トルクメニスタンは中央アジアの西に位置する国で、ウズベキスタンやカザフスタン、アフガニスタン、イランと国境を接しています。
巨大なクレーターの中で火が燃え続ける「地獄の門」が有名で、つい先日、地獄の門の火を消す方向性でトルクメニスタン政府が動いているという報道がありました。もしかすると今回の旅が見納めになるかも……!
そんなトルクメニスタンを訪れたので、見どころや街並みを紹介します。
個人旅行では入国できないトルクメニスタン
トルクメニスタンがあまり知られていないのは、個人旅行ができない国だからという理由が挙げられるでしょう。
トルクメニスタンを旅行したければ、現地からの招待状が必要で、ガイドをつけたツアーでなければ入国できません。
※2020年以前はトランジットビザを使い招待状およびガイドなしで入国できましたが、2024年時点ではトランジットビザが廃止されています。
▲Photo by Rie Kanno
私は今回、SNSでトルクメニスタン旅行の同行者を募集していた方に同行を申請。現地旅行会社「ダルヴァザトラベル」の2泊3日のツアーに、日本人4人のグループで参加しました。
ガイドをしてくれたのは、同社代表のラビシャンさんです。
ツアー旅程
ツアー日程は以下のとおりです。
■1日目
ウズベキスタン・ヒヴァの国境から陸路で入国→クフナ・ウルゲンチ(ユネスコ世界遺産)観光→ダルヴァザの地獄の門(地獄の門の近くの遊牧民のテントに宿泊)
■2日目
地獄の門の近くのクレーターをいくつか見学→オールド・ニサ(ユネスコ世界遺産)を観光→アシガバート市内を観光→アシガバートのホテルに宿泊
■3日目
マリーへ移動、マリーのバザールを見学→メルブの遺跡(ユネスコ世界遺産)を見学→トルクメナバードで夕食→ブハラ近くの国境から出国、ウズベキスタンへ
クフナ・ウルゲンチ
12世紀から13世紀にかけて栄えたシルクロード最大の都市が「クフナ・ウルゲンチ」です。
▲Photo by Rie Kanno
この写真は「スルタン・テケシュ廟」。一部修復されてはいますが、建てられた頃のレンガが残り、モザイクは当時のものがそのまま。
イランやウズベキスタンにおける、美しいモスクのモザイクの原型になっていると言われています。
▲Photo by Rie Kanno
中央アジアで最も高い、「クトゥルグ・ティムール・ミナレット」。僅かに傾いているのは地盤のせいだとのこと。
シルクロードを旅するキャラバンの目印だったそうです。
地獄の門
▲Photo by Rie Kanno
こちらはクレーターの中で炎が燃えさかる「地獄の門」。地下から噴き出した天然ガスにつけた火が、50年間そのまま燃え続けています。
最近、地獄の門の火が消えかけている・減っているという噂がありますが、実際は火の位置が少しずつ上に移動しているからそう見えるだけだそう。確かにクレーターの縁に火が集まっています。
砂漠の夜は寒いのですが、風向きによっては火のおかげで暖かく、天然の焚き火のようでした!
実は地獄の門はトルクメニスタン人にはほとんど知られておらず、ここへ来るのは日本人観光客がほとんどなのだとか!
私たちが訪れた際も、日本からの30人ほどのツアー客がいました。
▲Photo by Rie Kanno
地獄の門の近くには、一回り小さい「地獄の門の子ども」と、水が溜まった中からガスが沸き上がる「水のクレーター」もあります。
オールド・ニサ
▲Photo by Rie Kanno
「オールド・ニサ」は紀元前3世紀のパルティア王国の首都でした。1948年の地震でほとんどが倒壊してしまったそうですが、一部は残っていて土壁の宮殿の中を歩き回れます。
王様や貴族のための廊下はそのまま通路として残っており、下働きの人用の狭い通路も一部見ることができます。
タイムスリップした気分を味わえるスポットです。
アシガバート
▲Photo by Rie Kanno
トルクメニスタンの首都アシガバートは、国のルールで「建物の外壁は白、車も白」と決められているため、何もかもが白い街。新しい建物の外壁は白い大理石です!
おまけにごみのポイ捨ては罰金、車が汚れたまま走るのも罰金なので、街がとにかくきれい。
トルクメニスタンは世界で唯一、国連総会で認められた永世中立国。私も今回の旅で初めて知ったのですが、スイスやオーストリアは国連総会では永世中立国として承認されていないのです。
▲Photo by Rie Kanno
どの国とも戦争しない、戦争に関わらない、仲良くするというトルクメニスタンには「中立の塔」があります。
夜訪れた塔の近くには、家族連れや友達同士で集まる人々の姿がありました。
マリーのバザール
▲Photo by Rie Kanno
「マリー」は世界遺産の遺跡、メルブの近くにある町。バザールではアクセサリーを売る店を多く見かけました。
▲Photo by Rie Kanno
皆さん陽気で人懐こく、写真を撮っていいかと聞くと最初は照れるものの、笑顔でポーズを作ってくれます。
メルブの遺跡
▲Photo by Rie Kanno
紀元前6世紀から15世紀頃まで栄えた「メルブ」。広い遺跡内には、各時代ごとの遺跡が残されています。
写真は女性の装飾品が多数見つかったという宮殿跡。現在も内部で発掘作業が行われています。
▲Photo by Rie Kanno
生レンガで作られた遺跡の多くが月日の経過とともに崩れ、山のようになっているのですが、その下には遺跡が眠っているのだそう。土の山に見えても、よく見るとレンガが重ねられた直線が確認できる箇所があります。
町は城壁で囲まれていたので、一つの場所に紀元前5世紀の壁から10世紀の壁まで、千年以上の時を隔てた「壁」が残っているのは壮観でした。
独裁国家のイメージが覆る、国民のための国
▲Photo by Rie Kanno
独裁国家と言われるトルクメニスタンですが、永世中立国で公共料金はほぼ無料、家を買う時も政府が半額補助してくれます。税金はたった2%で物価も安く、ガツガツ働かなくても生活できるそうです。
国民みんなが安心して豊かに暮らせる環境が作られていて、「独裁」のイメージとは遠く離れていました。
実際に町の様子や人々の様子を見ても、政治に不満を持っていそうな雰囲気はありません。人々は人懐っこくてフレンドリー。とても居心地のいい国でした。
ウズベキスタンへの旅行を考えているなら、ぜひ少し足をのばしてトルクメニスタンにも!
大好きな国の一つになるはずです。
※編集部注:ライターによる個人的な感想です。記事執筆現在、外務省より危険情報が発表されているため、渡航を検討する際は国の方針に従ってください。
外務省海外安全ホームページ