2020年以降急速に注目を集めるようになった「メタバース」。
新しいマーケットの形として様々な企業が参入を目指しており、テック系ニュース以外でも取り上げられることが多くなりました。
そのため、もはや「メタバースって何?」とは言いにくい状況です。
そこで今回は、わかっているようでよくわからない「メタバース」とはどのようなものか、何が魅力なのかについて紹介します。
メタバースとは?
メタバースとは「Meta(超越)」と「Universe(世界)」を組み合わせた造語であり、オンライン上に3DCGで構築された仮想空間を指します。
ユーザーそれぞれが単独で仮想現実を体験するのではなく、複数のユーザーと同時に同じ空間を共有し相互にコミュニケーションを取れるのが特徴です。
もともとは米国のSF作家ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した『スノウ・クラッシュ』に登場する仮想空間サービスの名前でした。
その後の創作物に登場する同種の概念、あるいはテクノロジーの進歩によって実現した仮想空間サービスの総称として「メタバース」という用語が使われています。
2000年代には、バーチャル空間で現実とは違った日常を過ごすことができる「セカンドライフ」のサービスが開始され大きく注目されました。
米ドルに換金できる独自の通貨も発行されるなど活発な経済活動が行われ、多くの企業が参入したことでも知られています。
日本国内でも
・PlayStation Home
・はてなワールド
・アメーバピグ
などのサービスが展開されました。
現在では、
・フォートナイト
・あつまれ どうぶつの森
などゲームがメタバースの考え方で作られていると言われています。
しかし、MMORPGなどのオンラインゲームのようにクリア条件やミッションがあるわけではなく、基本的にメタバースでは時間を過ごすことそのものを目的とするものです。
メタバースの特徴
メタバースには
・グローバルな活動
・非日常体験
ができるという特徴があります。
グローバルな交流や活動
オンライン上に構築されたメタバースでは国境に制限されないグローバルな活動をすることができます。
全世界のユーザーが同時に接続することができるため、自宅にいながらにして国際交流を楽しむことが可能です。
現実の旅行の際には、現地の物価や治安、情勢などに注意を払う必要がありますが、メタバースにおける活動ではそうした外的要因に影響されません。
どの国にいたとしても関係なく自由に交流したり、経済活動ができるのが最大のメリットです。
現実に縛られない非日常体験
メタバースは3DCGで構築された仮想空間であることから、物理法則を無視した体験をすることもできます。
ドラゴンボールの舞空術のように空を自由に飛んだり、ワンピースのようにアバターの手足をビヨーンと伸ばすことも自由です。
メタバースの中では、現実と同じように過ごすこともできるし、アニメのキャラクターのように現実世界の常識に縛られない活動もできたりと多様な楽しみ方があります。
メタバースとNFTの関係
メタバースの発展と切っても切り離せないといわれているのが「NFT」です。
メタバースとNFTがどのように関わっているのでしょうか?
まずは、そもそもNFTとは何なのかから見ていきましょう。
デジタルデータを資産にできるNFT
NFTとは「非代替性トークン(Non-Fungible Token)」の略で、ブロックチェーン技術を活用し偽造できない所有証明書や鑑定書の役割を担うことができます。
デジタルデータは複製がしやすいため、NFT以前ではデジタルアート作品やアイテムなどの不正コピーが横行するなどのトラブルが多発していました。
しかし、ブロックチェーン技術を使ったNFTによってデジタルアートやゲーム内アイテムにも所有権を保証することができるようになりました。
つまり、NFTを活用すれば資産価値のあるデジタルデータを作ることができるのが最大のメリットです。
メタバースが新たな経済圏に発展
デジタルデータの所有権を保証できるということは、デジタルアートでも安全に売買できるようになることを意味します。
そのため、メタバースではNFTを活用して
・アバター衣装やアイテムの売買
・メタバース上の土地・物件の売買
・アートギャラリーやショールーム
・特定NFT所有者限定のイベントやエリアの設定
といったことができるようになると期待されています。
例えば、自分で製作したNFTアイテムを、メタバース上に自分で開いた市場やOpenSeaなどのNFTマーケットプレイスで売買することも可能です。
このようなNFTの所有・保管・売買のしやすさから、メタバースでのNFTの運用次第では大きな収益を得るビジネスチャンスとなります。
メタバースを新しい経済圏へと成長させるNFTは、メタバースの未来に密接な関連があるとされています。
なぜメタバースに注目が集まっているのか?
「メタバース」という概念自体はそれほど新しいものではありません。
では、なぜ最近になってメタバースに注目が当たっているのでしょうか?
主な要因としては、上記のNFTによるメタバース経済活動の活発化が挙げられますがそのほかに、
・XR、5Gなどの技術発達
・新型コロナ禍の影響
の2点が挙げられます。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
5G、XRなどの技術発達
まずはメタバースを取り巻く技術が進化していることが挙げられます。
・スマートフォンの普及
・インターネットの高速化
・5Gなどモバイル通信の大容量・高速化
といった通信技術が大きく発展していることがまず1点。
さらにメタバースの追い風になるのが、XR技術の進化です。
高精細な3DCGにより表現された仮想空間を画面越しに見るのではなく、VRゴーグルを装着することによって意識そのものをメタバースに飛び込ませることができます。
アバターを通じて仮想空間上に構築された街を散策したり建物の中を見回るなど、2D画面越しではできない移動の感覚を体感できるのが特徴です。
また、VRによって他のユーザーと実際に対面しているようなリアルなコミュニケーションもできるようになりました。
フェイストラッキングやハンドトラッキングといった技術の進歩によって、表情やジェスチャーなど非言語的なコミュニケーションもできるようになりつつあります。
VRよりも現実世界からシームレスにメタバースへと移ることができるのがAR/MR技術です。
メタバースの懸念点の一つと言われているのがいちいち大掛かりなVRゴーグルを装着する手間がかかるということです。
その点、AR/MRの場合にはメガネ型デバイスを使って、現実世界とのつながりを保ったままメタバースを体験することができます。
新型コロナ禍の影響
もうひとつの大きな要因と言われているのが2020年から続く「新型コロナ禍の影響」です。
新型コロナ禍により人との接触を避けるため「ステイホーム」の措置が取られ、リモートワークやオンライン授業などインターネットに触れる機会が多くなりました。
そして、自宅からでもより人間らしいつながりを維持するため、新しいコミュニケーション手段としてメタバースに注目が集まっています。
また、新型コロナ禍により『3密』を避ける風潮が出来上がり、大人数が集まるリアルイベントの開催が困難となりました。
そこで、密を避けつつリアルイベントのような臨場感でイベントを開催できる場として、メタバースが大きな期待を向けられています。
実際、国内のメタバースである「あつまれ どうぶつの森」や「cluster」では地方自治体や企業などと連携してイベントの開催を行うなど活用事例も増えています。
メタバース参入している主な企業
メタバースへの注目度が一気に高まっている点を踏まえて、すでに多くの企業が続々と参入を決定しました。
Facebook(現:Meta)
画像:Connect 2021より(URL:https://www.youtube.com/watch?v=Uvufun6xer8)
現在最もメタバースに力を入れている企業はFacebookです。
2014年にOculusを買収して以来、VRゴーグルをはじめ数多くのVR製品をリリースしてきました。
そんな中で発表されたのが新しいVRソーシャルプラットフォーム「Facebook Horizon」です。
Horizonは仮想空間で
・ユーザー同士での自由なコミュニケーション
・さまざまな企業を誘致
を目指すものであり、まさにメタバースそのものといえるものとなっています。
Horizonの正式オープンを前に2021年8月にはVR空間で臨場感のあるリモート会議ができる「Horizon Workroom」を公開し、ビジネス向けに特化したメタバースをオープンさせました。
その後も
・50億円のファンドの設立
・1万人規模の新規スタッフの雇用
といった方針を発表し、全社を上げた取り組みとしてメタバース構築を目指していくことを明らかにしています。
さらに、2021年10月28日に行われたオンラインイベントConnect 2021では、同社がメタバースへとシフトする方向性を明確にすべく社名を「Meta」に変更することを発表しました。
マイクロソフト
Facebookが「Meta」へと社名変更を発表した数日後、マイクロソフトもメタバースへの本格的な取り組みを明らかにしています。
2021年11月2日の同社イベントで、オンライン会議ツール「Teams」がMRデバイスを利用してアクセスできる仮想空間「Microsoft Mesh」に対応することを発表しました。
Teamsでのオンライン会議に3Dアバターを利用できるようになるほか、仮想空間上のバーチャル会議室でのバーチャルミーティングが可能になります。
マイクロソフトはこの「Mesh for Teams」を「メタバースの入り口」と位置付けており、今後も同社によるメタバース事業が本格化していくようです。
GREE
国内企業でメタバースに進出した企業としてはGREEが挙げられます。
アニメ風のアバターを使ったバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」を軸にメタバース事業を展開していく予定です。
メタバース内では、
・バーチャルライブの開催
・アイテムの作成と売買
といった事業でユーザーも収益化ができるようになると推測されます。
GREEは「REALITY」メタバースをグロバールに展開させるために100億円の投資を行い、「メタバース事業」を本格展開させる方針を発表しており、今後の展開が注目されます。
Decentraland(ディセントラランド)
既に独自の経済圏を築いていることで知られているのが「Decentraland(ディセントラランド)」です。
ディセントラランドは「イーサリアム(Ethereum)」ブロックチェーンをベースとしており、MANAという仮想通貨がアイテムやコンテンツ利用の際に使われています。
仮想空間ではMANAを使って、
・ゲームで遊ぶ
・アイテムの売買
・架空の土地「LAND」を購入する
といったことが可能です。
LANDの所有者はアイテムを作成し、販売するためのマーケットを開くことが可能になり、ディセントラランド内で収益を上げることができるようになります。
現在(2021年11月10日)MANAは約290円で取引されており、新しい経済圏の形としてのメタバースを代表するものとなりそうです。
まとめ
メタバースとは、ユーザー同士がコミュニケーションを取れる仮想空間のことを指します。
仮想通貨の技術などと連携させることで独自の経済圏を生み出すことができ、その可能性に多くの企業が注目しています。
すでにオンラインゲームなどがメタバース的に利用されている例もありますが、新型コロナ禍をきっかけにより現実社会と同質なメタバース構築が目指されるようになりました。
メタバースの形としては、1社単独で超巨大なメタバースを運営するのではなく、各社が運営するメタバース同士で互換性を持たせる形式が有力視されているようです。
とはいえ、メタバースの実現にはクリアしなければならない問題が多く、今日明日完成するものではなく長い時間がかかります。
現在各社が取り組むメタバースがどのような姿で実現するのかを見られるのは遠い未来になりそうですが、大いに期待したいですね。
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