最新技術の開発を行うなら避けて通れない権利問題。視覚化技術の世界でも、技術の権利を巡って争いが起きている。
マイクロソフトが開発するMRヘッドセットHoloLensには様々な最新技術が使われているが、その一部が過去に取得された複数の特許を侵害しているという。そう主張するのは、コネチカット州に拠点を置くHoloTouchだ。
HoloTouchの主張によれば、マイクロソフトは同社が10年以上も前に取得した特許をそれと知りながら侵害し続けているという。
HoloLensが権利を侵害?
問題になっている技術
HoloTouchから自社の権利を侵害しているとして訴えられたマイクロソフトのHoloLens。HoloTouchによれば、このデバイスは「非接触で人間と機械が対話するホログラフィック・ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)」に関する同社の特許を侵害しているという。
HoloLensや他の視覚化技術に関わるデバイスでは、物理的なキーボードやゲームパッドではなくジェスチャを使った操作が採用されることがある。HoloTouchが主張しているのも、視覚化技術そのものではなくインターフェイスの部分だ。
マイクロソフトはHoloTouchが2002年と2004年に取得したホログラフィックイメージとHMIに関する特許を侵害しているという。
具体的には「物理的なスイッチや表面に触れることなく、キーボードのような馴染みのあるツールを視覚で捉えて1つまたは2つ以上の装置を操作できる手段」に関する特許と「HMIとその小型軽量化、省電力化」に関する特許が対象だ。
マイクロソフトは特許の存在を知っている
HoloTouchによれば、マイクロソフトは同社の特許が存在していることを認識しているはずだという。もしこれが事実ならば、特許の存在を知らずに同じ技術を開発してしまったのではなく、それと知りながら権利を侵害していることになる。
2013年にマイクロソフトが提出した特許で先行技術としてHoloTouchの技術が挙げられていること、HoloTouchが2015年の11月と2016年の1月にも特許のライセンスについてマイクロソフトに連絡していることがその根拠だという。
マイクロソフトは特許を確認したようだが、それによって2社間でライセンス契約が結ばれることはなかった。
他社にも広がるHoloTouch訴訟
HoloTouchが今回訴えたのはマイクロソフトだけだが、この訴訟は他の企業にも広がる可能性が高い。今月9日に発表されたHoloTouch公式サイトのニュースでは「マイクロソフトの他にも多くの企業やデバイスが幅広い業界で我が社の権利を侵害している」とされており、他の企業に対してもすぐに訴状を提出する予定だという。
具体的な企業名はまだ挙げられていないが、特許の内容をそのまま解釈するとVR/AR関連企業のほとんどが対象になってしまうのではないだろうか。
非接触インターフェイスの目的
HoloTouchは2002年に設立され、病院などでの使用を想定して非接触で機械を操作することのできるインターフェイスを構築したようだ。
非接触のスイッチはユーザが直接触れるスイッチに比べて衛生的であり、可動部がないので耐久性も向上する。こうした特徴は病院での使用に適しており、コネチカット州のグリニッジホスピタルやエールニューヘブンホスピタルにHoloTouchの技術を使った照明のスイッチが導入されているという。
ホログラフィックインターフェイスが使えない?
しかし、HoloTouchの特許が対象とする範囲はあまりに広い。
ホログラフィックインターフェイスを対象とした特許では、ジェスチャを操作に使うほとんどのデバイスが同社の権利を侵害していることになってしまうだろう。ハンドトラッキングコントローラーを使うものは非接触ではないので対象外だが、赤外線カメラや通常のカメラの映像で手を使ったジェスチャを認識するシステムなどは対象になると思われる。
デバイスの小型化や省電力化に関する特許は、さらに多くのデバイスが対象になりそうだ。
成長著しい業界ということもあり、視覚化技術に関わる訴訟は珍しいものではない。デバイスやシステムに対する権利が認められれば、自社で開発を行うことなく莫大な額のライセンス料が手に入るからだ。
現時点で訴状が提出されているのはマイクロソフトのHoloLensに対しての訴えのみだが、HoloTouchは他のVR/AR関連企業に対する訴訟の準備も進めているとみられる。どこまで問題が拡大するのか、どのような判決が下されるのか、業界全体に影響を与える可能性のある注目の争いとなりそうだ。
参照元サイト:HoloTouch
参照元サイト:Neowin
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