樹脂を平らに成形する工具「Tダイ」の完全オーダーメードでの設計・制作を手掛ける町工場ベンチャー・アクスモールディング株式会社が、「VRとロボットを組み合わせた訓練システム」の開発を発表しています。
VRを用いて熟練技術者から経験の浅い技術者に技術の伝承を素早く・簡単にすることができ、2023年6月から本格稼働しているということです。
「VRとロボットを組み合わせた訓練システム」稼働
町工場ベンチャーのアクスモールディング株式会社(東京・大田区)が今回、同社が開発した「VRとロボットを組み合わせた訓練システム」を発表しています。
アクスモールディング社は、高機能のフィルムやシートを作るのに使われる、樹脂を平らに成形する工具「Tダイ」の完全オーダーメード設計・制作を手掛けており、今回開発されたシステムはこのTダイを運用するにあたって必要な技術を、熟練技術者から経験の浅い技術者へ簡単に・素早く伝えることができます。
VRで運用の練習が可能
「Tダイ」とは、高機能なフィルムやシートを作る工程でプラスチックの樹脂を押し出し、均一に薄く加工するための金型のことで、これを用いて製造される高度なフィルムやシートの代表例は、スマホやテレビを購入したときに画面に貼ってあるシート、コンビニで販売されているおにぎりや弁当・パン・菓子などを包むフィルムがあります。
Tダイの運用は、0.01mm単位よりさらに細かな調整を必要とする、極めて繊細な加工技術で、またプラスチックの樹脂のなかには高価なものもあるので、気軽に練習をするわけにはいかないという実情があるということです。
さらにプラスチックの樹脂は成形時にかなりの高温になるということで、回転もしているため、未熟な技術者が扱いを誤れば大火傷を負いかねないというのもあります。
今回開発されたVRによる技術訓練システムでは、技術習得を目指す技術者がVRヘッドセットを被り、実際のプラスチックの樹脂を用いなくても、本当に自分が機械を操作しているかのように訓練することができ、前述の課題を解消していきます。
加えて遠隔操作も可能になっており、アクスモールディング社の熟練技術者が、導入先の町工場の技術者に対してVRの画像を共有しながら、遠隔で技術指導できるようになっています。
高齢化・人手不足下での町工場の技術伝承を解決
発表によると、製造業での高齢化や人手不足が深刻化している今、町工場の技術者は60代が中心で、80歳を超える技術者も決して珍しくないという状況になっているということで、このまま高齢の熟練技術者が引退してしまえば、日本の町工場の技術が途絶えてしまうという懸念があるということです。
こうしたことから、高齢の技術者がいなくなっても若い技術者、あるいは外国から来た技術者が簡単に技術を学べる仕組みが町工場では不可欠になっているということで、今回開発されたVRを活用した技術訓練システムを用いることで、町工場の若い技術者たちがほとんど費用をかけることなく、高度なものづくりの技術を学べるようになることが期待されています。
まとめ
町工場ベンチャーのアクスモールディング社が、「VRとロボットを組み合わせた訓練システム」の開発を発表しています。
同社が製作を手掛ける「Tダイ」の運用を訓練できるシステムで、高齢化・人手不足で困難になる日本の町工場の技術伝承の解決策になることが期待されています。
様々な業界の抱える課題を解決する技術に、これからも注目が集まりそうです。
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