VR映画やアニメーションも色々なタイトルが出てきており、映画祭でも取り上げられるケースが増えてきたが、カンヌ映画際もこの流れに加わろうとしている。
今年のCannes NEXTにおいては約50種類のVRコンテンツが出品され、数多くの映画人や著名人も体験することになった。
今まではインディーやインディペンデント映画祭で取り上げられることが多かったVR映画がカンヌに進出することによって、VR映画の普及は加速していきそうだ。
Cannes NEXTとは
カンヌ映画祭において開催されるイベントのうちに”Marché du Film(英:Film Market)”があり、これはビジネスを目的に含めた映画市場であり、世界最大の映画市場のうちの一つと言われるが、このMarché du Filmのうちで映画産業におけるイノベーションのハブとして機能しているのがCannes NEXTであり、今年のCannes NEXTはとりわけVRコンテンツに力が入っていた。
今年は5月17日〜26日にかけて開催され、長年の映画ファンや映画配給者たちが数多く訪れる中、ゲストとしてルクセンブルク大公も招待され盛況を呈し、約50種類の360度動画コンテンツやルームスケールのVR体験が展示された。
展示された作品
出品された作品の中から、特に多くの人々の目を引いた作品をピックアップしてみる。
Arden’s Wake
ゲストのルクセンブルク大公も鑑賞したというArden’s Wakeは、サンフランシスコで活動するVRコンテンツ制作会社Penrose Studioが製作したVRアニメーション。
舞台となるのは人類の文明が絶滅した後の世界で、サンフランシスコの海中に住むMinaという女性と彼女の父親との物語を描く。
二人が住むのは海上に浮かぶ小さな小屋で、特徴的なのは小屋のサイズがドールハウス並みの小さなスケールで表現されており、それによって鑑賞者は小屋の中を見たり、もしくは海中を覗き込んだりと観たい場所を自由に選ぶことができ、従来のカメラワークに縛られた映画文法から脱却している点が特徴だ。
本作はPenrose Studioが独自に開発したVR映画製作ツール”Maestro VR Collaborator”によって製作されており、NEXTにおいて彼らはこのプログラムをUnrealゲームエンジンを扱うプログラマー向けへの公開を考えているとの意向を示した。
日本でもVR空間内で映画製作をすることができるアプリ”映画ツクール”が公開され話題になっているように、今後VR映画はコンテンツだけでなく製作ツールも多く開発されそうだ。
映画ツクール -Make It Film –Tester募集!! #MakeItFilm
–下記のフォームから申請をお願いしますhttps://t.co/tejoIgdwo6pic.twitter.com/6gvAnDlnIU
—MuRo (@MuRo_CG) 2017年5月29日
Ximoan
Ximoanは古代アステカ文明の習わしからヒントを得たという作品で、Gear VRと人間のパフォーマーとの共同作業によるVR体験を実現している。
内容はアステカの習わしに伝えられる、人間が死後に行き着くとされる7段階の世界を描いており、高級素材の木製ハンモックに取り付けられたドラムの演奏とのインタラクションによって行われる。
体験者はハンモックに寝そべりGear VRを装着し、シャーマンがドラムを演奏するにつれてVR空間内で7段階の世界の様々な光景をVR体験するのであるが、それに共鳴するかのようにドラムの振動がハンモック全体に響き渡ることで、自然なハプティクス(触覚)とインタラクション性、そして高精細なグラフィックの融合による新感覚のVR体験を実現しているが、この作品で最も特徴的なのは、人間のパフォーマンスとVR体験を組み合わせることでより高い没入性を実現しているところだろう。
現在、スウェーデンの学生クリエイターであるPatrick DonaldsonとYoann Douillet、およびRaphaël HenocqとLaurent Monnetの4人はXimoanを家庭でも体験できるように開発、研究に取り組んでいるという。
Separate Silences
従来のVR体験に人間のパフォーマンスを加味することによって没入性を高める取り組みは他にも為されており、Separate Silencesにおいて、体験者はGear VRを装着すると、VR空間の中では体験者は病院で昏睡状態にあり、回復のための治療を受けている最中であるが、VR空間で看護婦が手を握ると、現実空間でも人間が手を握るので本物の人間の手の感触がする。
Sepated Silenceのチームは体験者によりディープなVR体験をもたらすために様々な行動をするが、それによって体験者はシナモンの香りから風の感覚に到るまで、フィジカルな感覚がVR映像に加わることによってより没入感の高い体験をもたらすことが可能になる。
これまでの常識を打ち破る数々の取り組みが行われるCannes NEXTは今年で2回目になるが、そこにはVR体験の未来を垣間見させる様々なコンテンツが登場し、今後も注目していきたい。
参照元:VRScout
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