VRは様々な分野のトレーニングにおいて効果のある技術ですが、介護のトレーニングにおいても活用が進んでいます。
障碍者の生活支援スタッフ向けのVRトレーニングシステムが開発され、実際の介護現場で起こる様々な状況をVRでシミュレートします。これによって生活支援スタッフの現場での対応力を向上させます。
生活支援スタッフのトレーニングにVRを活用
このソリューションを開発したのは、オーストラリアの介護系企業のHouse of No Stepsです。
House of No Steps社が障碍者の生活支援スタッフ向けに開発したVRプログラムでは、実際の介護現場で起こりえる様々な状況をシミュレートします。
VRでは、自分がまるで実際にその場にいるかのような臨場感のある体験ができますが、この特質を応用することで、より実際の現場に即した対応力を学ぶことができます。
生活支援スタッフが直面する4つのリスクとは?
障碍者の生活支援において、支援者が直面するリスクは4つあると言われています。
それぞれ環境、健康、行動、感情です。
この4つのリスクの中には、例えば介護対象の障碍者が暴力を振るう、といったケースも含まれています。このため生活支援スタッフには身の危険が及ぶ可能性があり、対処法を学ぶ必要がありました。
ですが、こうしたリスクに対処するための明確なトレーニング手法が打ち立てられておらず、したがってこうした非常時の状況への対応はスタッフ個人が経験を通して身に着けるしかない、というのが現状でした。
危険な状況をVRで再現
こうした問題に対して、VRが解決策になるかもしれません。
House of No StepsはVRを用いて、コストや手間をかけずに手軽にスタッフを教育できるソリューションを開発しています。
House of No Steps社のVRプログラムでは、上記に述べた4つのリスクに直面する状況をVRで疑似的に再現することで、予想外の事態や緊急時の対応などを体験として学ぶことができます。
実際の状況をVRで体験
このVRプログラムのテストでは、シェアハウスに住む3人の障碍者をケアする、という設定で行われました。1人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者で、テレビを見ていたら突然発作が起きます。
2人目は体験者に対して暴力的な態度を取り、3人目はパニックになってこの状況から逃げ出そうとドアめがけて走り出す、という内容です。
経験の未熟なスタッフがこうした状況に遭遇すると、焦って対処できないかもしれません。ですが、VRであれば安全で、様々なシチュエーションを繰り返し体験することで様々な状況への対応力が身に着きます。
VRをトレーニングに活用するメリットとは
VRでは、現実では不可能なことを、まるで現実のように体験することができます。これを活かして、たとえば事故や非常事態の状況をリアルに体験できるので、医療や消防などのトレーニングにおいては特に活用できます。
また、HMDを被るだけで体験できるので、従来のようにトレーニングのための人員や設備を導入する必要がなく、低コスト、かつローリスクで高い効果が見込めます。
House of No StepsのCEOであるAndrew Richardson氏は「VRは強力なツールです」と述べており、「VRによって、わが社の生活支援スタッフがハイリスクな状況への対処法を安全に学べる」と、VRトレーニングのメリットに言及しています。
トレーニングに活用されるVR
このVRプログラムのテストに参加した人は、「このVR体験はトレーニングに活用できる。まるで実際にそこにいるかのような感覚で、しかも安全だ」と述べており、安全かつ効果的であると述べています。
この他にも、VRは様々な分野のトレーニングに用いられています。たとえば迅速な判断と対応が求められる事故現場をVRで再現した救急隊員用のVRトレーニングや、大勢の目の前で緊張せずに話すための練習をVRで行う、というのもあります。
また、医療においてもVRの活用は進んでおり、実際の手術をVRでシミュレーションするVRソリューションは既に実用化されています。
まとめ
医療や建築など、様々な分野のトレーニングでVRが取り入れられていますが、介護支援でもVRは活用できるようです。
高齢者や障碍者などの生活支援は多くのコミュニケーションを含んでおり、そのため生活支援スタッフ個人の経験に大きく依存する面があります。それによってスタッフによってスキルや経験に差が出やすくなります。
ですが、VRをトレーニングに活用することで、事故や緊急事態などの高い対応力が求められる状況を何度でも繰り返し体験できます。それによって、スタッフ個人のスキルアップだけでなく、スタッフ全員が均等なスキル教育の機会を得ることができます。
また、HMDを装着するだけで手軽に体験ができるのもメリットです。従来のようにトレーニングのための人員や環境を構築する必要がないので、より手軽で、コストを抑えた上で高いトレーニング効果が見込めます。
参考サイト:VRScout
〜関連記事〜
■事故現場をVRで疑似体験!救急隊用VRトレーニングアプリの開発が進む
Copyright ©2018 VR Inside All Rights Reserved.