HTC ViveのViveportで社長を務めるRikard Steiberは、MIPTVのキーノートでこれからのVRコンテンツについて語った。
SteiberはVRの現状、従来の映画制作とVRコンテンツ制作の関係、VRというメディアに適したコンテンツといった内容について述べ、最後に一年後にはVRがあらゆる場面で利用されていると締めくくった。
VRはまだ初期段階にある

Viveportは昨年の10月に登場したHTCのVRアプリストアだ。
Steiberは、VR技術はまだ初期段階だと語る。VRはもっぱら収入に余裕のあるアーリーアダプター層、中でもゲーマーに使用されている。
これは多くのVRファンが、そしてまだVRヘッドセットに手を出しかねている消費者が同意するのではないだろうか。VRヘッドセットや関連機器は安いものではないので、最新ガジェットが好きな消費者や熱心なゲーマー以外にとっては身近な存在になっていない。VR機器を揃えられるるのは、それなりに余裕がある消費者だけだろう。
「教育はとても重要です。私はVRというメディアがどれほど効果的かを知っています。
もちろん、VRでコンテンツを作れるクリエイターを惹きつけたいとも思っています。私たちは教師役を連れてくることができます。素晴らしいゲームタイトル・キャラクターやテレビ番組・映画の権利を持つ人々やブランドにとっても同様です。
VRには無限の可能性があります」
Steiberが指摘する通り、VRヘッドセットは単なる新しいゲーム機ではない。VRは、これまでのメディアとは異なる新しいメディアの形だと考えるべきだろう。
VRは創造性を発揮できる舞台を望むクリエイターにとって、またVRコンテンツとして利用できる資産を既に持っているクリエイターや権利者にとってのフロンティアと言えるかもしれない。新しいアイデアを試せるまっさらな場であると同時に、既存のキャラクターなどはそのまま活用できるはずだ。
没入型のストーリー・テリングがVR映像の魅力
360度動画の魅力は、自分の好きなものを見ていられることだ。従来の映画では登場シーンが少なかった、脇役として出演する好きな俳優をずっと眺めていることもできる。ストーリーがわからなくなるかもしれないが、それは些細な問題だ。
Steiberは単なる360度映像は「純粋なVR映像」ではないとしながらも没入型のストーリー・テリングには違いないと指摘する。予め決められたストーリーを見せるこれまでの技法が通じないからこそ、新しい方法や考え方が必要となる。
「360度映像はいわゆるVR映像ではないかもしれませんが、それでも魅力的な点が没入型のストーリー・テリングです。カメラはそこに置かれているだけであり、怒っているトム・クルーズのような特定の要素をクローズアップすることはできず、ただ撮影するだけです。
これは非線形のストーリー・テリングです。ユーザは用意されたものを受け取るのではなく、自分で見るものを選ぶことができます。
現在のストーリーテラーにこれが可能でしょうか?私には分かりませんが、できないストーリーテラーも多いのではないでしょうか。
ストーリー・テリングの本質とVR技術の使い方を知る才能ある若者が、全く新しい方法でVRを物語のメディアとして活用するでしょう」
VRは体験をあらゆる人にもたらす
VRに最も適したコンテンツとして、Steiberはニュースや時事問題を挙げた。これはVRゲームだけでなく様々なVRアプリケーションを展開するViveportの代表らしいかもしれない。
紛争地帯の様子を撮影したVRドキュメンタリーやテロ現場のVRニュースなどは、テレビで見る切り取られたニュースよりも強くユーザの感情に訴えかけるだろう。現場の感覚を伝える力では、VRが最高のメディアだ。
Steiberは他にも教育分野で印象深い経験を与えられるという。360度広がる恐竜の時代を体験したり、人類の誰よりも早く火星を探検したりといった経験ができるのはVRならではだ。
「かつては少数の人にしかできなかった経験が、誰でもできるものになっている。これがVRの力です」
サブスクリプションサービス開始の意味
Viveportは、Viveの登場から1年となるこの4月にサブスクリプションサービスを開始した。このプランでは、対象となるVRコンテンツのうち好みの5本を月額800円で利用できる。これまでVRコンテンツの課金方式は買い切りが基本であり、定額プランは初の試みだ。
SteiberはこのサブスクリプションプランのPRも忘れなかった。彼はVRがユーザにとって使いやすく、手頃な価格で利用できるものになるために努力を続けていくという。
「私は、ユーザがより多くのコンテンツを利用できるようにすることが重要になると考えています。だからこそ私たちはサブスクリプションサービスを開始しました。このプランでは毎月少額のコストで、他の課金形式よりも多くのコンテンツを利用できます」
彼はVRの将来についても楽観的だ。あらゆるクリエイターがVRコンテンツを手がけるようになると考えている。学校や図書館にもVRが導入され、旅行先を決めるときにはまずVRで現地を訪れてからになるだろう、とコメントを残した。
Viveを始めとする一通りのヘッドセットが出揃った2016年。後発メーカーはこれらを参考にするだろうし、既存の機種の第二世代も出てくるだろう。一年後の生活にどれほどVRが食い込んでいるかを現時点で想像するのは難しい。
報道の手段としてVRが一般的に利用されるようになった場合、これまでのメディアとどういった棲み分けがなされるのかも興味深いところだ。もっとも、インターネットの例を見ると世代やITへの適応度合いによって利用者の側が棲み分けてしまいそうではある。
パソコンの普及でテレビを「誰も」見なくなることはなかったが、テレビを見ない人は確実に増えているだろう。新聞、ラジオ、テレビ、パソコン、スマートフォン、そしてVR。1年では足りないかもしれないが、いずれはメインの情報収集手段がVR番組だという人も出てくるのだろうか。
参照元サイト名:World Screen
URL:http://worldscreen.com/viveport-chief-vr-democratizes-experiences/
参照元サイト名:Viveport
URL:https://www.viveport.com/subscriptions/SB-56244100
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