たり前──。多くの女性が、本来の心身の快適な状態を知らないまま、不調や疲れを“当たり前”と思い込んでしまっています。
そこで発想を転換したのが、Wellpathyコンディショニング。これまで健康づくりは、福利厚生として任意で参加するもの、余暇時間に本人の意欲で行うものでした。それを「就業時間内に、業務として、組織の健康投資として」行う取り組みです。
コンセプトは「仕事時間の20分を、今の自分と未来の自分のために使う」。
オリパラ選手村で提供された技術を、働く女性に

プログラムのもとになっているのは、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で日本が初めて提供し、各国から好評を得たトータルコンディショニング技術。これを一般の人にも届けるため、R-BODY、筑波大学、つくばウエルネスリサーチが共同で開発しました。
体の課題を把握し、正しい動作を身につけ、適切な負荷で整えていく“頑張らない運動”なのが特徴です。肩こりや腰痛については、多くの人が4回のコンディショニングで改善を実感しているそうです。
デスクワークの首肩こりをリセット!「首肩スッキリ習慣」を体験
プログラムは1回約20分で、「セルフチェック」「ミニ講座」「コンディショニング」「有酸素運動」で構成されています。この日のテーマは「首・肩スッキリ習慣」でした。
頭の重さは体重の約10%。体重50kgの人なら、約5kgにもなります。
本来は背骨が頭を支えていますが、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用で背中が丸まると、背骨だけでは支えきれなくなります。
代わりに首や肩の筋肉が頭を支えることになり、血流が悪くなって“こり”が生まれるのだとか。

まずは、椅子に浅く座って両腕をまっすぐ上げる「バンザイ」でセルフチェック。
肘が曲がる、腕が横に開く、腰が反る。このうちひとつでも当てはまれば、普段の姿勢が首や肩のこりの原因になっているかもしれません。

続いて、次のようなコンディショニングを行いました。
・背骨をまっすぐに保ち、呼吸を止めずに首の後ろ側と横側を伸ばすストレッチ
・両手を肩に置き、肩甲骨を大きく動かしながら肘で円を描く運動
・肩甲骨を寄せて背中をまっすぐ保ったまま、股関節から上体を前に倒す運動

仕事の前後に、習慣的に行うのがおすすめとのこと。
最後はリズム運動の「リズムチャレンジ」で締めくくられ、会場には体験者の笑顔があふれていました。
「会社でやるから、続けられる」参加者の声

体験者からは、こんな声が聞かれました。
・会社として「やりましょう」という機会があると取り組みやすい
・ほとんど座ったままなので心地よかった
・一人だとなかなか続かないけれど、曜日が決まっていてやれるのは継続しやすい仕組みだと感じた
日本生命では、週1回・木曜日に20分間、就業時間中にプログラムを実施しているそう。業務も働き方もさまざまな社員が週に何度も集まるのは難しいため、追加の1回はオンラインツールを使って自宅などで好きな時間に参加できるようにし、週2回のコンディショニングを確保しているのだとか。
日本生命の担当者は、取り組みの背景について次のように話しました。
「子育て中の方は、なかなか自分の健康に目を向けられません。でも、ママが健康であることは子どもにとっても大事です。若い世代がこれから子どもを産み育てていくためにも、丈夫な体が必要。その理念に賛同し、まずは社内の一部の部署から始めました」
取り組みはスタートしてまだ1か月ほど。2月まで継続し、どのような効果が生まれるのか注目していきたいとのことです。
第二部「子育て女性のウェルビーイング白書 2026」記者発表

第二部では今回のプロジェクトを担当する、筑波大学の久野譜也氏が登壇。子育て女性や働く女性、女性の健康課題、少子化などの課題について語りました。
プロジェクトでは、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)が、日本の女性の健康を悪化させている側面があるとして、その解決策に取り組んでいます。

たとえば、第一部で女性の「やせ」の割合がOECD加盟国でワースト1位という発表がありましたが、要因は運動不足だけではありません。
日本人女性の中には「痩せていることが美しい」というアンコンシャスバイアスがあり、痩せすぎによる体力の低下や筋肉量の減少、骨粗しょう症といった健康被害につながるリスクが懸念されています。
子育て期の働き方 意識は「令和」、実態は「昭和」のまま?

出典:プレスリリース
白書では、子育て期の働き方について、“意識”と“実態”の間に大きなギャップがあることも明らかになりました。
意識の上では、「子育ては母親が担うもの(35.5%)」「子どもの体調不良時は母親が仕事を休む方が自然(35.3%)」と考える人は少数派。
ところが実態を見ると、「子育ては母親中心(66.2%)」「子どもの体調不良時は母親が仕事を休んでいる(63.6%)」と、いずれも6割を超えています。
意識と実態の間には、それぞれ30.7ポイント、28.3ポイントの差があり、女性に育児の負担が偏っている現実が浮き彫りになりました。
久野氏は当初、女性がもっと自立性を高めてくれれば健康作りに前向きになってくれるのではないかと考えていたそう。ところが研究を進めるうちに、女性には「時間のなさ」が大きなネックとなっていることが判明しました。
(久野氏)「運動不足を自覚していても、女性は子育てや家事に追われて健康作りに費やす時間がありません。パートナーや地域、企業などが、周囲の環境を変えていかなければならない」
第一部で紹介された、就業時間中に健康づくりを行うWellpathyコンディショニングは、まさにこの「時間のなさ」を解決するための取り組みといえます。
子育ては母親が中心で行うべきという考え方が「アンコンシャスバイアス」であり、無意識の思い込みにすぎないと久野氏は語ります。
(久野氏)「たとえば子どもを父親が母親と同等、それ以上にケアしていても、発達や愛着形成には全く差がないということが科学的に確認されています」
「痩せていることが美しい」
「子育ては母親が中心で行うべき」
「働きながら子育てをしていれば、疲れているのは当たり前」
このような価値観は、古い時代から続くアンコンシャスバイアスにすぎません。
女性の健康づくりを本人の努力だけに任せるのではなく、企業や地域が女性を取り巻く環境を整えること。それが価値観の変化に繋がり、女性の健康問題や少子化問題の改善に繋がることに期待したいですね。
