個人でVRヘッドセットを購入するユーザの多くは、VRゲームのプレイか360度動画の視聴が目的ではないだろうか?
こういったVRコンテンツを利用するだけなら特別な知識は不要だが、作る側になるには勉強が必要だ。VRゲームを作るには、非VRゲームで必要とされる以上にプログラムの知識が必要になる。
360度動画でも同じだ。ただ360度見渡せる動画を撮影するだけならともかく、本格的にストーリーとして組み立てるならば通常の動画とはまた違う操作をしなければならない。
VR動画の制作は「ホームビデオ360」を制作しようとするユーザはもちろん、通常の報道・ドキュメンタリー映像を作り慣れているジャーナリストにとっても曲者だ。
この状況を解決しようとするサービスがスロベニアのスタートアップ企業から登場した。
非線形ストーリー・テリングを簡単に
HTCが提供するVRアプリマーケットViveportの社長からも、「VRに最適なコンテンツはニュースや時事問題だ」というコメントが出ている。彼はまた、360度映像の持つ特徴である非線形ストーリー・テリングをこれまでのメディアにない新しい語りの形として挙げた。
テレビや映画のような従来のメディアでは、視聴者が見るものは固定されている。画面に映るのは現実から切り取られた一部であり、対象の移動に合わせてカメラを振ったり、見せたいものにズームしたりといった方法で視聴者の受け取り方を操作することも可能だ。
この特徴は、複数の視聴者に似た印象を抱かせるのには適している。一方でそれをお仕着せだと感じてしまう視聴者も居るだろうし、ニュースの取り上げ方によっては偏向報道だと言われてしまうこともある。
もちろん360度映像でも見えるものは限られているが、視聴者は少なくとも360度好きな方向を向くことができる。望むなら、脇役や背景に注目すること可能だ。コンテンツ内に、本筋とは異なるサイドストーリーが用意されているかもしれない。
非線形のストーリーでは各視聴者が見ているものが同じとは限らない。話の筋書きが異なるかもしれないからだ。
視聴者がその場に居るように感じて、自分自身でストーリーを選び取ることができるのが360度映像の強みだ。
反面、VRドキュメンタリーを制作するのは通常の映像に比べて難しい。制作には映像編集の知識だけでなく、プログラミングの知識まで必要となる。
スロベニアのスタートアップ企業Viar360は、この問題の解決に取り組んでいる。彼らが提供する、ジャーナリストが360度動画でストーリーを語る助けとなるウェブベースのツールが「Viar360」だ。
Viar360
Viar360の理念
Viar360のマーケティングマネージャー、Dejan Gajsekは次のように述べている。
「ほとんどの人は、VR体験を作ることは信じられないほど複雑で難しいと考えています。私たちはこの概念を覆したいのです。パワーポイントでプレゼンテーション用のスライドを作るくらい簡単に、VR体験を構築できるとようにしたいと考えています。
Viar360は、ただ360度動画を作成して遊ぶためのものではありません。物語を構築したり、情報を整理したりすることを簡単にしたいというのがViar360の根底にある願いです」
360度動画を作成するのは無理でも、パワーポイントなら使えるという読者が多いのではないだろうか。誰でも気軽に360度動画で情報を発信できるようになれば、地元の魅力をPRしたい団体や社員のトレーニングに悩む企業が低コストでVRを取り入れられるようになる。
ジャーナリスト以外にとっても利用価値のあるサービスだ。
Viar360を使う
Dejanによれば、既にViar360は13の大学で使用されているという。アメリカ、イギリス、オーストラリアにある13の大学がViar360を採用している。
マーケティングメディアでも採用例があり、今後他の分野でも活用されていく可能性が高い。作成した360度動画Viar360のサーバに保存され、ほとんどのウェブサイトで埋め込み動画として使えるので対応できる用途は多そうだ。編集ツールは無料で使い始められ、気軽に試せる点も嬉しい。
ただし、作成した動画を配信するには1本あたり月額19ドル~の費用がかかる。この価格は1本から5本の動画を公開する場合であり、本数によって割引が受けられる。6本以上の動画があれば15ドルに割引、20本を超える場合は要相談だ。年額契約も存在するようだが、こちらも要問合せとなっている。
また、特にファイルサイズが大きい動画や視聴数の多い動画は上記以上の金額になる。公式サイトには詳細な価格表が用意されている。
ウェブベースで利用できるツールで、ユーザが簡単にVRコンテンツを作れる環境を用意しようとう理念は素晴らしい。だが、作成した動画を公開する場合の料金は動画1本で19ドル(月額)とかなり高めだ。
個人ユーザが家庭用に使うのではなく、プロのジャーナリスト、企業、団体が使用することを想定したサービスと考えたほうが良さそうだ。
参照元サイト名:Haptic.al
URL:https://haptic.al/viar360-journalism-10635eaa2bef
参照元サイト名:Viar360
URL:http://www.viar360.com/
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