VRテクノロジーの強みは、立体的なモノが存在するリアルな世界と同じように、平面ディスプレイを介さずに立体的にVRオブジェクトを体感できることにある。しかし、この強みを生かすためには、VRアプリ開発段階で立体的なVRオブジェクトを制作しなければならないという「敷居」が乗り越えなければならない。この敷居を低くしたのが、先日Googleが発表した「Poly」だ。そして、Polyに新機能「Poly API」が追加され、敷居はさらに低くなった。
3Dオブジェクトを共有してXRアプリの開発を支援する「Poly」
「Poly」とは、XRアプリ開発に活用できる3Dオブジェクトを共有できるプラットフォームだ。
例えば、ハンバーガーの3Dオブジェクトが必要となったとしよう。Polyにアクセスして「ハンバーガー」と検索すれば、世界中の3Dモデル・クリエイターがアップしたハンバーガーの3Dオブジェクトを見つけることができる。見つけたオブジェクトのなかから、必要なものをダウンロードしてアプリ開発に活用できるのだ。なお、各オブジェクトの利用範囲は、個別に設定されており、その範囲で活用すれば権利上のトラブルも起こらない。
同アプリの発表当時、同アプリにアクセスする方法は以下の3つがあった。
- ・「Tilt Brush」「Blocks」といったGoogleが開発したVRモデリングアプリからアクセス
- ・ブラウザからPoly公式サイトにアクセス
- ・Google Cardbordライクなモバイル型VRヘッドセット、もしくはGoogle Daydream ViewからPoly公式サイトにアクセス
以上の方法を使って同アプリにアクセスして3Dオブジェクトをダウンロードした後、実際にXRアプリ開発に活用するためには、入手したオブジェクトを使用している開発環境にインポートする、というひと手間が必要であった。
VRモデリングアプリとの連携を可能にする「Poly API」
このほど発表された「Poly API」とは、VRモデリングアプリから直接Polyにアクセスし、Polyから3Dオブジェクトを入手するAPIである。つまり、同APIをVRモデリングアプリに実装すれば、今まで必要だったインポートというひと手間を省略できるのだ。
同APIの役割をもっと簡単に言えば、Tilt BrushやBlockが実現しているPolyとの連携をほかのVRモデリングアプリでも可能とすることができる、となる。
さらに、XRアプリ開発に活用される二大ゲームエンジンであるUnityとUnrealに対しては、「Poly Toolkit for Unity」「Poly Toolkit for Unreal」という機能を提供する。これらの機能は、二大ゲームエンジンとPolyの連携を可能とする。
まとめると、今回発表されたPolyの機能拡張によって、XRアプリ開発者と3Dモデリング・クリエイターがPolyを手軽に使えるようになるのだ。
「Poly API」はVRモデリングアプリの標準仕様になりうる
Poly APIの発表は、早くもVRモデリングアプリ開発者の大きな反響を呼んでいる。
GoogleがPoly APIの発表に合わせて公開した動画によると、すでに主要なVRモデリングアプリが同APIの実装に前向きなようだ。その動画に登場するアプリは、以下のような錚々たるものである。
・Mindshow(参考記事:「無料でVRアニメーションが制作できる「Mindshow」リリース!」)
・TheWaveVR (参考記事「バーチャル空間で音楽ライブを楽しむ。TheWaveVRが新たなVR音楽イベントを開催」)
・Unity EditorXR
・Normal
・AnimVR
・Modbox( 参考記事「VIVE対応ゲームメイキングアプリ「Modbox」、アップデートで音声入力コマンドを実装」)
・High Fidelity( 参考記事「ソーシャルVRプラットフォーム「High Fidelity」Vive Trackerサポートでフルボディトラッキングが可能に!」)
Poly APIを導入するVRアプリは、さらに増えることが予想される。というのも、同APIが普及してくるとPolyと連携することが事実上の標準仕様となり、Polyと連携しないVRアプリは見向きもされなくからだ。
「シェア」と「ソーシャル」こそVRの未来
Poly APIが共有を可能とするのは、3Dオブジェクトである。XRアプリ開発において共有できるものは、3Dオブジェクトのほかにも音源、アバター、ソースコードとまだ数多くある。これだけのリソースが共有されるのを待っているのだ。
共有できるのはモノだけではない。「モノ」ではなく「ゲームをするコト」「動画を見るコト」といった活動=「コト」を共有することは、ソーシャルと呼べる。
来年でVR元年から数えてVR文化は3年目を迎える。一人のVRユーザが出来ることは、かなり充実してきた感がある。VR文化の次なる段階は「シェア」と「ソーシャル」にあるのではなかろうか。
ソース:Road to VR
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