※本記事はVOYAGE GROUP VR室ブログの中からVRに関連する技術記事を寄稿いただいております。
こんにちは。VR室長の jujunjun110です。
突然ですが、いま世に出ている「VRコンテンツ」*1は、3DCGをベースに作られているものがほとんどです。*2
実空間やオブジェクトをスキャンするのに対して、3DCGをモデリングするほうがクオリティが高く、コストが低くなりやすいというのが最大の理由でしょうか。
けれど!
やっぱり、実際の空間もVRにして訪れたいじゃないですか。
家にいながらにして海外旅行したりしたいじゃないですか。
全天球動画という選択肢もあるけれど、移動やインタラクションができないのはもの足りない!
そんな課題を解決すべく、実空間を3Dスキャンできるカメラ Matterport を購入して使ってみたので、今回は紹介とレビューをしていきたいと思います。
目次
Matterportとは
Matterportは、サンフランシスコのベンチャー企業Matterport社が発売している空間3Dスキャンカメラ。
不動産用途で作られたプロダクトで、公式サイトに上がっているサンプルも不動産中心です。
上・真ん中・下の3方向に対し、それぞれカメラと深度計(赤外線カメラ)がついており、計6つのカメラで撮影した映像を合成することで、全天球画像と3Dモデルを撮影できるという寸法です。
気になるお値段は
- カメラ本体で $4,500
- 物件モデルのホスティング費用 月間 $49〜
そしてなんと2016年10月現在、キャンペーンで $600の割引中。いかがです奥様?
入手する
現在、Matterportは日本への発送に対応していないので、輸入代行サービスを利用して取り寄せる必要があります。今回はMatterport公式が推奨しているMyUSというサービスを利用してお取り寄せしました。
サイトでMatterportを発注してからMyUSの事業所に届くまでに10日、日本の弊社オフィスに届くまでにさらに5日。
やだー、アメリカ内での輸送のほうが時間かかってるじゃないですかー!
っていうのもそのはず、Matterportは西海岸のサンフランシスコ、MyUSは東海岸のフロリダにあるので、アメリカ大陸をはるばる西から東に渡ってから、Uターンして西の日本に来たということになります。並行輸入で西海岸のプロダクトを買うときは、西海岸の業者を探したほうがよかったですね。。。笑
まあそんなわけで、はるばる15日ほどかけて日本にMatterportが到着したわけです。
開封する
開封すると、こんな感じでコンパクトにブツが収まってます。
内容物はカメラ本体とACアダプタのみというミニマルっぷり。好感が持てます。
なお、三脚は付属していないので、自分で購入する必要があります。
3/8-16 という普通のデジカメより太めのネジに対応しているか、台形のユニットをかちっと固定できる雲台が必要なので事前に用意しておきましょう。
撮影する
撮影にはiPadアプリを使います。
今回は弊社のライブラリスペース OASIS を撮影したときのケースを紹介します。
wifi経由でペアリングして、おもむろにiPadから操作するとカメラが周り撮影が始まり、びっくりします。
1スポットにつき60°ずつ、6回撮影が行われます。
一度部屋から出るなどしてカメラから映らない場所に退避する必要があるのが結構大変。。。
あるスポットで撮影が完了したら、カメラを数メートル離れた別のスポットに移動させ再び撮影、というのを繰り返していきます。
すごいのがこのときの精度。
前に撮影したスポットと特徴点を比較することでどれくらい移動したのかを自動的に認識してくれます。
こんな感じで、撮影が完了しているところに色がついていくので、黒い所をなくすように次々と撮影していきます。
撮影が終わると、こんな感じに。
今回紹介したOASISは23スポットでいい感じになりました。所要時間はだいたい1時間くらい。
モデルを構築する
モデル生成はMatterportのサーバー側でのみで行えます。
ハイエンドPCでも写真からの立体起こしには何時間もかかったりするので、iPadでやるのは厳しいですし、まあそういう設計になるよなと。
余談ですがこれによってホスティング費用もとってるのがビジネス的にもうまい。
てなわけで、ポチッとUploadを選択するとサーバーに撮影データがアップロードされます。
OASISの場合は、約3時間で3D起こしが完了しました。
モデルを確認する
さっそく出来栄えを確認していきましょう!
ビューワーから確認する
↑クリックしてぜひ触ってみてください!
こんな感じで、ぐりぐりとモデルを触って動かすことが出来ます。
かなり綺麗!という印象の方が多いのではないでしょうか。
ですが実はこの綺麗さにはミソがありまして…
↓部屋全体を見ているとき(Dollhouse Mode)
は確かに3Dモデルなのですが、
↓部屋の中に入って周りをみているとき(Floor Plain)
は、全天球画像にシームレスに切り替わってるんです。(カーソルだけは3Dモデルに添って動いている)
これでも十分綺麗ですごいのですが、インタラクションのあるVRコンテンツを作るためには、3DモデルとしてUnityなどに入れる必要があるので、3Dモデル自体の精度をチェックしていきます。
3Dモデルデータ自体を確認する
3Dモデルデータは.obj形式で管理画面からDLできます。構成はこんな感じ。
- .obj 3Dデータ(40MB)
- .jpg テクスチャ (20枚ほど、計20MB)
- .mtl メタデータ
コイツをおもむろにUnityにぶち込みます!
ん〜!惜しい!
確かにOASISなんですが、100年くらい海上をさまよったあとのような姿になってしまっています(´・ω・`)
床や壁、ソファーなどの平面・曲面は結構綺麗に出ているのですが、椅子の背や、本棚の仕切りなど、エッジがあるところはギザギザになってしまっています。
このままアプリケーションとして一般公開できるほどのクオリティには遠いかな、というのが所感です。
撮影枚数を増やせばここの精度は上がっていくかなと思っているので、まだ試行錯誤はしていこうと思っています。
まとめ:MatterPortの用途と可能性
というわけで、3Dモデル撮影には、現状だとまだ課題はあるかなという感じのMatterportですが、以下のようなケースでは完全に実用レベルだと思います。
- 純粋な物件ビューワー
- 全天球動画を組み合わせたアプリケーションの開発に使う場合
- 実際の部屋を部屋をもとに3Dモデリングする際の下書きとしての利用
要するに、ツールは使い用!
これからもMatterportを使っていろいろな可能性を考えてみたいと思います。
お邪魔して撮影したりもぜひしてみたいので、もしこれを使ってコンテンツ製作などしてみたい方などいましたらぜひご連絡ください!
*1:全天球動画はインタラクションができず「実時間の相互作用性」がないので、ここではVRに含まないというスタンスです。
*2:実写ベースのVRコンテンツとしては、Steamが公式で出しているDestinationsというアプリのEnglish Churchというコンテンツが非常にクオリティが高いのでオススメです。
※元記事:空間3Dスキャンカメラ Matterportの使い方とレビュー –VOYAGE GROUP VR室ブログ
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