携帯電話の普及以前、メールもSNSも無い時代に個人の最も手軽な連絡手段は、自宅の電話でした。夜間に条件の良い場所で
コードレスホンの周波数をサーチすると、チャンネルがほぼ全部埋まっている“入れ食い状態”だったこともあったほどです。電話でしゃべっていることが、そのまま聞かれてしまうため、大きな社会問題になりました。
コードレスホンから顔見知りの通話
コードレスホンの通話内容は場所や時間帯でめまぐるしく変わり、午前中は仕事の打ち合わせや営業電話、お昼が近づくと飲食店の出前、夜になると実家への連絡や友人との談笑などなど、さまざまでした。
そして23時を過ぎたあたりから、ベットに子機を持ち込んでの愛のつぶやきや男女の怪しい会話、そして「ダイヤルQ2」を使って出会いを求めたり、アダルトな音声コンテンツを楽しむ通話などが、深夜2時頃まで聞こえてきたものです。
時を同じくした1990年代に、アナログ波で受信できた自動車
電話&携帯
電話と違うのは、
電話をかけている人が、すべて半径数百mの範囲に住む、顔見知りの人や近所の人だという点です。
「この声は向かいのマンションの女子大生かな?」「この借金している人は誰だ」など、あれこれと想像しながら聞いていた
コードレスホン受信マニアも多かったようです。
コードレスホンからスマホに移行した
こうした“ご近所のプライバシーがダダ漏れで分かってしまう”のが
コードレスホン最大の魅力(=危なさ)。受信など知らなかった一般人が、興味津々で
コードレスホン受信の世界に飛び込んでくるのも当然でした。
周波数の知識や受信機が操作できなくても、ボタンをワンプッシュするだけで、
コードレスホンや携帯電話の周波数帯をサーチして、次々に会話を吐き出すポケットタイプのお手軽受信機が大流行したこともあり、テレビや新聞でも
コードレスホンのプライバシー漏れ問題がしばしば取り上げられたものです。
2020年代の今、個人の連絡手段はスマホに移行。固定電話の契約数も減り、
コードレスホンの通話が激減したことで、傍受が問題になることもなくなりました。(文/大伴俊夫)
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