応用範囲の広いVRだが、特に相性の良い分野がいくつかある。宇宙はその中の一つだ。
VRゲームから発展したコンテンツがNASAの宇宙飛行士を訓練するために使われたり、国際宇宙ステーションを体験できるVRゲームが登場したり、無重力状態での実験にVRヘッドセットが活用されたりと、宇宙に関連するVR利用はVRInsideでも度々取り上げている。
だが、VRカメラを人工衛星に搭載しようとした企業はこれまでになかった。SpaceVRは人工衛星を使って宇宙空間のVR映像を撮影することを目指しており、HTCが設立したVR For Impactの資金を獲得する初めての企業となる。
SpaceVRの計画
HTCは先週金曜日、VRLAの中でスタートアップ企業SpaceVRをVR For Impactの資金によって支援することを発表した。SpaceVRは、VR For Impactプログラムによって資金提供を受ける初めての企業となる。
SpaceVRはスタートアップ企業ではあるが、既に一定の投資を集めている。HTCからの資金を獲得したことで、その計画はさらに力強く進んでいくだろう。
彼らが世界初のVR衛星となるOverview 1を打ち上げる日が近づいている。
打ち上げ予定は8月
SpaceVRのCEO、Ryan Holmesは年に一回のVRカンファレンスでステージに上がり、その後に開催されたHTCのエキシビションではOverview 1と呼ばれる衛星を展示した。Holmesによれば、この衛星は2017年後半にSpaceXミッションで宇宙に出ていくという。
同社は6月のSpaceX CRS-12ミッションでOverview 1を打ち上げる計画だったが、8月へと計画を延期している。
SpaceVRによれば、Overview 1はまずSpaceXロケットによって国際宇宙ステーションへと運ばれる。そこからNanoRacks CubeSat Deployerを使って地球を周回する低い軌道へと投入が予定されているという。
Overview 1の能力
Overview 1は軌道への投入から9ヶ月間に渡ってVRコンテンツの素材となる映像を撮影するという。
Overview 1の通信能力はライブ配信を可能にするほど強力ではないため、この衛星が撮影した映像がそのまま中継されるわけではない。撮影した映像を素材としてVRコンテンツが作られるようだ。
搭載されているカメラセンサーはソニー製だ。衛星の上部に4つ、下部に4つの4Kカメラセンサーが用意されている。
このカメラの性能と衛星が周回する高度を考えると、画像1ピクセルは地上での300メートルに相当する。そのため、Overview 1が撮影できるのはある程度大きな構造物やイベントのみだ。
Googleの衛星画像のように個人の家を見つけるのは難しそうだが、大きな公園や学校のような公共施設ならば見分けられるかもしれない。
衛星は星と地球との相対的な位置関係から自身の位置を計算し、3つのジャイロスコープを回転させて向きを変え、姿勢を安定させるという。
ほとんどの低軌道衛星と同様に90分に地球を1周し、9ヶ月に渡って撮影を行う。役目を終えた後には、そのまま大気圏に突入して燃え尽きる予定だ。
SpaceVRの資金
Holmesによれば、Overview 1は構想から制作まで1年半の時間と100万ドル(1億円以上)を費やして作られている。
同社はスタートアップ企業を支援する投資家、いわゆるエンジェルからの支援、クラウドファンディング、昨年4月に募集した投資によってその費用を捻出した。さらに、衛星の打ち上げ後には1年分のVRコンテンツを35ドルで販売することを予定している。
SpaceVRに対してVR For Impactから与えられる資金の額について、HTCは明らかにしていない。
同社は今後さらに多くの衛星を打ち上げることを計画しているようだ。
100万ドルの衛星を使い捨てにする計画は一見するともったいないが、宇宙飛行士一人を訓練して宇宙に送り出すには10億ドル(1000億円以上)がかかるともいわれている。人間が宇宙に行くのに比べれば、VR衛星を打ち上げる方法は経済的と言えるかもしれない。
VR衛星のインパクト
Overview 1は地球軌道を回る予定なので、これによってただちに新しい発見があるようなプロジェクトではない。宇宙空間から撮影した360度コンテンツというアイデアは魅力的だが、映るのはこれまでに宇宙飛行士たちが撮影した映像と変わらない風景になるだろう。
しかし、このプロジェクトが成功すれば次が見えてくる。SpaceVRは太陽系内に他の衛星を打ち上げることを計画しているため、これまでには見られなかった惑星や宇宙の様子をVRで見られるようになるだろう。
そうした意味で、SpaceVRはVR For Impactの最初の受賞者としてふさわしい。
4月22日のアースデイがある次の週末には、別の受賞者も複数発表されるようだ。VRを用いてどんな大きなことをやろうとしている企業が選ばれるのか、発表が楽しみだ。
参照元サイト名:Tom’s Hardware
URL:http://www.tomshardware.com/news/spacevr-overview-1-satellite-htc-spacex,34156.html
参照元サイト名:SpaceVR
URL:https://www.spacevr.co/#spacevr
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.