未来を感じさせる技術として最近話題になることの多いVRとAR。
ヘッドマウントディスプレイという独特なデバイスがあることで、VRは「あれを被れば、映像の世界に入ったような気になれるんだな…」と分かりやすいものの、ヘッドマウントディスプレイのような分かりやすいデバイスがないARは、どんなものかわかりづらい…。
そこで、「今後仕事でもARって言葉が関わってきそうだし、しっかり知っておきたい」という人のために、「ARとは何か?」について仕組みも一緒に解説しよう!
現実を拡張させるARって何?VRとの違いは?
VRとは仮想現実
まずVRとは何かといえば、「バーチャル・リアリティ」(Virtual Reality)の頭文字を取ったもので、仮想現実のこと。
「仮想」現実なので、現実ではない。
たとえばプレイステーションVR(PSVR)の「サマーレッスン」をプレイすると、宮本ひかりちゃんというカワイイ女の子の部屋で、女の子と二人っきり…という甘酸っぱい青春を過ごせるが、悲しいことにこれは架空の世界。
なので、PSVRのヘッドセットを脱いだら、そこには自分の部屋(=現実)が広がっている。
ARとは拡張現実
一方ARとは何かといえば、「オーギュメンテッド・リアリティ」(Augmented Reality )の頭文字を取ったもので、拡張現実のこと。
現実を拡張する…といっても、いまいちピンとこないかもしれない。
現実というよりも、デジタルを使って自分の感覚を拡張する…と考えてみてほしい。
例えば、お風呂に入る時、我々の目(=視覚)はバスタブの中のお湯が何度なのか、見ただけでは正確な温度を感知できない。
こんな時に、自分の見ている現実の風景に、お湯の温度情報をオーバーラップ表示することができる…という技術がARだ。
もちろん、情報をオーバーラップ表示させるためには何らかのディスプレイが必要となる。
VRの「サマーレッスン」の例でいえば、宮本ひかりちゃんという架空の存在が、自分の部屋(=現実)に登場する…というのがARだ。
「ポケモンGO」もARだった!?実は既に普及しているAR
2016年はHTC VIVEやOculusRift、PSVRといった主要VRデバイスが発売された。
さらに先ほどたとえに出したゲーム「サマーレッスン」も話題になり、まさしくVR元年と呼ぶに相応しい一年だ。
だが、実は2016年アhARも普及した1年だった!それも世界規模で圧倒的な普及を見せていた!!
…というのも、「ポケモンGO」がARを使ったゲームだからだ。
スマートフォンを通して見ることで、現実世界の地図にポケモン達が出現する。
現実世界の特定の場所はゲーム内でポケストップやジムといった施設になっており、行くことでアイテムをゲットしたりバトルをすることもできた。
また、ポケモンを捕まえる際やジムでのバトルにおいても、ポケモンたちは現実の風景にオーバーラップして表示されていた(ポケモンが捕まえにくくなるのでARをオフにしている人の方が多いかもしれないが…)。
現実の世界を拡張し、ポケモンやポケストップ、ジムなどの情報をオーバーラップさせた「ポケモンGO」は、まごうことなきARコンテンツだったのだ。
「ポケモンGO」をARコンテンツという観点で見た場合、昨年2016年は、圧倒的にARが認知された年と言えるだろう。
ARの仕組み GPSにARマーカーにIOT…ARを実現する仕組みにはどんなものがある?
ARは自分の何らかの感覚が拡張されさえすればよいというものなので、最終的に提供される商品やサービスには様々なパターンが存在している。
ヘッドマウントディスプレイのような目に見える存在がないのに加えて、最終的な商品やサービスが多種多様ということも、ARをわかりにくいものにしている原因だろう。
そこで、ARを実現している仕組み毎に、どんなARコンテンツが存在しているかという事例を見て行こう。
GPS型
現在「AR」としてリリースされるタイプの多くがこのGPS型。
位置情報を取得する仕組みであるGPSを使って、自分のいる周辺に様々な情報を表示する…というものだ。
地図上にポケモンを表示する「ポケモンGO」も内部の仕組みはGPSを使っているし、「ポケモンGO」の前身となるARゲーム「イングレス(Ingress)」も同様。
また、惜しくも2014年にサービスを終了してしまった頓智ドット株式会社のスマートフォンアプリ「セカイカメラ」もこのタイプ。
「セカイカメラ」はARを使ったSNSで、投稿内容とGPSの位置情報を紐づけて保存。
「セカイカメラ」を通して風景を見ると、現実の風景上に、その場所に設定された投稿が見える…というものだった。
このタイプのARコンテンツは、GPSがスマートフォンに標準搭載されているため、比較的開発がしやすくコストも抑えられるという点がメリットだ。
一方でGPSの電波が届かないところでは使えないし、誤差も発生しやすいというデメリットを持っている。
ARマーカー型
GPS型とおなじくらい、多くのARコンテンツに採用されているのがARマーカー型。
「ARマーカー」と呼ばれるQRコードに似たバーコードを使用し、カメラの画像を解析して「ARマーカー」のある位置に画像を重ねて表示するという技術。
任天堂が2011年に発売した「ニンテンドー3DS」には、「ARカード」という「ARマーカー」の描かれたカードが付属しており、これを3DS本体のカメラで写すことで、現実の風景上にゲームキャラが出現するというゲームをプレイできた。
3DSのARゲームは「ポケモンGO」と近いように思えるが、仕組みとしてはGPSではなく「ARマーカー」を使用している。
メリットは、ARカードという「印刷物」とARカードを読み取る「アプリケーション」という組み合わせにより成立する仕組みなので、商品化がしやすいという点。
たとえばバンダイは「ARカードダス」という食玩を2011年に発売(現在はサービス提供終了)。
ウェハースのオマケとしているARマーカーをスマホアプリで撮影すると、現実の風景に重なって「仮面ライダー」やアニメ「ワンピース」のキャラクターなどのキャラクターが表示されるという商品だ。
また、プロモーションに活用されるという事例もあり、「日清ラ王」はカップ麺「日清ラ王」の蓋をスマホアプリで撮影すると、蓋から美少女キャラクターが出現する…というプロモーションを行った。
デメリットは、何らかの情報を表示したい場合は必ずARマーカーを用意しなければならない…という点だ。
IOT型
IOTとは、「モノのインターネット」(Internet Of Things)の頭文字を取ったもので、PCやスマホといった、現在標準的にインターネット対応しているもの以外のさまざまなものにインターネット機能をつけ通信可能にするという技術。
例えばドアにインターネット機能をつければ、スマートフォンで鍵の開け閉めを行ったり、後から何時に開閉したかというログを確認したり、誰が通過したのかといった情報を確認できたり…といったことが可能になる。
このIOTを活用することで、バーチャルなデジタルキャラクターが現実にドアを開けてくれたり、お風呂を沸かしてくれたり…ということが実現。
つまり、ただ情報を見るだけのARではなく、実際に現実の作業を代行してくれるARが可能ということだ。
例えば、現在限定予約販売されているバーチャルホームロボット「Gatebox」は、透明ディスプレイに美少女キャラクターを投影し、このキャラクターと会話することで天気予報を教えてもらったり、テレビをつけてもらったりといったことができる。
「サマーレッスン」でいえば、「宮本ひかりちゃんが自分の部屋で自分の世話をしてくれる!」が実現するというわけだ!
バーチャルキャラクターが現実に影響を及ぼす(かのように演出されている)という点こそが最大のメリットだが、デメリットはIOTに対応していないデバイスには影響を及ぼせないということ。
テレビのオンオフ程度であれば赤外線機能を備えれば一般的なテレビ相手でも実現可能だが、お風呂のお湯を沸かしてもらうだとか、コーヒーを入れてもらうといったことを実現したい場合、IOT対応のバスルームやIOT対応のコーヒーマシンが必要になり、トータルでのコストは膨らんでいってしまう。
ただ、エンドユーザーから見ればコストが膨らんでしまうというデメリットだが、サービス提供者側からすると、色んな周辺機器を買ってもらうビジネスチャンスが沢山眠っている…と捉えることもできるだろう。
ARとVRは融合するのか?今後のARはどうなる?
仮想の世界に入り込むという特性上、VRエンターテインメントコンテンツと相性がいい。
このため、現在VRで最も盛り上がりを見せている市場はゲームや動画などのエンターテインメント市場だ。
これに対しARの持つ現実の情報を補強してくれるという特性は、「こんな時こんな情報があったら」といった情報を教えてくれたり、現実に自分が行いたい作業を代替してくれたり…など、実用的なものと相性がいいように見える。
このため筆者としては今後ARは実用的なサービスを中心に発展していくのではないかと見ている。
例えばインテリアを買う時や雑貨を買う時、ARを使って自分の家の配置したい場所に仮置きして確認しながらショッピングできる…なんてのはこの上なく便利そうだ。
ただ、ARでインテリアを仮置きしようとしたとき、もともとその場所に家具が配置されていたら、現実の家具に映像が重なってしまい、使い勝手が悪そうだ…。
そう考えると、現実の情報を取得した上で、デジタル情報とミックスして表示するというMR「複合現実」(Mixed Reality)へと技術が収束していく可能性は大いにある。
いずれにせよ、今後もARの動向を見守っていきたい。
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