最近はフランス婚ともいわれるようになっている「事実婚」。日本では「あえて結婚しない」を選択をするカップルは少ないですよね。
フランスでは2015年に生まれた子供の両親が、婚姻関係のない状態=事実婚が、全体の58%を占めていることがわかりました。
どうしてフランスはそんなに事実婚が多いのか、その実情について解説します。
事実婚とは?
日本では「事実婚=婚姻状態のないカップル」というイメージですが、フランスではもう少し細かく分かれています。
・結婚・・・法的に婚姻関係にあるカップル
・パックス(PACS)・・・法的な婚姻関係はないけれど、税制など優遇してもらえる
・ユニオンリーブル(Union Libre)・・・一緒に暮らしているカップル(同棲と同じ位置づけ)
前述の事実婚が占めている「58%」というのは、パックスとユニオンリーブルが混ざっている状態です。事実婚というと「自由なカップルのスタイル」のような気がしますが、実際はもっと現実的な問題があるのです。
結婚する手続きがめんどう
フランスの結婚制度は、日本の入籍みたいに紙一枚で役所にいけば済むものではありません。結婚するには、書類の準備がまず必要です。
・出生証明書(Acte de Naissance)
・独身証明書(Certificat de Capacité Matrimoniale)
・慣習証明書(Certificat de Coutume)
などを市役所に提出し、役所での書類チェックのあと、「この二人で結婚しますが反対する人はいませんか?」という紙が役所の前に張り出されます。形式的なもので実際反対することはありませんが、これを張り出してから10日間は何もできません。10日が過ぎたら、やっと結婚の手続き。
結婚の手続きも、紙一枚ではなくて、市役所で市長による結婚式を行います。教会で結婚式を挙げない人も、こちらは必須です。きちんとアポイントをとるので、前もっての準備が必要なのです。20〜30分くらいで終わるものですが、この入籍式というのが「本当の結婚式」。日本のように、結婚記念日が入籍日と結婚した日が異なることはないわけです。
実際は、このあと教会で宗教上の結婚式を挙げ(しない人もいます)、そのあと披露パーティという流れになることが多いのです。思い立ったらすぐ結婚! というわけはいかず、結婚式をしたくない人でも市役所で式をしないといけないわけで、こういう手続きそのものがめんどうになってしまうことも……。
離婚はもっと大変
離婚も、結婚同様、日本みたいに紙一枚で済むものではありません。もともとはカトリックに則っているわけですから、離婚そのものが認められていたわけではなかったので、離婚の手続きはさらに厳しいのです。昔に比べると書類などの手続きはかなり簡素化されましたが、お互いが弁護士をたてて裁判所に出向かないといけないのです。
子供がいるとさらに複雑になり、離婚するのに2、3年かかるのも普通。フランスでは親権は両親にあるので、どちらが養育することになっても両者の同意がないとなかなか決まらないのです。
これなら、最初から結婚せずにパックスのほうがいい、ということになります。
婚姻関係があるかは誰も気にしない
「あの二人はカップルだよね!」といったときに、彼らが結婚しているかどうか表からはわかりません。子供が生まれたあとでも同じです。わからないし、実際は誰も気にしていません。結婚していなくても左手にリングをしている人たちもいるので、実際は誰もわからないものです。
結婚にこだわるとするならば税制上優遇されることもありえることと、子供たちへの法的な保護がより強くなるということでしょうか。そこを意識しなければ「結婚制度」にこだわる必要がないのです(滞在許可書の問題があるので、EU以外の国との国際結婚は別です)。
日本人女性は結婚そのものに憧れている、というところもあり、何とか結婚するために婚活をしている人も少なくないのではないでしょうか。フランスの女性はどちらかというと「長期的にカップルでいたい」「シングルでいたくない」という観点から相手を探すところはあります。
しかしそれは結婚したいからというよりは「子供が欲しいから」という理由のほうが強くある気がします。出産には期間が限定されているところがありますから。でも「結婚という制度」が目的ではありません。結婚してもしなくても、子供は産めますし、家族でいることもできるのです。
フランスは日本の戸籍制度はないですし別姓も認められているので、日本と同じに考えることはできないのは事実。どんな形で生まれた子供も権利は一緒で守られているので、いわゆる「婚外子差別」もありません。
結婚するほうが税制上優遇されることもあり、どちらをとるかはカップル次第。でも「自由の国だから」というよりは、実質的な理由からなのですね。
参照:在フランス日本国大使館