通常の電話では1対1での会話しかできず、長時間通話状態にしておけば時間に応じて通話料金も高額になってしまう。しかし、電話回線ではなくインターネットを使う通話アプリならば複数人での同時通話も可能だ。
特にビジネスの現場では、複数の支社を持つ企業でテレビ電話ソフトウェアを用いた会議を行ったり、国外の企業とテレビ電話を介した商談を行ったりということも多くなっている。
VRアプリを使ったバーチャル会議はテレビ電話による会話よりも対面での会話に感覚が近く、移動・出張のコストも減らしてくれる。
VRを使った遠隔コミュニケーション
Sansar
Linden LabのSansarは、7月31日にクリエイターベータ版がリリースされたソーシャルVRアプリケーションだ。
VRデバイスを持たないフレンドともライブストリーミングを利用してコミュニケーション可能なFacebookのSpaces、Gear VR専用のOculus RoomsなどVR空間でのコミュニケーションに適したアプリは多数作られている。
他のアプリとSansarを隔てる特徴は、コンテンツを作ることを楽しめるものになっている点だ。
SansarにはSansar Storeのシステムがあり、アプリ内で使用するアバターの服や髪型といったアイテムからプログラムまで、様々なVRアイテムが販売されている。
アイテムといってもゲーム内マネーではなく、実際のお金を使って売買される。ゲームエンジンや動画編集ツール用のアセットを売買するストアのようなイメージだ。
このアプリは、世界中の人と一つの空間を共有する会議アプリとしても利用できる。
出張費用を削減
車や飛行機のような機械を設計するエンジニアは、以前であれば一箇所に集まって試作品を見ながら会議を行っていた。
今ではVR技術を使うことで、他国の支社との合同デザインレビューを行うことも可能となっている。社員の移動にかかる費用や時間を抑え、試作品ではなくVR空間のバーチャルオブジェクトを使うことで試作品を作る費用も不要となっている。
VRを使った会議を行うことは、特に国際的な企業で大きなコストカットに繋がる。
VRならではの良さ
VRアプリの競争
VR空間で他のユーザとコミュニケーションを取れるアプリが増えてきたことで、アプリ同士の競争も始まっている。
2013年に立ち上げられたAltspaceは、資金の不足を理由に先日サービスを終了した。
複数のコミュニケーションアプリの中で生き残っていくには、元のユーザ数の多さ(ユーザが多ければ、フレンドも使っている可能性が高い)やアプリ独自の特徴が大切になる。
テレビ会議にない利点
コミュニケーションアプリでも、どの程度リアルにユーザの動作を反映しているかはアプリによって異なる。
Facebookもユーザに不気味さを感じさせないためにSpacesのアバターをリアル路線ではなくコミカルなデザインにしており、Rec Roomのアバターに至っては頭・胴体・手の三つのパーツがそれぞれバラバラに存在している。
だが、そんなデフォルメされたアバターであってもテレビ電話より雄弁に気持ちを伝えることが可能だ。
テレビ電話では顔の表情や声の調子で感情を伝えるしかないが、VRアバターは頭や手の動きを含むボディーランゲージを使える。
さらに、お互いの顔だけが映るテレビ電話と違って同じ空間にアバターが存在する。この特徴により、アイコンタクトやVR空間での移動によって気持ちを伝えることも可能となった。
ユーザの顔をそのまま映すよりも、デフォルメされたアバターを使うことがコミュニケーションに効果的な面も存在する。
将来のVRヘッドセットが視線や表情をトラッキングするようになれば、VRでのコミュニケーションはさらに感情を伝えやすく活き活きとしたものになるだろう。
VR会議の難点
VRを使うことで、電話やテレビ電話を使うよりも快適に会議を進められる可能性は高い。
だが、現在のVRデバイスは長時間の使用に耐えるほど軽量ではない。VRゲームをする場合と違って、大きく重いヘッドセットを付けて長時間の会議に臨むのはあまり楽しい経験ではないだろう。
逆にこの問題が解決されれば、一気にVRをビジネスに取り入れる動きが広まるかもしれない。
VRヘッドセットの価格もさらに下がることが期待され、一回~数回の出張を取りやめて会議をVRで済ませればデバイスのコストを取り戻すことができるようになるだろう。
リモートワークとVR会議
VRを使った会議が一般化するとすれば、リモートワークが広まったときかもしれない。
通信技術の発展によって、一つのオフィスに集まらなくても仕事をすることができるようになっている。リモートワークの拡大が進めば、VRを使った会議が広まるきっかけになるだろう。
リモートワークには通勤が不要、会社がオフィスや備品を用意するコストが不要といったメリットがあるものの、社員同士の連携が不便になる、勤務状況の管理が難しいといった問題点もある。
VR会議の広まるスピードは、リモートワークがどの程度受け入れられるかによって変わってきそうだ。
複数の国に拠点を持つ国際的な企業も増えているが、国際出張となれば時間もお金も必要だ。
会議ツールとしてのVRを取り入れることでこうしたコストを抑えることができるので、国際的な大企業では積極的に利用されていくだろう。
一方で直接のコミュニケーションを重んじる人は常に一定数おり、電話よりも対面で相談するうちに話が進むことは珍しくない。
全ての会議をVR空間で行うことはできないが、今後5年~10年と長いスパンで見れば多くの企業がVR会議を行うようになるのではないだろうか。
参照元サイト名:Fast Company
URL:https://www.fastcompany.com/40447437/will-virtual-reality-solve-your-conference-calls-nightmares
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