『ゲームメーカーが一人での経験に集中したままでは、VRは失敗に終わる』そんなタイトルの意見がThe American Geniusに掲載された。2016年に加速し、現在も勢いのあるVRが失敗するとはどういうことだろうか?
ソーシャル要素の魅力
何が人をアプリケーションに惹きつけるのか。例えばTwitterでは、それはソーシャル要素だという。自分に起きたことを共有し、友人に起きたことを知る。そのためにインターネットを活用するのがSNSだ。
このように出来事を友人に伝え、共有する楽しみはSNSに限ったものではない。ゲームやVRであっても同じだというのだ。
ここでWiiの例が挙げられている。Wiiは世界中で人気だが、ゲーム機として特別高性能なわけではない。もっとグラフィックが綺麗なゲーム機もあり、PCゲームもある。それなのに人気があるのは、友達と一緒に遊べるコンテンツによるところが大きいという。
SNSの魅力がソーシャル要素であることは疑いようがない。SNSからソーシャルを取り除けば何もなくなってしまう。
一緒にゲームをすることの楽しさも、ゲーマーならば知っているだろう。交換・対戦ができるポケモン、協力プレイのモンハンなど、多くの人気タイトルが複数人で遊べる要素を取り入れている。
一人でじっくり遊べるタイトルもプレイするが、新しいゲーム機を購入するきっかけは上記のようなメジャータイトルという層は厚いはずだ。
みんなで楽しむVR
この点において、VRは不利な立場におかれている。これはシンプルな話で、ヘッドセットを付けていると周囲が見えないのだ。実際に集まって通信プレイというのは難しい。
オンラインマルチプレイに対応したタイトルもあり、一つの解決策ではある。ネットを介して他のユーザとプレイすれば、ゲームごとに違った展開になるので飽きにくくなるだろう。世界中の人と遊べるというのも魅力だ。
しかし、VRヘッドセットを持っている人は多くない。そういったコミュニティの友人ならともかく、身近な友人にヘッドセット所有者は何人いるだろうか。一般的なVRゲームでは、一人一台のヘッドセットを用意しないと一緒に遊ぶことができない。
開発者の工夫
VRゲームはヘッドセットがないと遊べない。この事実は変えられないが、人数分のヘッドセットが必要とは限らない。画期的なシステムを採用してここに挑戦したゲームが存在する。
それが数々の賞に輝き、Steamでも圧倒的に好評な『Keep Talking and Nobody Explodes』だ。この作品はVR用に作られたものではないが、プレイヤーのうち一人だけが画面を見る(他のプレイヤーは見てはいけない)という特殊なシステムを採用している。この方式が偶然にもVRヘッドセットに最適だった。
ヘッドセットを付けたプレイヤーは、ゲーム内で爆弾を解体する。しかし、その解体マニュアルはヘッドセットを付けていないプレイヤーしか見ることができない。解体役が爆弾の特長を伝え、それを聞いた他のプレイヤーがマニュアルを見ながら対処法を伝えるという口頭でのやり取りが必要になる。
シンプルなルールで、特別ハイクオリティなゲームではない。しかし、伝言ゲームのような面白さを生み出すことに成功している。一台のヘッドセットで複数人が遊べる、現段階のVRにおける理想的なゲームの一つだ。
一人しか見られないというVRの制限を逆に活用したものとしては、日本でもボードゲーム『アニュビスの仮面』が考案されている。こちらはプレイヤー全員が交代でヘッドセットを付けることになるのが特長だ。ヘッドセットといってもモバイルヘッドセットなので敷居が低い。現在はゲーム自体が入手困難のようだが、各所での評価は高い。
最新の技術とアナログな関係
SNSで、海外に住む友人の様子もすぐに知ることができる。しかし、SNSを便利だと感じるのは人間同士のアナログな関係があるからこそだ。全く知らない人の近況を聞いたところで、特に面白いとも思えないだろう。
VRは最新の技術だが、その成否を決めるのは案外アナログな部分なのかもしれない。しかし、ヘッドセットという方式とソーシャルの相性が良くないのは前述の通りだ。VRコンテンツが成功するためには、ソーシャル要素を上手く取り込むコンテンツデベロッパーの工夫が必要となるだろう。
参照元サイト名:The American Genius
URL:https://theamericangenius.com/editorials/virtual-reality-will-fail-gaming-companies-dont-stop-focusing-single-user-experience/
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