2021年6月28日、代表的なソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」が8,000万ドルのシリーズD資金調達を達成したことが複数のメディアで報じられました。
このラウンドはAnthosCapitalが主導し、Makers FundやGFR Fundなどの投資家が参加したとのことです。
これによりVRChatの外部投資全体は9,520万ドルになるといわれています。
大きく成長を続けるVRChat
VRChatはアバターを通じてVR空間で交流できるソーシャルVRプラットフォームです。
リリース以来ユーザー数は右肩上がりに増えており、ソーシャルVRの代表ともいえる存在へと成長しています。
特に2020年はパンデミックの中で、人々が同じ空間に集まってダンスや歌を楽しめる場として記録的なユーザー数となりました。
VRChat社によると、現在では40,000人を超える同時ユーザーを記録しているとのことです。
そのため、現在VRChatはプラットフォーム所有者であるFacebook、Valve、HTC以外で最も価値のあるVR企業の1つにランクされています。
今回の資金調達にあたりAnthos CapitalのBrian Ames氏は以下のようなコメントを発表しました。
VRChatが社会的体験にさらに革命をもたらすので、私たちはVRChatと提携できることを誇りに思います。
バーチャルリアリティの市場が成長するにつれ、VRChatは、仮想世界の主要なプラットフォームとしての大幅な拡大と成長に向けて準備が整っています。
さらに、MakersFundのJay Chi氏も次の声明を発表しています。
私たちは、ユーザーが生成したVR体験を提供し、世界中の人々をつなぐというVRChatの使命を真に信じており、彼らと一緒に旅を続けることに非常に興奮しています。
ソーシャルVRで広がるデジタル経済
VRChat社によると、8,000万ドルを集めた今回の資金調達の目的は独自のデジタル経済を整備することにあるとのことです。
VRChatの創設者兼CEOであるGraham Gaylor氏は以下のようにコメントしています。
メンバーが稼ぐことができるクリエイターエコノミーの発展、より有意義な体験のための強化されたソーシャルディスカバリーシステム、より多くのプラットフォームへの拡大が促進されます。
これらの機能強化はVRChatの急速な成長に貢献し、より多くの人々がこの仮想世界にアクセスできるようにします。
VRChatのコミュニティは、人気のあるパフォーマーからクリエイターやグループまで、幅広いユーザーに利用されています。
ユーザーが自分の興味や趣味に基づいて他のユーザーと繋がることができ、クリエイターは自らの作品を提供することも可能です。
そのため、クリエイターエコノミーをVRChatにおいて成長させることは、誰もが自分の作品から収入を得ることも可能にします。
このソーシャルVRが独自のデジタル経済を発展させる試みはVRChatに限った動きではありません。
Rec Roomもゲーム内ガジェットやアバターアクセサリーを作成するクリエイターに収入を得る機会を与えるため1億ドルの資金調達を行っています。
今後のソーシャルVRにおいては独自のデジタル経済システムを整備することが成長の鍵となりそうです。
まとめ
VRChatが8,000万ドルの資金調達を達成しました。
ソーシャルVRの成長のためにはクリエイティブなユーザーがより良い環境でクリエイティビティを発揮してもらうことが欠かせません。
そのためソーシャルVRは相次いで資金調達を行い独自のデジタル経済を整備し始めています。
クリエイターにとってより良い環境が整備される一方で懸念点もあります。
ディズニーのように強力なIPを保有する大企業がVR世界に参加して、権利保全の名目でクリエイターの活動を妨害することになるのではないかと心配されています。
そうした場合、自由な制作活動と著作権保護という異なる利益が衝突することになり調整は困難となりがちです。
デジタル経済のシステム整備とともに将来の紛争防止のための施策も重要になるかもしれません。
参考:VRChat公式ブログ
参考:‘VRChat’ Secures $80M Series D Funding to Create its Own Digital Economy[Road to VR]
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