本年で37回目となる本田賞の授与式は2016年11月17日に東京都の帝国ホテルで開催され、メダル・賞状とともに副賞として合計1,000万円が磯貝博士と矢野博士に贈呈されます。
CNFは、植物細胞壁の基本骨格物質であるセルロースミクロフィブリル束の総称で、鋼鉄の1/5の軽さで、その5倍以上の強度と、ガラスの1/50の線熱膨張係数を有するナノ繊維です。樹木など、植物資源の50%以上を占める自然界に豊富に存在する環境負荷の少ない植物由来の持続型資源であり、低炭素社会の早期実現に向けて、石油系プラスチックの代替、構造材の補強用繊維や改質剤としての利用が注目されています。
磯貝博士は、CNF生産における化学的なアプローチとして「TEMPO※2触媒酸化法」を開発し、それまでエネルギーを大量に使用する機械的解繊処理によっていたCNF生産の効率とCNF構造の均質性を大幅に改善しました。この発明は、その後のCNF生産および産業への応用に関する集中的な研究の道を開く礎となっています。
また、矢野博士はCNFで強化された複合材の生産において、パルプ繊維のナノ化と樹脂への均一分散を同時に達成する「パルプ直接混練法(京都プロセス)」を開発。CNFを作ってから樹脂などの複合材と混ぜていたこれまでのプロセスを、1プロセスで射出成型にそのまま使える形にしたことにより、大幅な時間とコストの削減を実現しました。また、産官学連携の活動においては、その牽引役となりCNFの応用範囲拡大に多大な貢献をされました。
従来CNFは、ナノファイバーレベルまでの解繊コスト、ナノファイバー故の取り扱いの難しさなどから、工業的利用はほとんどされませんでしたが、磯貝博士、矢野博士が発明・発見された方法を用いて機能部材としての活用や構造部材としての利用が拡大しています。
1980年に創設された本田賞は、人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジー※3を実現させ、結果として「人間性あふれる文明の創造」に寄与した功績に対し、毎年1件の表彰を行っています。
CNFの活用は、従来の化石資源依存型産業によるものづくりを、再生可能な原料で汎用から高性能に至る様々な部素材をつくり、それが自動車、家電品などの工業製品や、建材、包装材などに使われていくような循環型社会基盤の構築につなげる第一歩であり、本田財団が目指す「人間性あふれる文明の創造」に寄与するものであると考えます。当財団では、磯貝博士と矢野博士が行ったCNFの生産方法の改革や活用領域拡大への貢献は本田賞にふさわしい成果であると認め、今回の授賞に至りました。
※1 本田賞(Honda Prize): 1980年に創設された科学技術分野における日本初の国際賞
※2 TEMPO: 有機化合物 「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル ラジカル(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl,radical)」の略称
※3 エコテクノロジー(Ecotechnology): 文明全体をも含む自然界をイメージしたEcology(生態学)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語。人と技術の共存を意味し、人類社会に求められる新たな技術概念として1979年に本田財団が提唱
概要:本田技研工業株式会社
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