海外メディアForbeは、ブロックチェーンを活用したVRストリーミングサービスを紹介した。
視聴者がマイナーになるブロックチェーン活用動画サービス
データ通信量の増大に悩まされる動画配信業者
同メディアによると、eスポーツ系ゲーム実況動画を配信しているスタートアップSliver.tvは、ブロックチェーンを活用した動画配信サービス「Theta network」を発表した。
同社は、動画配信に関して恒常的な悩みを抱えていた。その悩みとは、サーバへの負荷の増大である。昨今の動画配信においては、4K画質コンテンツの配信やVRストリーミングサービスに対応しなければならず、データ通信量は増大の一途をたどり、サーバへの負荷が深刻であった。
以上のような問題を解決するために、ネットワークの構築にブロックチェーンを活用することにした。ブロックチェーンとは、ビットコインのような仮想通貨に使われている技術で、簡単に言えば従来のクライアント・サーバモデルにおける中央集中型管理ではなく分散型管理を実現するものである。こうしたブロックチェーンを導入すれば、管理サーバにデータ通信が集中するような体制を解消して、ネットワーク全体のデータ通信負荷を減らすことができるのだ。
だが、ブロックチェーンによるネットワーク構築において問題となることがある。その問題とは、ブロックチェーンのデータ通信の健全性を保証するマイニングをどのように実行するか、ということである。マイニングとは、ブロックチェーンにおける通信セキュリティを保証するために、任意のPCに負荷の大きい計算処理を実行させることである。
ビットコインのような仮想通貨では、仮想通貨を運用する組織とはべつにマイニングを専門に行う企業にマイニングを実行してもらっており、マイニング企業はマイニングの対価として仮想通貨を得ている。
Sliver.tvは、通常の方法とはべつのマイニング実行法を考案した。そのアイデアとは、動画の視聴者にマイニングを実行してもらう、というものだ。
視聴者がマイナー
同社が発表したブロックチェーン活用動画配信サービス「Theta network」の仕組みを簡単に説明すると、以下のようなプロセスから構成されている(そのプロセスを図解したのが上の画像)。
1.Sliver.tvが仮想通貨「Theta token」を発行する
2.広告動画を配信したい企業は、リアルなお金を支払ってTheta tokenを購入する
3.Theta networkの視聴者は、広告動画を視聴するたびにマイニング(負荷の大きい計算処理)を実行することになる。マイニングを実行した対価として広告を配信した企業からTheta tokenをもらう
4.視聴者は、自分が見たい動画を視聴するためにはTheta tokenを消費しなければならない。つまり、より多くかつ長く動画を視聴したければ、広告動画を視聴してTheta tokenを入手しなければならない。
5.Theta tokenは動画視聴のほか、動画関連グッツの購入、さらには動画配信者に寄付することができる
6.動画配信者は、視聴者からの寄付のほかに広告動画を制作することで広告配信企業からTheta tokenを入手することができる
7.動画配信者は、Theta tokenを消費してプレミアムなアイテムを入手したりして、より魅力的な動画を制作できるようになる
以上のビジネスモデルでは、視聴者はTheta tokenという仮想通貨を獲得するために広告動画を見なければならないので、広告動画配信企業から見れば、広告の閲覧が強く保証されていると言える。
現在、Theta networkは、公式サイトよりユーザ登録を受け付けている。またTheta tokenの販売は2018年1月8日から開始される予定である。
ブロックチェーンを活用したVRサービス
現在もっとも注目すべきテクノロジーのひとつであるブロックチェーンは、VRサービスにも応用されており、本メディアでもそうした事例を紹介してきた。
Decentraland
「Decentraland」は、中央管理者が不在でも運用できるというブロックチェーン・ネットワークの特徴を生かしたVRソーシャル・サービスである。
同サービスには、運営会社が存在しない。ユーザーは、一切のルールを課されることがなく、完全に自由にプレイできる。もし何らかのルールが必要になったとしても、あくまでユーザーどうしが取り決めればよいのだ。
ブロックチェーンによるVRアート作品の保全
彫刻家のChristian Lemmerzが手がけた最新作『La Apparizione』だ。Lemmerzは通常大理石を素材として彫刻を作るアーティストだが、この作品では現実の大理石を使う代わりに最新の電子機器を用いた。VR空間に磔にされたイエスの姿を作り上げたのだ。
この作品はVRデバイスで再生可能なデータでありながら、数が制限されている。世界に5つしか存在しておらず、1つあたりの価格は約10万ドル(1,130万円)だ。この希少性を保証するために、ブロックチェーンが活用されている。具体的には、仮想通貨でアート作品の取引を管理するのだ。
仮想通貨の場合、特定の管理者が通貨の信用を守っているわけではない。中央にサーバを置く代わりに世界中に広がるネットワーク上に取引が記録されるのだ。ブロックチェーンによって取引履歴が保存されれば、そこで扱われているデータが本物であることが保証されることになる。
ブロックチェーン技術は、ネットワークが関係するサービスであれば、原理的に応用可能である。それゆえ、今後もブロックチェーンを活用したVR・ARサービスが登場するだろう。
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