イギリスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツは、VRを題材として制作された芸術作品を含む展示会「From Life」を2017年12月11日から開催する。
この展覧会では複数のアーティストの作品が公開されるが、その中にはポートレイトペインターとして著名なイギリスのアーティストJonathan Yeo氏が手掛けたものもある。
Yeo氏はGoogleのリリースしたVRペインティングソフト「Tilt Brush」などのアプリケーションを使用して作品を制作する。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの公式ホームページによると、これには現代のアーティストが最新テクノロジーを駆使して物理的限界を超えた作品をどの様に生み出すのかを示す狙いがあるようだ。
「From Life」のイベント概要
創立250周年を記念した特別展覧会!
「From Life」は創立250周年を迎えるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツを記念する特別展覧会。同アカデミーが所蔵する18世紀のルネサンス期の芸術作品からJenny Saville氏やChantal Joffe氏などの現代アーティストらが制作した作品を公開する。
これと同時に新規テクノロジーを用いて未開拓の領域を開拓しようとするYeo氏をはじめ、Antony Gormley氏やFarshid Moussavi氏らの作品も展示される。「Tilt Brush」だけでなく SixsenseのVRモデリングソフト「MakeVR Pro」を用いた作品もあるという。
開催期間は2017年12月13日から2018年1月24日まで。
Yeo氏について
Yeo氏はGoogleのリリースした世界中の芸術作品を閲覧できるアプリ「Arts and Culture」とパートナーシップ契約を結んでいるアーティスト。新規メディアやテクノロジーを駆使することで、従来の「ポートレイト」の概念を拡張するといった試みをおこなっている。
主にポートレイト作品を手がけるが、整形手術を受ける女性を題材とした「Surgeryシリーズ」の他コラージュ作品も多く手掛けているようだ。
ただ公式ホームページを見る限りではXRを用いた芸術作品を専門的に手がけるアーティストというわけではないようで、今回の「From Life」においてもどのような作品を出展するのかは明らかにされていない。
逆に言えば、これまで現実世界で手による作品制作をおこなってきたアーティストが「VR芸術」に挑戦することによって、どのような芸術の可能性が開拓されることになるのか、注目が集まるところだ。
VRプロダクション「Factory 42」も参加
また展覧会には、VR作品の制作を手がけるプロダクションスタジオ「Factory 42」も作品を出展する。
「Factory 42」は映画、テレビ、ゲーム、パフォーマンスなど複数の分野において、AR、VRなど没入型コンテンツを使った表現方法を開拓している著名なスタジオ。
「From Life」において同社は、それぞれの時代ごとにアーティストらがどのように作品を制作してきたのか、また「From Life」に参加するアーティストの表現方法を伝える内容のVRエクスペリエンスを提供する予定のようだ。
加えてVR芸術作品の制作過程を収録したドキュメンタリーフィルム「Virtual Reality: Mystery of Creativity」も公開される予定という。
参加アーティストらとは違い、全体としてVR芸術作品制作の「裏舞台」を垣間見られるような内容に仕上がっているようだ。
アーティストから注目されるXR関連技術
「From Life」はイギリスの展覧会だが、日本においてVR作品の制作を手がけるアーティストも存在する。
たとえば「VRアーティスト」として活動しているせきぐちあいみ氏はその1人だ。
同氏はYeo氏らと同様、「Tilt Brush」を用いてVR作品を制作するほか、リアルタイムでVR空間上に絵を描くドローイングパフォーマンスをおこなっている。
「VR×アート」と聞くと目新しい印象を受けるが、そもそもアーティストが先端テクノロジーに関心を抱き表現方法として、あるいは題材として活用すること自体は歴史的に見てもそれほど珍しいことではない。
未知の表現方法を常に探索し続けるアーティストにとって、当分の間XR関連技術は注目に値する存在となるのではないだろうか。
Royal Academy of Arts
https://www.royalacademy.org.uk/
JONATHAN YEO
https://www.jonathanyeo.com/
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