海外メディアTrusted Reviewは、IMAX幹部のIMAX VRセンターに関する発言を報じた。
IMAX VRセンターの魅力
特別製の大型スクリーン「IMAXスクリーン」でリッチな映画体験を提供しているIMAXが、VRコンテンツを提供する施設「IMAX VRセンター」の展開を開始したことは、すでに本メディアでも報じている。
海外メディアTrusted Reviewは、IMAX社のビジネス部門を率いるRob Lister氏にインタビューするなかで、同センターのビジネス・モデルについてコメントをもらった。
同氏によると、同施設にはみっつの魅力があると言う。
ハイエンドなVR体験を低価格で提供
ひとつめの魅力は、ハイエンドなVR体験を低価格で提供できることだ。この魅力に関して、同氏は以下のように述べている。
IMAX社として、一般消費者にVRコンテンツを提供するという試みには、多少の挑戦がありました。
その挑戦とは、提供価格はかなり低価格に設定しなければならない、というところです。そして、低価格に設定したことがよい方向に働きました。
というのも、一般消費者はVR体験を試したがっていますが、初期投資に2,000ドル近くを投じて、なおかつ自宅にプレイスペースを構築しようとは思いません。そんなわけで、7ドルか10ドルくらいでプレミアムなVR体験ができる選択肢であるIMAX VRセンターに向かうのです。
以上に言及されたコスト面での魅力に関しては、本メディア2017年5月30日付の記事「IMAXがVR施設を作る理由」にさらに詳しく報じられている。
ハイエンドなVRマルチプレイ体験の可能
ふたつめの魅力は、マルチプレイによるVR体験を実現する環境も完備されていることだ。この魅力は、ひとつめの魅力と関連している。VIVEやOculusRiftといったハイエンド型VRヘッドセットは、シングルプレイの環境を構築するだけでも、少なくない投資が必要となる。ましてやマルチプレイを楽しむとなると、参加するプレイヤー全員がVR Readyな環境を保有していなければならない。シングルプレイ環境の普及もまだ十分ではないのに、マルチプレイを家庭で楽しむのは文字通り「絵空事」だ。
そんな家庭レベルでは「絵空事」のVRマルチプレイが、IMAX VRセンターでは実現するのだ。同氏は、同センターにおけるVRマルチプレイの状況について、以下のように述べている。
ロサンゼルスにあるIMAX VRセンターには、実に90%以上の訪問客が2~3名のグループで訪れ、50%以上のグループが3人以上です。
…IMAX社は、センターでVR体験するスペースである(仕切りのある小部屋のような)「ポッド」を、ソーシャルな体験を強化するスペースとして設計したのです。
ポッドでは、友だちがVR体験しているのを、VRヘッドセットを通して、あるいはモニターを通して見ることができます。
今後はシングルプレイのゲームはマルチプレイ対応を進め、さらにマルチプレイ・ゲームを増やすつもりです。
IMAX VRセンター独占VR動画という展望
以上のふたつの魅力は、実のところ、VRアーケードにも認められるものである。しかし、同氏によるとIMAX VRセンターを既存のVRアーケードと分かつ魅力があると言う。そんなみっつめの魅力が、独占コンテンツの存在だ。
独占コンテンツの開発に関して、同社はすでに布石を打っている。現在、同社はGoogleと共同して独自仕様の360°カメラを開発中なのだ。このことに関しては、本メディアでも1年以上前の2016年5月23日付の記事ですでに報じている。
同氏によると、独自仕様の360°カメラは2017年内にはプロトタイプが完成し、来年以降製造する予定、とのこと。
同360°カメラを用いた独占コンテンツに関して、さらに同氏は以下のような展望を披露している。
もしわが社が独自仕様の360°カメラを映画監督に提供して、その映画監督がほかのVR動画とは全く異なるコンテンツを制作したとしたら、その作品はIMAX VRセンターの大きな差別化のポイントとなるでしょう。
そのようなコンテンツは、家庭でもほかのVR施設も体験できないのですから。
IMAX VRセンターの真の目的
こうしたみっつの魅力を備えた同センターの運営を通して、IMAX社は何を目指しているのか?そのねらいとは、IMAX運営施設に一般消費者、とくに若者を呼び戻すことだ。
アメリカ映画協会が発表したところによると、アメリカ国内における映画館の来訪客のうち18~24歳の層は、2012年には年間870万人だったのに対し、2015年には約2/3の570万人に減少している。さらに12~17歳の層では、2013年と2014年には550万人だったのだが、2015年には530万人に減少している。つまり、アメリカでは「若者の映画離れ」が進んでいるのだ。
こうしたなか、同センターを訪問したグループの実に70%が(2000年以降に成人した)ミレニアム世代だった、とRob Lister氏は述べている。この事実は、VRコンテンツが若者をIMAX運営施設に呼び寄せる切り札となることを示している。
以上のような同氏の発言から、IMAX VRセンターのビジネス・モデルが明らかになる。すなわち、IMAX VRセンターとは、IMAXスクリーン上映による映画と並ぶ(あるいは凌駕する)VRコンテンツを提供することを通して、ミレニアム世代以降の若者をIMAX社の顧客とすることを目的として設立されたのだ。
こうしたビジネスモデルに同社は次第に自信を深めているようである。その証拠に、ビジネス部門を統括するRob Lister氏は、インタビューを次のような言葉で終えている。
もしIMAX VRセンターのビジネスモデルが成功する見通しがたてば、全世界で1,200ヶ所以上あるIMAXシアターと同じくらいの規模のネットワークでIMAX VRセンターを展開するだろうと断言できます。
IMAX幹部のIMAX VRセンターに関する発言を報じたTrusted Reviewの記事
http://www.trustedreviews.com/opinion/imax-cinemas-movies-theaters-future-vr-3231891
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