ウォルマートと言えば、実際に店舗を訪れたことがない日本人でも店名を知っているほど有名な巨大小売チェーンだ。その企業規模と同様に店舗も巨大であり、広い敷地面積で幅広い商品を取り扱っている。家電製品からピザまで何でも手に入るので、車で行けばここだけで週末の買い物を済ませることが可能だ。
だが、現在は車での移動すらせずに全ての買い物ができるような店舗が登場している。ネットショッピングならば移動は必要ないし、中でもAmazonならばほとんどあらゆるものが売っている。
ただ普通の小売店に置いてあるような商品を購入できるだけでなく、押すだけでいつもと同じブランドの消耗品が注文できるボタンや、デジタルアシスタントまで売っているのがAmazonだ。そんな相手に対抗するためなのか、ウォルマートが最新技術を開発するインキュベータを立ち上げるという。
「Store№8」の登場
Haptic.alによれば、ウォルマートはシリコンバレーのインキュベータを立ち上げる。そのインキュベータは、ロボット工学、VRとAR、そして人工知能と機械学習にフォーカスするという。
いずれも最近実用化されつつある、あるいは話題になっている旬の分野だ。こういった分野に対して投資家やファンドが投資するのはおかしなことではないが、小売チェーンのウォルマートがそちらに手を出したというのは少々不思議にも感じられる。
ウォルマートが設立する新しいインキュベータは、「Store№8」と呼ばれる。この名前は、アーカンソー州にある、あるウォルマート店舗の住所に由来しているという。その店舗では、ウォルマートの新しい店内レイアウトが試されてきた。
実験的な(そして成功した)試みを行ってきた店舗に由来する名前を付けるというのはなかなか良いセンスでもあり、験担ぎの意味もあるのだろう。
そんなところから名前の付いたStore№8は、ラスベガスで開催されたShoptalkカンファレンスで発表された。発表したのは、ウォルマートの米国電子商取引部門でCEOを務めるMarc Loreだ。
Loreは、元々2016年にウォルマートが買収した電子商取引に関わるスタートアップJet.comの共同設立者である。ウォルマートはこの買収で30億ドル(3,340億円)の現金と3億ドル(334億円)分の株式を支払ったとされている。
Loreの出した声明によれば、ウォルマートはベンチャーキャピタルのように積極的にリスクを取ってスタートアップ企業への投資を行い、グループ全体を成長させることを目指していくという。新しいインキュベータは他のスタートアップ、ベンチャーキャピタリスト、学者との連携を行っていく予定だ。
このスタートアップのポートフォリオは、ウォルマート本体の事業からは独立した状態で始動する。
ウォルマートの事情
大手小売チェーンとしてのウォルマートは、知らぬ者がいないほどの大企業である。同様のチェーンとしてはベスト・バイやターゲットなどがあるが、一般消費者全てを対象にできる業種だけにパイが大きく、それぞれが成長を続けてくることができた。
そんなウォルマートにとって厄介な相手がAmazonだ。Amazonにあるのは倉庫ばかりで大型の店舗を構えることはなく、インターネットで注文を受けて顧客に直接商品を届けている。ウォルマートも大金を払ってJet.comを買収し、電子商取引の分野を強化してはいるがそちらではまだまだ及ばない状態だ。
Amazonに対抗する上で、相手が一番得意とする土俵で戦っているだけでは勝てないと考えたのだろうか?
ここでウォルマートが打ち出したのがインキュベータの設立だった。流行の技術に投資することで直接のリターンを得るという面もあるだろうが、それ以上に自社の電子商取引分野を成長させるための動きだと考えられる。
消費者全員が全ての買い物をAmazonで済ませるようになることはないとしても、購買に占めるインターネットショッピングの割合が大きくなっていることは事実だ。
2016年の初めには、億万長者ウォーレン・バフェットのBerkshire Hathawayがおよそ9億ドル(1000億円)ものウォルマート株を売却した。この売却は、Amazon.comとの競争に関する市場の後ろ向きな見通しを反映してのものである。
こうした事情があって、最新技術への投資に踏み切ったようだ。
全く異なる複数の分野からの投資を受け、成長するVR。VRに限らず、最新技術に対しては本来異なる分野にいる企業からも資金が流れ込む。それによって技術の発展が促進されていくのは悪いことでもない。
やや遅いスタートとなったウォルマートの投資は成功するのだろうか?
参照元サイト名:Haptic.al
URL:https://haptic.al/wal-mart-launches-tech-incubator-focused-on-virtual-reality-and-artificial-intelligence-f829f54821e4#.amdp5xnrs
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