買取専門店「まねきや」を運営する株式会社水野は、2026年11月1日(予定)より社名を「MUGEN VISION(ムゲンヴィジョン)株式会社」へ変更し、新たなスタートを切ることを発表しました。
9月28日に都内で開催された「成長戦略・新社名発表会」では、集まった報道関係者を前に、社名変更に込めた思いや、2029年に売上高1000億円を目指す成長戦略、AIを活用した店舗運営などについて詳しい説明が行われました。
「個人の名前」から「会社のビジョン」へ

株式会社水野は2008年に創業。当初は大手買取専門店「おたからや」のフランチャイズ加盟店として事業をスタートし、その後自社ブランドへの切り替えを進めながら店舗を拡大してきました。
水野の代表取締役社長水野政行氏はこう話します。
「その時期はリーマンショックの影響で不況の真っただ中にありました。私が考えたのは『不景気に強いビジネス』。どんな経済状況でも買取ビジネスというものは景気に左右されません。当時、景気が下がっていく中でそこに魅力を感じてこの業界に入りました」
2020年には9億4000万円だった売上高は、その後22億円まで成長。2021年6月にはオリジナルブランド「買取まねきや」の運営を開始し、さらに2026年6月期には137億円に達したといいます。

今回の社名変更では、代表者個人の姓を冠した「水野」から、会社が目指す姿を表す「MUGEN VISION」へと名称を変更します。
新社名には、特定の個人の名前ではなく、事業のビジョンやコンセプト、経営哲学を社名そのものから伝えていきたいという考えが込められているとのこと。
同社が掲げる経営哲学は「誇れる会社を」。そして、事業を通じて実現したい大義を「めぐり出すをつくる」とした。
買い取った品を必要とする次の人へつなぐことで、モノだけでなく、人や価値が新たに動き出す。こうした循環を生み出す企業を目指すといいます。

なお、社名やロゴ、ブランドカラーなどのデザインは、くまモンのデザインで知られるgood design companyの水野学氏とともに決定しました。

「ものを巡らせることで社会を変え、世界を変え、未来を変えていく。 そしてこの『MUGEN』という言葉は、この未来の意思目標みたいなこと。『我々は無限です』という、そういう意味もございます。この『無限なビジョン』MUGEN VISION 株式会社。そういった意味を込めました」(水野政行氏)
拡大するリユース市場、その先にある「家庭に眠る資産」

社名変更の背景には、同社が事業を展開するリユース市場の拡大もあります。
発表会では、リユース市場は近年大きく成長しており、今後もさらなる拡大が見込まれていることが紹介されました。その背景として、物価上昇や少子高齢化、生前整理・遺品整理の増加などが挙げられます。
「リユース市場全体を見てみますと、2015年には1兆5000億円から1兆6000億円くらいだった市場が、今では4兆円規模まで成長しています。特に2024年~30年にかけても、さらに市場が拡大していくという試算があります。
私たち自身も、実際に現場にいて、市場の成長をすごく感じています。品物を売りに来られるお客様もどんどん増えていますし、それに伴って買取店や競合他社も増えている。リユースを利用するお客様そのものが増えている、という実感があります」(水野氏)

また、家庭に眠る個人資産は総額90.5兆円に上るとされ、現在のリユース市場規模を大きく上回るといいます。
同社は、こうした「まだ市場に出ていないモノ」にも目を向けています。
使わなくなった品を安心して手放せる場所を提供し、買い取った品を次に必要とする人へ届けることで、モノが廃棄されずに循環する仕組みを広げていくという考えです。
発表会に登壇した経済評論家の岸博幸氏も、物価上昇や環境・循環経済への意識の高まり、所有から利用・シェアへと向かう消費行動の変化などを、リユース市場の成長要因として挙げています。

「結論から言うと、リユース市場はこれからどんどん伸びていくと思います。お世辞でも何でもありません」
岸氏はその理由を3つに分けてわかりやすく説明しました。
ひとつめは、物価上昇。物価が上がる中で、消費者はこれからますます賢く生活しなければならなくなります。新品で買うと高いものでも、リユースならお得に買える。逆に、使わなくなったものを売ってお金にすることもできる。そういう意味で、リユース市場はこれからの消費者にとって大きな味方になります。
次に消費者の環境意識の高まりです。最近は『サーキュラーエコノミー』や『サステナブル』という言葉も広く使われるようになりました。異常気象などを背景に、資源を大切にし、ものを循環させて使おうという意識は世界的に高まっています。新車より中古車を選んだり、新築ではなく中古住宅をリフォームして使ったりする人が増えている。こうした意識の変化もリユース市場の拡大に力を貸しています。
最後は、インターネットやデジタルの普及です。『所有する』ことよりも『利用する』ことを重視するようになり、シェアやサブスクも当たり前になってきました。それに加えて、断捨離という言葉に象徴されるように、物を持ちすぎないという意識も広がっています。
こうした消費者の意識や行動の変化を考えると、リユース市場はこれからも成長していくと岸氏は断言します。
「実際、リユース市場の統計は2009年からありますが、2024年までの15年間、市場規模は一貫して拡大しています。最新データでは3兆5000億円規模です。普通の産業で、15年間ずっと市場が伸び続けるというのは、なかなかありません。
物価上昇による消費行動の変化、環境意識の高まり、そして『所有する』から『利用する』への価値観の変化。こうした流れを考えても、リユース市場は今後も伸び続けていくと私は思っています」(岸氏)
2029年に「売上高1000億円」へ

同社が掲げる成長目標は、2029年の売上高1000億円。
そのための具体的な施策として、店舗網の拡大を進めます。2029年までに直営250店舗、フランチャイズ100店舗の計350店舗を目指します。
「出店したい場所は山ほどあります。我々には売上を上げるノウハウもあるので競合他社にも負けない自信もある」(水野氏)
店舗運営に関する問い合わせベースでの反響も増えていることから、今後マーケティングを強化することで、想定を上回る加盟店数の拡大も期待できるとしています。そしてお客さまの元に直接出向く出張買取にも力を入れる予定です。
さらに、M&Aも成長の手段の一つとして位置づけています。具体的な買収件数については明らかにしていませんが、主に2~3年後を見据えた展開を検討しています。
海外展開も視野に入れています。オークションを通じた海外バイヤーの獲得に加え、台湾やタイなどアジア圏での買取店出店を検討。来年6月までに海外で数店舗を出店したい意向を示しました。
日本の中古ブランド品は、状態の良さや真贋への信頼性が海外需要につながりやすいといい、国内だけでなく海外にも販路を広げることで、さらなる成長を目指すことができる、そう水野氏は強調します。
AI査定で「1分以内」の査定を実現
さらに、店舗拡大を支える取り組みとして、AIの活用も重要だと水野氏は断言します。
現在、店舗ではAIを活用した査定システムの導入を進めています。これまでは、店舗スタッフが商品の写真を撮影し、本社の専門担当者に確認してもらう必要がありましたが、AIを活用することで、より短時間で判定結果を得られるようになります。
査定時間を短縮するだけでなく、専門的な真贋判定の経験が少ないスタッフでも査定業務を行える仕組みづくりにつなげる狙いもあります。
現時点ではAI機器で判定できる商品は約80%。今後は蓄積した査定データを分析し、判定精度の向上を図るとともに、経営やマーケティングへの活用も進めていく方針です。
さらに、AIエージェントの導入や人事領域でのAI活用も構想しており、1年以内にはAIを活用した無人買取店舗の実現も目指すといいます。
「売ること」を前提にした新しい消費へ

同社が目指すのは、単に中古品を買い取る店舗を増やすことだけではありません。
発表会では、商品を購入するときから「使わなくなったら売る」という選択肢を意識する「リセールを考えた消費」を社会に広げたいという考えも示されました。
たとえば、使わなくなったブランド品を売却して次の購入資金に充てる。あるいは、自分には不要になった品を、必要としている誰かに渡す。こうした消費行動が広がれば、モノを所有して終わるのではなく、次の人へと価値をつないでいく循環が生まれます。
無人買取店舗についても、時間のない人が短時間で品物を現金化できる場として、こうした新しい消費行動を後押しする存在にしていく考えが示されました。
「誇れる会社を」掲げ、新たなステージへ

株式会社水野は、今回の社名変更を機に「MUGEN VISION株式会社」として新たなステージへ進みます。
水野社長とのトークセッションで岸氏は最後にこう話しました。
「これからの世界情勢を考えると、今まで通りのグローバル化の時代は、もう続かないと思います。そういう中で、日本は資源がない国です。
グローバル化が分断されていく時代に、資源の少ない日本が生き残っていくためには、限られた資源を有効に使い、モノを循環させる社会をもっともっと広げていくことが重要だと思っています」
こうした背景から、MUGEN VISIONをはじめとするリユース業界の企業が循環型社会の実現に取り組むことは、今後さらに重要な社会的役割を担っていくと岸氏は締めくくりました。

リユースは、不要になったものを売買するだけの市場ではありません。限られた資源を有効に活用し、モノを廃棄せず次の人へとつなぐことで、資源の循環を支える役割も担っています。
資源の確保や環境への配慮がこれまで以上に求められるなか、リユース市場の拡大は、消費者にとっての「お得な選択肢」にとどまらず、循環型社会を支える仕組みとしても重要性を増していくことになりそうです。
新社名に込めた「無限ビジョン」と、経営哲学として掲げる「誇れる会社を」。その言葉をどのように事業へ落とし込み、リユースをより身近な消費行動として社会に定着させていくのか。同社の新たな挑戦が始まります。
<取材・写真・文/霧島カヴ>
