「ドローンで川のごみを調べる?」
そう聞いて少し意外に思う人もいるかもしれません。けれど今、その取り組みが静かに広がりつつあります。2025年6月2日、岐阜県の長良川で、ドローンを使った海洋ごみの調査実証実験が行われました。主催は一般社団法人海と日本プロジェクト岐阜。日本財団が進める「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環として実施されたこの試みは、デジタル技術による新たな環境課題へのアプローチとして注目を集めています。
調査の対象となったのは、背の高い草が生い茂り、人の目では把握しづらい長良川河川敷。そこにドローンを飛ばし、空から漂着ごみの状況を可視化し、ペットボトルなどのプラスチックごみが確認されました。従来の調査手法では困難だった場所でも、ドローンを活用することで、より効率的かつ精度の高い情報収集が可能になります。
環境対策は「地道な手作業」のイメージが強いかもしれませんが、こうした先端技術の導入によって、新たな可能性が見えてきます。映像を見た参加者からは「画像の鮮明さに驚いた」「不法投棄を探す手段にもなるのでは」といった声が上がったとのこと。今回の取り組みは、海洋ごみ問題を「見える化」し、一般の人々にも関心を持ってもらう一つのきっかけとなりました。
川のごみを“空から調べる”新たな取り組みとは?

2025年6月2日(月)、岐阜県の長良川河川敷にて、ドローンを活用した海洋ごみ調査の実証実験が行われました。会場となったのは、海津市平田町の「平田リバーサイドプラザ」駐車場横の河川エリアです。
この実証実験は、一般社団法人海と日本プロジェクト岐阜が主催し、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環として実施されたものです。
当日は、自治体関係者や企業、教育機関の関係者など13名が参加。専門的なアドバイザーとして、四日市大学環境情報学部の千葉賢教授も参加し、調査の信頼性と実用性を高めるサポートが行われました。
今回の取り組みは、目視での確認が難しい河川敷において、ドローンを飛ばしてごみの実態を把握するという新しいアプローチ。技術を使って効率的に環境課題に取り組む姿勢が伝わる実証実験となりました。
草木に隠れたごみをドローンで発見 “空からの視点”が切り拓く調査の可能性

今回の調査で対象となったのは、長良川の南濃大橋周辺。過去の調査でも多くのごみが確認されていたエリアで、今回も重点的に観察が行われました。このエリアは、河川敷内に背の高い草木が生い茂り、地上からごみの存在を目視で確認することが困難な場所です。
そこで活用されたのが、上空から状況を俯瞰できるドローンでした。草に隠れていたペットボトルなどのプラスチックごみも、空からの映像によってはっきりと確認されました。地上では気づけなかったごみの存在を“見える化”することで、現場の状況を正確に把握できた点は大きな成果です。
また、参加者にはドローンが撮影した映像がモニターを通じてリアルタイムで共有され、必要に応じてキャプチャ画像や録画データも配布されました。テクノロジーによる情報の可視化と共有が、多くの人に課題を“自分ごと”として捉えてもらう機会にもなっています。
“どんなごみがあるか”もひと目でわかる ドローン画像が示すごみの実態

今回の調査では、ドローンで撮影した映像を専用ソフトで分析し、漂着していたごみの種類や場所の特徴を詳しく確認することができました。特にごみが溜まっていたのは、川のコンクリート護岸部分。そこは川の水が一時的に増えたあとに、流されてきたごみがそのまま残ってしまう場所と考えられています。
撮影された画像を分析すると、流木や木の枝といった自然のものに加え、ペットボトルなどのプラスチック類も多く見つかりました。これらのごみは、さらに川を下っていくとやがて海に流れ着く可能性があることから、海洋ごみとのつながりも明らかになってきています。
つまり今回の調査では、ドローンを使って「どこに」「どんなごみが」あるのかを客観的に記録し、将来的なごみ対策につながるデータとして活用できる第一歩となりました。同じ手法を他の地域でも繰り返し実施すれば、より精度の高い環境分析にもつながっていくことが期待されます。
“見えたことで考えた”参加者の声が示す、テクノロジー活用の可能性
実証実験に参加したのは、自治体の職員や教育関係者、企業など多様な立場の人々。ドローンによって映し出されたリアルなごみの映像に、多くの驚きの声が上がりました。特に「画像の鮮明さに驚いた」「不法投棄などの場所もドローンで探せるかもしれない」といった意見は、技術の応用可能性を強く感じさせます。
また、「このような調査によって市民の海洋ごみへの関心が高まるのではないか」との声や、「子どもたちにも興味を持ってもらえる内容なので、もっとイベントとして展開していくと良いのでは」といった意見もありました。これは、単に調査結果を得るだけでなく、教育や啓発の手段としてもドローンが活用できるという示唆です。
技術を通じて環境問題を“見える化”することで、社会全体の関心を喚起し、行動につなげていく。参加者の言葉からは、そんな未来へのヒントが見えてきます。
“調べ方”が変われば、未来も変わる テクノロジーが広げる環境対策の可能性
ドローンという先端技術を使い、目に見えづらかったごみの存在を「見えるもの」としてとらえ直す――今回の実証実験は、そんな新たな一歩を感じさせる取り組みでした。
従来のように人が現場に足を運び、時間と労力をかけて行ってきた調査に対し、ドローンを活用することで、より効率的に、そして客観的なデータとして環境の現状を把握できるようになります。これは、単なる技術導入にとどまらず、環境問題への関心を広げ、持続的な取り組みにつなげていく力にもなり得ます。
調査する手段が進化すれば、見えてくる課題も変わり、それに向けた解決策の幅も広がります。今回のような取り組みが各地に広がっていけば、海や川を守る“次のアクション”が、より身近で具体的なものになっていくかもしれません。
日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。