アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によるとインディアナ州では昨年2,300人以上が薬物の過剰摂取により死亡しています。
そこで、インディアナ大学医学部の研究者たちは最近、薬物の乱用、依存に苦しむ人々を助けるためにVR技術をどのように利用できるかを示す研究を実施しました。
「良い未来」と「悪い未来」との対話
映像:現地メディアの報道
インディアナ州の現地メディアが報じたところによると、この研究は、物質使用障害(SUD、いわゆる「薬物中毒」)回復初期の成人21人が、VR技術を使用してさまざまなバリエーションの未来の自分とコミュニケーションをとるというものです。
被験者である薬物依存の回復初期にある人をVR環境内に置き、
・SUDの未来の自分
・回復した未来の自分
の2パターンの15年後の自分がアバターとして登場します。
それぞれのアバターは、パーソナライズされた声を持ち各被験者に合わせた対話型のモノローグを提供し、未来の自分と会話することで、依存症の有無によって、人生がどのようになるかを示しました。
さらに、VR空間での会話の後、参加者には毎日回復した未来の自分の画像が送られました
VR治療を受けた21名の被験者のうち、18名は少なくとも30日間薬物を摂取しない日々を継続しています。
「良い未来」が回復への意欲を与える
画像:VR Scout
SUDは、高い再発率によって持続的寛解が難しいと言われている病気です。
そのため新規の臨床的介入が必要になってしまうともいわれています。
研究チームのBrandon Oberlin助教授によると、今回の研究によって、バーチャルリアリティ体験の前後で、すべての参加者において遅延耐性(薬物を摂取することへの自制心)が大きく増加し、2倍近くになっていることが判明したとのことです。
この点について同助教授は、「体験後、未来の自分とのつながりをより深めている人ほど、うまくいっているようです」としています。
実際、被験者の大半は、未来の自分自身をバーチャルで見たときに感情的になったそうです。
依存症によって「良い未来」と「悪い未来」があり、良い未来が本当に励みになり、希望を与えてくれることに気づいた人がいたと、Oberlin助教授は語ります。
また、研究チームは以下のコメントを発表しました。
本研究は、臨床の場で容易に適用できる実装を実証しており、SUDの回復を促進することが期待されます。
研究者、臨床医、VR開発者の創造的なコラボレーションは、メンタルヘルスの介入に革命をもたらし、SUDやその他の障害を対象とする臨床医のツールの幅を広げる大きな可能性を秘めています。
まとめ
VRが薬物依存の回復に役立つという研究結果が明らかにされました。
国内でも薬物依存に苦しむ人は多く報道されていて、社会問題の一つとなっています。
薬物への誘惑は非常に強いと言われるところ、今回の研究ではVR空間での未来の自分との会話を通して自制心が高まったと報告されています。
この研究が実用化されれば、薬物乱用による悲劇が少なくなることが期待されるので、ぜひともさらなる研究を進めて欲しいですね。
参考:Study Shows VR Could Help With Substance Abuse[VR Scout]
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