近年、アップルはXRに焦点を当てた企業買収やスタッフの確保を積極的に行っていました。
しかし、社内でどのような研究・開発が行われているかは厳しい秘密主義の下で、ほとんど明らかにはなってはいません。
そんな中、2021年3月、4月に公開されたアップルの特許情報では
AR入力用の「マイクロジェスチャ」
仮想オブジェクトにユーザーの注意を向けるための頭部用触覚デバイス
の研究が行われていることを示唆しています。
XRデバイスを操作するための「仮想ジョイスティック」
2020年9月に提出され、2021年4月に公開された特許出願では、アップルがXRデバイスを操作する手段として「マイクロジェスチャ」を検討していることが明らかとなりました。
マイクロジェスチャ入力の方法としては、ユーザーが親指を人差し指の側面に押し付けて方向を選択するという、一種の「仮想ジョイスティック」あるいは「仮想サムスティック」を想定しているようです。
特許出願の中では、仮想ジョイスティックによってユーザーが「物理的な入力機器に邪魔されることなく、物理的な環境を効率的かつ自由に動き回ることができ」るとしています。
さらに、マイクロジェスチャの利点として小さいアクションは目立たず、「公共の場で発生する可能性のある他者とのやり取りや礼儀作法を必要とする人間関係に適して」いるとのことです。
操作性とバッテリー効率を両立
また、このアプローチはデバイスの操作性やバッテリー効率にも有利に働くとしています。
特許情報では仮想ジョイスティック以外にもいくつかのアプローチが記載されています。
その中の一つが、各指を入力用の独自の「ボタン」として扱うジェスチャコントロールです。
仮想オブジェクトの操作が複雑で面倒でエラーのあるシステムであり、ユーザーに重大な認知的負担をかけ、仮想/拡張現実環境での経験を損なう傾向があります。
さらに、これらの方法は必要以上に時間がかかるため、エネルギーを浪費します。この後者の考慮事項は、バッテリー駆動のデバイスでは特に重要です。
としており、この「指ボタン方式」がXRデバイスの入力システムに深刻な影響を及ぼすことを指摘しています。
ユーザーを誘導するための頭部用触覚デバイス
もう1つのアップルの特許は、2018年11月に出願され、2021年3月に付与された「頭に装着する触覚デバイス」に関するものです。
触覚は、何らかの方法でユーザーの注意を一方または他方に向けて、何かに視線を向けるために使用されます。
アップルは触覚デバイスについて
ヘッドホン内蔵型
メガネ内蔵型
ヘッドバンド型
という3つの異なるモデルを考えているようです。
この特許で詳しく説明されている使用例には、
VRまたはARの電話会議中にユーザーが視界外のスピーカーを見つける
仮想現実環境内の重要なオブジェクトにユーザーの注意を向ける
といったシチュエーションが挙げられています。
ただ、ユーザーの注意を誘導するため、空間オーディオを使用するよりも触覚がどれほど優れているかは特許から完全には明らかではありません。
まとめ
アップルのXRデバイスに関して
仮想ジョイスティックコントロール
頭部用触覚デバイス
という興味深い特許情報が公開されました。
各テックメディアは頭部への触覚がXRでの挙動にどう影響するのか不明確としているようです。
しかし、過去には頭部への触覚刺激が仮想空間での移動で「VR酔い」など不快感を軽減するという研究結果もあるため、こうした文脈の中での研究である可能性があります。
また、仮想サムスティックのコンセプトに関してはフェイスブックも、過去に公開した手首装着型のXRデバイスのデモ映像の中で示しています。
現在のところ、アップルは「仮想ジョイスティック」「仮想サムスティック」の特許をまだ取得したわけではありません。
そのため、この「仮想ジョイスティック」の技術は、XRの覇権を目指す両社の動向に大きな影響を与えることになりそうです。
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