VRコンテンツは脳を騙すものだ。そういった意味では、そのクリエイターは手品師、詐欺師、あるいは魔法使いと似たようなものなのかもしれない。長文で詩的な内容なので、要点だけをまとめている。
子供の頃、小さなフーディーニの絵に筆者は魅了されていた。祖父の机の上、他の魔法の本やもろもろの奥にその絵はあった。世界で最も評価されている魔術師の孫として、筆者はあらゆる魔法が人の想像力の産物であることを知って育った。
魔法使いは、どんなに遠くからでも人の注意を引くことのできる天才的な語り部だ。そう考えると、VRのクリエイターも魔法使いのようなものである。
秘密1:精神的な意味付けをする
ヘッドセットによって現実世界と切り離して仮想世界だけを感じさせることは、魔法のようにバーチャルなものに存在感を与える。
マジシャンがステージの上でボールを浮かべてみせるとき、ボールの周りに何もないことを示すためにフープを通してみせる。これは、通常の文脈で理解できない驚きを与える効果がある。ボールが浮くというあり得ない現象を事実として受け入れさせるのだ。
VRにおいては、バーチャルな物体に触れるときにコントローラーの触覚フィードバックを利用したり、ユーザーの操作に物体を反応させたりすることでそれが「現実にある」感覚を作り出すことができる。
秘密2:「選択」の幻想を提供する
相手を欺くためには、自分で選んだという感覚を与えることが重要だ。ユーザーに非常に強い直感と精神的能力を持っていると感じさせる。
ここで幻の選択肢、同じ結果へと繋がる二つの選択肢を与えた場合を考えてみる。一見すると選んでいるように見えるが、どちらも同じ結果に行き着く。その選択肢は幻でしかないのだ。しかし、いきなり結果を突きつけられた場合と選択肢を与えられた場合ではユーザーの受け取り方が違ってくる。
ルームスケールのVRコンテンツにおいてユーザーに「自分が選択した」という感覚を与えることで、その世界に関わっているという感覚を提供することができる。実際は仮想世界に対して従事しているだけの立場であっても、だ。
相手を観察して、どのような選択肢を与えるべきかを考えるのだ。網膜をカメラで観察し、視線の先にあるものをチェックすることはUIデザインにおける武器となる可能性を秘めている。
秘密3:感情で注意をコントロールする
人間の注意力は無限ではない。自分の感情にとらわれているときには、外側のことに注意を向けられなくなるものだ。
笑っているときには、周囲に対して無警戒になる。そのため、驚かせやすい状態になっている。もしもユーザーをVRの中で崖の端に追い込んだらどうなるだろうか? 彼らは恐怖のために、他のことに集中できなくなってしまうはずだ。
秘密4:感覚を活用する
ユーザーによって、どの感覚により強く依存しているかは異なる。たとえば、視覚障害のあるユーザーは音や触覚を手がかりとして世界を感じ取る能力に長けている。
マジシャンがこの道のエキスパートである。感情を利用して注意を引きつけることはもちろん、感覚を活用して観客を引きつけるテクニックも身につけている。
まずは視覚から始まる。映像に文字を重ねれば、人間の注意はそこに向く。あるいは、見ている相手の目線で示された場所へと注意が移動していく。さらに、手の位置は我々が思っているよりもずっと多くのことを伝えている。魔術師がなめらかに手を動かすと、その予測不可能な動きによって強力な錯覚効果を生み出すことができる。見えているにもかかわらず、ある場所を全く意識の外に追いやってしまうこともできるのだ。この動きはVRにも応用することが可能だ。
照明や音を利用する方法もある。人間は明かりが付けばそちらを見てしまい、音が変化すればすぐその方向に注意が向く。
触覚は、マジシャンの他にスリが活用する感覚である。誰でも身体を触れられればすぐにそれに気づき、同時にそちらに気を取られてしまう。マジシャンはその間に袖から何かを取り出し、スリはあなたのポケットから財布を取り出すだろう。VRの世界では、コントローラーから得られるわずかな触覚フィードバックでさえプレイヤーに指示を与える効果を持つ。
秘密5:ユーザーの欲望に触れる
有名なマジシャンが、かつてこんなことを言っている。
「成功するトリックの中核は、面白くて巧妙なアイデアである。それは、観客が見たいと思うものだ」
見たいものが見られる仮想世界では、簡単にこの方法を使うことができる。誰に対してもこのトリックが活用できるのだ。
ユーザーの欲望を理解して、どのようなものを見たいと望んでいるのかを想像する。そして、世界を構築するのだ。もちろん、その世界と対話する方法も考えなくてはいけない。見たいものとインタラクションできることは、まずます欲望を刺激する。
秘密6:魔法の言葉
いくつかの魔法の重要さは、筆者が祖父から学んだものである。何か魔法の出来事が起きる前に、彼は特別な言葉を使う時間を取った。
現代ではこれである。
「自分自身を創造しなさい」
この言葉は、日常から非日常へとユーザーを移動させる。来るべき質の高い体験をユーザーに約束し、誰が魔術師であるのかを思い出させる役割がある。VR以外のゲームでも、キャラクタークリエイションが存在するものは多い。VRでも、別の世界への入り口となる部屋や、オープニングイベントのちょっとした儀式の形でこれを行うことができる。
参照元サイト名:uploadvr
URL:http://uploadvr.com/the-secrets-magicians-vr/
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