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技術がアバターとユーザの身体を繋ぐ
VR空間でユーザの分身として働いてくれるアバター。ソーシャルVRアプリでは写真や3Dスキャンデータを元にユーザの姿にそっくりの姿や声を持つアバターを作る技術が研究されており、VRゲームでもキャラメイクで自分の好みに合わせた外見を設定できるものもある。
しかし、いくら見た目を本人に似せたとしてもアバターはアバターであって本人ではない。ユーザがアバターの身体を自分の身体のように感じられるようにするためには、ヘッドセットやハンドトラッキングコントローラーだけではなくさらにVRへの没入感を高めるインターフェイスの研究が必要だ。
VRヘッドセットの改良

Pimax 8K VRは広い範囲を表示できる
映像品質の向上
ユーザをバーチャルリアリティの世界に連れて行ってくれる最大の功労者であるVRヘッドセット。人間が周囲の情報を収集する方法として視覚に依存している度合いは高く、それだけにVRヘッドセットが提供する映像の品質はVR体験そのものの没入感に大きく関わる要素となっている。
現行のVRヘッドセットの解像度は2160×1200程度(HTC Vive/Oculus Rift)だ。オフィス用のベーシックなPCディスプレイなどでよく見かける1920×1080よりは解像度が高いものの、現実と間違えてしまうほど高解像度とはとても言えない。VRゲームに夢中になっていれば気になることは少ないが、ピクセルの境目が目につくスクリーンドア効果の存在も指摘されている。
これらよりも解像度が高いヘッドセットの開発も進められているが、超高解像度を目指すVarjoの製品は個人ではなく企業を対象とした高価格なものになりそうだ。
個人で購入しやすいデバイスとしては、クラウドファンディングキャンペーンを実施中のPimax 8Kだろうか。キャンペーン開始から一週間経たないうちに100万ドルを越える支援を集め、150万ドルのストレッチゴール(9月29日時点では未達成)も追加された注目のデバイスだ。
Pimax 8Kの場合解像度は3860×2160とされている。さらに、視野角も200度(現行のVRヘッドセットは110度程度)で最大180fps(同じく90fpsまたは120fps)のVR映像を表示できる。
映像に関しては解像度の増加(スクリーンドア効果を低減し、現実のような映像を実現)、視野角の増加(視界の端に没入感を損なう黒い領域が見えることを減らす)、fpsの向上(動きを滑らかにする)といった改善が望まれる。
VRヘッドセット本体の改良
VR映像を映し出す重要デバイスであるVRヘッドセットだが、スクリーンの画質だけを上げれば良いというわけではない。VRヘッドセットには、他にも改善すべき部分がある。
現行のヘッドセットで問題視されているのは、パソコンとの有線接続が必要になることだ。
解決策としてHTCが今年発売を予定しているVive Focusのように外部の機器が必要ない独立型のデバイスというアイデアもあるが、映像品質や本体重量との兼ね合いがある。モバイルVRレベルではメインの処理機構をヘッドセットに組み込むことも可能だが、PCベースのVRやそれ以上の品質を求めるならば難しくなるだろう。
VRヘッドセットの重量は現行のものでもやや重いので、さらに改良が望まれる部分だ。VRヘッドセットのワイヤレス化、小型・軽量化が行われればVRデバイスはより扱いやすく、VR体験の没入感を損なわないものになるはずだ。
アバターとユーザの身体
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触覚だけでなく暑さ寒さも再現するTeslasuitのデザイン画
VRヘッドセットはユーザによりリアルな世界を見せるべく進化を続けている。だが、ヘッドセットだけであらゆる感覚を再現できるわけではない。南の島のリゾート地をVR映像で見ていても、極寒の地をVRゲームで冒険していても、ユーザが感じるのは部屋の温度だけだ。
さらに多くの感覚をフィードバックすることで、より没入感を高めることができる。
触れる感覚
VR空間でものに触れた感覚を伝える触覚フィードバックデバイスは、様々なタイプが開発されている。テレビゲームのコントローラーやスマートフォンにも使われているようなバイブレータを使ったものから、モーターで布を引っ張ることで身体に触れられた感覚を再現するものまである。
イメージしやすいのは、モーターの振動を使ったフィードバックデバイスだろう。数個から数十個(bHapticsスーツのハプティックポイントは87箇所もある)のモーターを個別に制御することで、状況に応じた振動を作り出すものだ。VRゲームでダメージを受けたとき、ボタンの入力を受け付けたときなどに振動させるという使い方が有効だろう。
あるいは、モーターによって反発を感じさせるハプティックグローブもある。VRgluvは、VRオブジェクトに触れる感覚を再現してくれるというデバイスだ。
こうした圧力を再現するものだけでなく、温度を感じさせる素材も作られている。ThermoRealは素早く温度を上げたり下げたりすることが可能だ。コントローラーやハプティックスーツに組み込まれれば、VR空間の温度を身体で感じることができるようになるかもしれない。
身体を認識する方法
ユーザがアバターを自分の身体のように感じるためには、リアルな映像を映すVRヘッドセットや状況に合った適切なフィードバックが得られるデバイスが必要だ。だが、それだけでは足りない。ゲーム内の物理法則があまりにもユーザの経験に合わないものであれば、違和感を覚えることになるだろう。
ユーザが自然に感じられるような、リアルなオブジェクトの挙動や現実的な町並みを作り出すクリエイターの努力も重要になる。
アバターとユーザが繋がることの効用
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課題に対処する方法を学べるアプリ
アバターとプレイヤーの一体感が高まれば、VRゲームはより夢中になれるものになるだろう。自分の分身と感じられるアバターを使うことで、ゲーム以外のVRアプリケーションでも良い効果が得られる。
セラピーやリハビリでの利用
ProRealは、ユーザが社会と関わり、問題に対処する方法を学ぶことのできるアプリケーションだ。いじめの被害者へのセラピーからPTSD患者のリハビリまで、アバターを使って課題に取り組む方法を学ぶことができる。
こうしたアプリケーションは、アバターを他人ではなく自分として捉えることができなければ効果が半減してしまう。自分自身の物語として仮想空間での出来事を感じられれば、効果が十分に発揮されるだろう。
アバターのサイズを変えることでユーザの感覚も変わることが分かっており、自分のアバターが大きければ自己効力感を得やすいという。緊張しやすいユーザがリハビリを行うためには、NPCよりも背が高めのアバターを使うと良いのかもしれない。
リモートコントロール
人間がアバターを自分の一部だと感じるには、必ずしもアバターが自分とよく似た姿をしていなければならないわけではない。機械がむき出しのロボットアームであっても、適切なフィードバックが提供されれば人は自分の腕としてコントロールすることができる。
この特性を活かせば、遠隔で手術や難しい機械の修理を行うことができるようになるかもしれない。VRヘッドセットで映像を見ながらロボットを操作することで、本人がその場に居るような精度での作業が可能になる。
入り込んでしまうことへの不安
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VRゲームが人を孤立させる?
VRヘッドセットが登場した当初から、一人でバーチャルリアリティの世界に入り込んで帰ってこなくなってしまうユーザが出るのではないかという指摘がなされている。VRゲームのキャラクターが本当の自分だと感じるようになってしまうのではないかという意見だが、少なくとも今のところそうはなっていないようだ。
VRが人を繋ぐ
家庭用のVRヘッドセットは一人で使うことに適したデバイスだが、人はエンターテイメントコンテンツを社会的に消費する。VRが友人と共通の話題になることもあり、VRによって人と人の繋がりが生まれることさえある。
VRデバイスはまだ珍しいものなので、興味はあっても未経験という消費者が多い。グループの一人がVRアーケードに行って2回めは友人を体験に誘う、誰かが家庭用のVRデバイスを購入して仲間が集まるといったパターンが考えられる。VRアーケードでは見知らぬ利用者同士の交流が始まることもあるという。
孤立するどころか、友人との関係を深めたり、新たな友人を見つけるための道具としてVRが使われているのだ。
のめり込みすぎないプレイ
多くのゲームは、簡単に(あるいは苦心して練習やレベリングを重ねた末に)達成感や満足感が得られるようにデザインされている。VRゲームに限らず、現実生活に満足していないプレイヤーがゲームで得られる快感の虜になってしまうことは考えられる。
この点についてはギャンブル性の強いコンテンツなどと同じく、ユーザの自制に加えてコンテンツクリエイターや業界の自主規制が求められるかもしれない。技術そのものが人を傷つけるものではなくても、利用法によって悪影響が出る可能性はある。
VRヘッドセットの進化や新たなフィードバックデバイスの開発によってアバターとユーザの身体感覚の境目は曖昧になりつつあり、将来のVRゲーム・アプリケーションはさらに没入感の強いものになるだろう。
セラピーの有効性を高めるといった効用も考えられるが、VRゲームにのめり込むユーザが出て来る可能性もある。最終的には、優れた技術をどのようにユーザが利用するかという付き合い方が課題となる。
参照元サイト名:Tech Radar
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