エンターテイメントにおいてサウンドが重要な要素であることは以前から知られており、映画やゲームでは視聴者やプレイヤーにより深い印象を与えるために、様々な手段でサウンドを活用してきた。
このことはVRにも共通していて、コンテンツの没入感を高めるには、高画質な映像と同じぐらい立体的なサウンドが重要になる。
オーディオ企業のG’Audio Labが提供する音響ソフトウェア「Works」のアップデート版が公開され、これによって従来よりも立体音響を用いたコンテンツ製作が容易になる。
概要
「Works」のソフトウェアアップデート版
「Works」は、バーチャル空間にサウンドを配置できる立体音響ソフトウェアだ。これはAAXプラグインとして作曲ソフト「Pro Tools」に統合して使用することもできるので、フィルムメイカーやサウンドエンジニア、トラックメイカーなどが様々な用途で使うことができる。
本ソフトを使用して製作したコンテンツはヘッドマウントディスプレイで視聴、体験できる。配置したサウンドの位置はユーザーのインタラクションや位置によって変わるので、よりリアルな立体感覚を得ることができる。
「Works」アップデート版は同社の公式サイトからダウンロードできる。
立体音響の重要性
より多くのVRコンテンツが市場にリリースされるにつれて、コンテンツの没入感を上げるにはサウンドが重要な要素であることに、多くの人が気付き始めているーそう語るのはG’Audio Labにてビジネス開発ディレクターを務めるBrooklyn Earick氏だ。
立体音響を用いたコンテンツでは、それぞれのサウンドが実際にその場から聴こえてくるような感覚を得ることができる。これからのVRコンテンツにおいて立体音響の重要性は上がるであろうし、その他にも音楽や映画などの様々なコンテンツに与える影響を考えると、立体音響は大きな可能性を持っている。
立体音響について
現在の立体音響の録音方式は主に2つあり、「シーンベース方式」と「オブジェクトベース方式」に分けられる。
「Works」が対応しているのはシーンベース方式のほうで、こちらのほうがより立体的な音響効果を生み出すことが可能だ。
シーンベース方式
シーンベース方式とはおもに360度動画コンテンツに使用されている技術で、録音の際、音場全体の音声を、その位置も含めて記録できる技術だ。
鳥の鳴き声や川の流れる音、風の音など、様々な方向から聴こえてくる音を、その方向までも検知して録音するので、サウンドに立体感を生み出すことができる。
ただし、この方式で録音した音声は位置トラッキングに対応していないため、ヘッドセットを装着して首を回転させると、音を発する位置も頭の動きと一緒に回転してしまうので、リアリティを欠いてしまう。
また音場全体を一つのサウンドとして録音するために、全体的にのっぺりとした印象のあるサウンドになり、立体感に欠けるという点もある。
オブジェクトベース方式
オブジェクトベース方式は複数のサウンドを異なる位置に、個別に配置することが可能だ。位置トラッキングにも対応しているため、ヘッドセットを装着して首を回転させても音が発する位置は変わらないので、リアリティのあるサウンド環境になる。
また、配置した音の位置を変えることもできるので、移動する車のオブジェクトに併せてエンジン音の位置も併せて変化させることで、バーチャル空間で本当に車が走っているような臨場感を生み出すことができる。
サウンドを個別に配置できるオブジェクトベース方式は、これからのVRコンテンツの主流となり得る音響技術だが、普及しているとはいえない。理由の一つに、オブジェクトベース方式に対応したオーディオフォーマットが存在しない、ということが挙げられる。
しかし、G’Audio Labは現在オブジェクトベース方式に対応したフォーマット形式である「GAO」を発表しており、これはシーンベース、オブジェクトベース両方に対応している。
様々なVRコンテンツの登場に伴って立体音響のニーズも高まっており、同社が今後VR市場にもたらすメリットは大きく、今後の展開が注目される。
参照元:VRFocus
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