株式会社ジョリーグッドは2022年7月12日(火)、広島大学病院との共同で、臨床実習VRプラットフォームのオペクラウドVRを用いて”感染症対策”を共通テーマに、「医学」「看護」「歯学」「薬学」「リハビリ」といった5部門横断型の「感染症教育VR」を開発したことを発表しました。
広島大学と「感染症教育VR」共同開発
今回開発された「感染症教育VR」は、数々の教育VRを手掛けてきたジョリーグッドと広島大学病院が共同開発したコンテンツで、同社の提供する臨床実習VRプラットフォーム”オペクラウドVR”を用いて、新型コロナウイルスを含む「感染症対策」を共通テーマに、
「医学」
「看護」
「歯学」
「薬学」
「リハビリ」
の5部門で共有する横断型のコンテンツとなっています。
5つのコンテンツで感染症対策を学ぶ
「感染症教育VR」では、
「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染対策」(医学)
「新型コロナウイルス感染症患者の看護における感染対策」(看護)
「歯科診療における感染対策」(歯学)
「抗がん剤調製における感染対策及び抗がん剤曝露対策」(薬学)
「新型コロナウイルス感染症患者のリハビリにおける感染対策」(リハビリ)
といった、各部門の臨床現場における基本行動やトラブルシューティングを学ぶコンテンツ5本が製作されています。
ここでは360度実写映像によって撮影されたリアルな現場映像をベースに、CGで表現されたウイルス・細菌の飛沫や付着を投影していて、医療スタッフの目線のみならず患者視点でも、感染症のリスクをリアルに体験することができます。
ジョリーグッドによると今後は、あらゆる職種の医療従事者が様々な視点で感染対策の実例を学べるように展開していくということです。
医学生を対象に実証実験も実施
また今回の開発に合わせて、広島大学病院感染症科の大森 慶太朗診療講師らのチームが、医学生を対象に「感染症教育VR」を用いた実証授業と医学部共用試験OSCE(オスキー)形式の実技試験を組み合わせた実証実験を行なっています。
この実験では、VRによる学習を行った学生が、従来の講義形式の学習を行った学生に比べてより正しく感染対策が実践できるのか、ということを検証しています。
この研究成果は、2022年7月12日付け”American Journal of Infection Control誌”のオンライン版に掲載されています。
【論文情報】
掲載誌: American Journal of Infection Control
論文タイトル : Virtual reality as a Learning Tool for Improving Infection Control Procedures
著者:Keitaro Omori(大森 慶太朗), Norifumi Shigemoto, Hiroki Kitagawa, Toshihito Nomura, Yuki Kaiki, Kentaro Miyaji, Tomoyuki Akita, Tomoki Kobayashi, Minoru Hattori, Naoko Hasunuma, Junko Tanaka, HirokiOhge
DOI: 10.1016/j.ajic.2022.05.023
実証実験概要
今回の実験では、広島大学の医学科4年生を
・VR群(21名)
・講義群(21名)
に分けて、それぞれにVRによる学習とパワーポイント動画による講義形式の学習を受けてもらい、その学習効果を検証する形で行われています。
その評価方法は、学習前と学習後にOSCE形式で身体診察を行い、それから感染対策の実施状況を評価する手法が採られています。
ここでは、2名の患者を腹部診察するという設定で、
・腹部術後にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による創部感染を起こした患者
・虫垂炎に対し保存的加療を行っている患者
を診て、標準予防策として診察前後の手指衛生が出来ているかに加え、MRSA患者の診察では接触感染予防策として手袋やエプロンを正しく着脱できているかを採点しています。
学習前と学習後の点数を比較した結果、VR群と講義群のいずれにおいても、学習後は手指衛生・エプロン装着・手袋装着・合計点の点数が高くなっていたということで、その学習効果が認められています。
またVR群と講義群の学習後の点数を比較した結果では、
・VR群:7点→12点
・講義群:6点→9点
といった風に、VR群の方が講義群より合計点が高いという結果が出ており、より学習効果が高い可能性が示唆されています。
コンテンツ開発にあたって
今回の感染症教育VR開発にあたって、広島大学病院 感染症科 プロジェクトリーダーの大毛 宏喜 教授からのコメントが公開されています。
感染症対策はすべての職員が取り組む課題です。
職種によって業務や視点が異なりますので、相互の理解に基づいて協力して取り組む必要があります。
今回、職種横断的に協力してVR教材を作成いたしました。
様々な視点から感染リスクを学び、感染対策の実例を疑似体験することは、実際の臨床現場で役立つ技術の獲得につながるものと期待しています。
今後も教材を充実させ、多くの医療人に卒前卒後の学びの機会を提供することで、社会に貢献してまいりたいと考えております。
まとめ
ジョリーグッドと広島大学病院が今回、5部門横断型の「感染症教育VR」を共同開発しました。
医学部共用試験形式の実証実験も行われており、その結果は医学雑誌「American Journal of Infection Control」に掲載されています。
感染症対策は原因が目に見えないだけに100%は難しいと言われていますが、高い学習効果が確認されるVR教材で学べば、完璧とはいわずとも日頃から注意できるように身に付きそうですね。
ソース:プレスリリース[@Press]
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