VRを使ったバーチャルツアーと相性が良いのが不動産業界だ。未完成の建物をVRで歩き回って設計を見直したり、自分の好きな時間に賃貸物件の内部をチェックして内覧に行く物件を絞り込んだりと、単価が高いものだけにバーチャルの特性が活きてくる。
昨年はアメリカやイギリスの企業が取り組んでいるVRモデルルームやバーチャル内覧といったサービスを紹介することが多かったが、日本企業も後を追っている。今年に入ると、日本国内でも経済産業省の支援を受けて不動産関連業向けのVRプラットフォームが提供されている。
不動産業でのVR活用は今後も広まっていくだろう。そんな流れに後押しされ、アメリカでインテリアの3Dスキャンサービスを提供するスタートアップ企業GeoCVが2億円近い資金を獲得したという。
GeoCV
GeoCVは、ニューヨークに本拠を置くスタートアップ企業だ。2014年に設立され、不動産市場で3Dスキャンの技術を活用している。このGeoCVが180億ドル(2億円弱)の資金を獲得した。
投資はカリフォルニアのベンチャーキャピタルであるRuna Capitalと、ロシアのEmery Capitalが主導して行われ、ニューヨークの投資家たちが参加したという。
不動産のスキャンを足がかりに
現在のGeoCVは建物内部の3Dスキャンを行うことで、物件のバーチャルツアーを提供している。しかし、GeoCVはさらに広い範囲で自社の技術を活用できると考えているようだ。
GeoCVの設立者でCEOのAnton Yakubenkoは、3Dキャプチャの世界ナンバーワンソリューションプロバイダーになることが同社の野望だと語る。
「不動産業では、エージェントがバーチャルツアーで成果を上げることができます。そのため、VRにとって足がかりとなる市場と言えます。
建設、インテリアデザイン、保険、不動産管理といった建造物に関連する業界も続くでしょう。
将来は誰もが3Dカメラを持ち歩き、コンテンツをARやVRで視聴するようになるでしょう」
GeoCVの公式サイトにはインテリアのスキャンについてしか書かれていないが、YakubenkoはVRを利用しやすい業界として最初に不動産業を選んだに過ぎないようだ。
他の業界でもVRを使ったバーチャルツアーによって顧客を惹き付けることはできるだろうし、将来的にはスマートフォンのカメラで3Dスキャンが可能なソフトウェアが搭載されるのが当然になるかもしれない。そこでGeoCVのソフトウェアが選ばれれば、世界ナンバーワンへの道も開けるだろう。
サービスの価格
3D Print IndustryによればGeoCVでは現在、不動作の3Dスキャン、3Dツアーの作成、見取り図との連携といった内容の含まれるフルパッケージが149ドルで提供されているという。
公式サイトには価格表などがなく、問い合わせフォームが設置されている。実際の価格は建物の規模や場所などの条件によって変化しそうだ。
サービス内容からすると、149ドルならば決して高くはない。バーチャルツアーで借り手・買い手が早く見つかってくれるならば、広告方法としては十分アリだ。
バーチャルツアーとは言いながらも、ヘッドセットを使うわけではない。PCのブラウザだけで表示できるため、利用できるユーザは多いだろう。物件を探しているユーザ側から見ても室内の雰囲気や間取り図と実物の関連イメージが掴みやすく、役に立つサービスと言えそうだ。
公式サイトのサンプルを操作してみれば、かなりスムーズに動作することが確かめられる。
モバイルスキャンの実現
GeoCVのバーチャルツアーに使われるデータは、専用の3DスキャナではなくGoogleのTango技術を搭載したスマートフォンで取得されているという。
Tangoを搭載したスマートフォンはLenovo Phab 2 ProやAsus ZenFone ARしかなく、まだ数が少ない。それでも従来の3Dスキャナを使う方法よりは気軽に使えるのがメリットだ。
現時点ではともかく、将来個人ユーザにもGeoCVの技術を普及させたいと考えたときにはTango端末で利用できることが大きなプラス点となるだろう。スマートフォンだけで3Dスキャンが可能ならば、個人作成のコンテンツも多くなりそうだ。
3Dスキャンを行う技術や企業も増えて競争が激しくなっている中で、期待のスタートアップ企業がまた一つ、といったところだろうか。
参照元サイト名:3D Print Industry
URL:https://3dprintingindustry.com/news/geocv-receives-1-8-million-funding-3d-interior-scanning-technology-110609/
参照元サイト名:GeoCV
URL:http://www.geocv.com/
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