海外メディアCnetは、ARが日常化した未来に関する考察記事を掲載した。
ARが日常化する未来
昨年の「ポケモンGO」の世界的成功以降、ARは「当たるかも知れない新技術」から「近い将来メインストリームとなるかも知れない技術」にその評価が格上げされたと言っても、あまり非難されないだろう。同じく昨年、MicrosoftからHololens開発版もリリースされ、Hololensアプリに関する記事や動画をよく見るようになった。
しかしながら、ARが実現するかも知れない将来像について真正面から論じる記事はまだ多くはない。こうしたARが実現する将来像は、例えばHololensアプリを数多く紹介したところで描けるようなものではない。よく言われるように、全体は部分の総和以上のものだからだ。
こうしたなか海外メディアCNetは、ARは現在のスマホのように肌身離さず使うものになる、という未来像を提示した。
今スマホですることをARグラスで行う
同メディアは、「ポスト・スマホ」としてARの利用シーンを、友だちをコーヒーショップで待っているシチュエーションを事例にして説明している。
コーヒーショップで待っている時、コーヒーのおかわりが欲しくなったとしよう。おかわりのコーヒーの価格を確認するには、ARグラスをかければ良い。コーヒーが画像認識されて、同じコーヒーの値段とほかのコーヒーの値段も確認できる。
友だちと合流して、新しく開店したレストランに行くとしよう。行ったことのないレストランでも、ARグラスが道順を現実の街に景色にオーバーレイ表示してくれる。スマホを使っていた頃のように、ディスプレイに表示された地図と現実の景色を見比べて現在位置を確認するような面倒はもはや必要ない。
ふと今日の天気を知りたいとしよう。その時は、空を見ればよい。空に今日の天気情報がオーバーレイ表示される。また、友だちが着ている服のブランドが気になったとしよう。ARグラスを使って服を見れば、そのブランドと価格も分かる。
ARは、今のスマホの「当たり前」を「ARの当たり前」に置き換えるポテンシャルを秘めているのだ。
Google Glassの教訓
だがしかし、「ARが当たり前」の時代はまだ来ていない。反対に、「ARの失敗」は経験している。その失敗とは、言うまでもなくGoogle Glassである。
同グラスがメインストリームになりえなかった原因については諸説あるが、よく挙げられることとして「プライバシーの問題」がある。同グラスにはカメラが実装されていて、相手が気付かないうちに撮影できてしまう仕様が問題視されたのだ。
以上の原因より深刻に反省しなければならいことが、同グラスがエコシステムを形成できなかったことである。
PCとスマホが普及した歴史を振り返ると、普及したプロダクトは例外なくプラットフォームを形成した。そして、プラットフォームが形成されることによって、アプリや周辺機器も開発され、多くの企業が相互に依存する経済圏が誕生するのだ。
逆に言えば、どんなに仕様や性能が優れていてもエコシステムの形成に失敗すれば、どんなプロダクトでもGoogle Glassと同じ末路を辿ると言っても過言ではない。
「ARプラットフォーマー」をめぐる覇権争い
結局、「ARの未来」を実現するとは、「ARプラットフォームを形成する」と同義である。そして、「ARプラットフォーム」をめぐる覇権争いは、すでに始まっている。
Microsoft
こうした覇権争いにおいて、やや先行しているのがMicrosoftのHololensである。同社はGoogle Glassの失敗の教訓を生かして、同デバイスの開発と同時進行でアプリの開発も着実に進めている。このアプリ開発は、「Hololensプラットフォーム」の形成を意図したものであることは、自明である。ちなみにCnetによると、Hololensアプリは2017年3月の時点で150以上開発されている。
もっとも、現時点でのHololensアプリは主としてオフィス業務を遂行するものが多いので、「ポスト・スマホ」というよりは「ポスト・PC」の性格のほうが強い。
だが、将来Hololensが軽量化・低価格化した場合には、現在のスマホに取って代わるポジションを占めることになるかも知れない。
今年のFacebookの年次総会「F8」が開催されるまでは、同社はOculus社を所有する「VRプラットフォーマー」と認識されていた。しかし、同イベントにおいてARに関する展望を披露したことで、一挙に「ARプラットフォーマー」という立ち位置を世に知らしめた。同社をARプラットフォーマーに押し上げたものこそ「Camera Effects Platform」である(同プラットフォームの詳細は、本メディアの過去記事を参照)。
同社のAR戦略で際立っているところは、「スマホカメラこそARの入り口」と宣言したことで、スマホカメラという身近なものがAR市場であることをユーザーおよび競合企業に気付かせたことである。
本格的なARデバイスの普及が達成されていない現時点において、「ARスマホカメラ市場」は競争の激化が予想される。同市場のプレイヤーはFacebook、Snapchat、Instagramといった企業である。同市場ではまだ抜きん出た企業はいないので、どのプレイヤーもプラットフォーマーになる可能性はある。
Apple
Appleに関しては、本メディアでも再三報じたように、同社CEOティム・クック氏がARへの傾倒を吐露していることからARに関係する開発を進めているのは確実である。
同社のAR開発に関しては様々な憶測が飛びかっており、次期iPhoneにAR機能を実装すること、およびARグラスの開発を進めていることが推測されている。
この推測から、Appleは「ARグラス市場」と「ARスマホカメラ市場」の両方のプレイヤーになる可能性が高いと言える。
同社には熱狂的なファンが多いだけに、上記のどの市場に参入するにしても、即座に主要プラットフォーマーになるポテンシャルを秘めているのは間違いない。
その他のスタートアップたち
ARグラス開発競争には、MicrosoftとAppleの他にも、Magic Leap、Meta、そして最近では中国メーカーDreamworldが加わった。これらの「ARグラス」スタートアップは、当然ながら既存市場における実績がない。それゆえ、これらの企業はデバイス開発と同時に「プラットフォームの形成」という未知の戦いが求められる。この未知の戦いは、「プロダクトメーカー」から「プラットフォーマー」に脱皮するためには、避けては通れないのだ。
以上が、現在のARをめぐる覇権争いの現在地だ。近々で注目されるのは、2017年6月5日から9日に開催されるAppleの開発者会議「WWDC」である。同イベントにおいて、ARに関する発表があるかどうかが、AR市場の未来を左右する。
ARが日常化した未来を考察したCnetの記事
https://www.cnet.com/news/ar-is-like-your-phone-soon-youll-feel-naked-without-it/
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